ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

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「いやぁ……、立本樹……。お前の名は我がA高の伝説として残るぞ」
「あざす!」
「3年間、少しもブレることなくずっと成績最下位を貫き、卒業後はサッと芸能界入り。……こんなヤツ、他にはいないぞ、きっとこれから先もな」
「うす!あざす!」
「褒めてないけどな。まぁ、しっかり頑張れよ。“あの人に会いたい”みたいな番組に出る時はちゃんと俺の名前出せよ」
「うはは!はい。お世話になりました」
「俺も呼んでくれよ!」
「すごいよねー、立本くん。頑張ってね、テレビ出たら応援するからね」
「やっぱしイケメンってスカウトされるんだねぇ。すごいなぁ」

 卒業式の日。担任に生温かい言葉をかけられ、クラスメイトたちにも期待を込めて送り出され、俺たちは高校を後にした。


「心配すんなよ。俺の仕事が軌道に乗ったら一緒に暮らせるし、そしたらまた顔合わせる時間も増えるんだからな」
「ふふ。……うん」
「ちゃんとマメに連絡するから」
「うん。してよ。…できるだけね」
「おー。任せろ。……。」
「……。」
「……楽しかったな。高校生活」
「うん。……もう卒業しちゃったなんて、信じられないね」
「だな」
「一緒に通えて、楽しかったな。……ありがとう、樹。頑張って同じ高校に入ってくれて」
「ふふん。受験の時はマジで一生分の努力したからな。今となってはあれもいい思い出になったわ。じーさんになってもずっと言ってるぞ、俺。あん時はわしゃ死に物狂いだったんじゃーって」
「ふふっ…」

 卒業式が終わって、最後の帰り道を並んでバス停まで歩く。なんとなく二人とも静かになる。

「……あ、ちょっと待って…。…ごめん、母さんから電話」

 颯太がカバンの中をゴソゴソ漁ったかと思うとスマホを取り出し言った。

「おお。出ろよ」
「うん」

 もしもしー、と颯太が話し始めた。俺はボーッと周りの景色を眺める。3年間、いろいろあったなぁ…。1年の時は半年ぐらい地獄を見たけど…、あれも結局は颯太が俺を庇いたいがために先輩の言いなりになるかたちで付き合ってたんだっけ。…愛されてんなぁ、俺。……よかった、マジで。あの野郎にヤられてなくて。ごめんな、俺が不安ばかりで疑っちまったから、あんなこじれて…。もう一生絶対に誰にも触らせないからな、颯太。

「えっ!」
「……?」

 おばちゃんと話し出した颯太が急に大きな声を出す。…どうしたんだろ。

「え、う、ううんっ!そ、そんなの気にしないでよ、大丈夫だから。……ふふ、そんな、子どもじゃないんだから。…別に、そんな……。うん、ありがとう。……せっかくだからゆっくり楽しんできてよ。……うん、分かった。……帰り気を付けてね」

 颯太の電話が終わった。何も言わずにカバンの中にスマホをしまう颯太。

「……大丈夫か?」
「えっ?!な、何がっ?!」
「……や、なんかあったのかと」
「……。な、……何も、ない」
「?……ならいいけど」

 何でだろう。なんか急に顔が赤くなった颯太が、妙に緊張しているように見える。突然口数が少なくなった。気にはなったけど、詮索せずにバス停まで送ることにした。

「…………。」
「……っ、……、……っ、」

 ……明らかに何かおかしい。さっきから真っ赤な顔して、何か言おうとしては止めている感じがする。こっちから聞いた方がいいのか、……もう少し待った方がいいのか……。

 そうこうしているうちについにバス停に着いてしまった。颯太はハッとした顔をして、ますますオロオロしだす。何があったのか心配な反面、さっきから一人でいろんな顔してて可愛くてしかたない。

「………………ね、ねぇっ」

 あ、やっと喋った。

「どうした?」
「さ、さっき、母さんから電話があってさ」
「うん。知ってる。見てた」
「あ、だ、だよね。………………っ、」
「……。」
「なっ!なんか、さ、…………き、今日…………か、帰りが、……遅くなる、みたいで……。パート先の打ち上げか、なんかで」
「あ、へー。おばちゃんパート行ってんだ」
「あ、うん。そう。なんかショッピングセンターの中のレジ……、や、そ、それはいいんだけど!」

 颯太が乗るバスが道路の向こうに小さく見えてきた。颯太がますます焦り出す。

「あ!……だ、だからね!うち、……誰もいないん、だけど……。よ、……夜まで……」
「うん…………。…へっ?!」

 颯太は耳まで真っ赤にして言った。

「………………来る?うち…」
「………………。」


 行かないわけがないですよね。




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