9 / 49
とかげのしっぽ
しおりを挟む
ファンタジー
どじったマフィアか悪系ギルドかなんかの末端少年
それを拾った良い所のお嬢さん
【神様視点】
その少年は路地裏で倒れていた。
薄暗いゴミだまりのような路地裏でだ。そこは人も寄らぬような場所。
腹の刺し傷からだくだくと血がながれ、ああこれは死ぬなと、少年は思っていた。このままゆっくりと瞳を閉じればきっと、と。
しかし、そこで少年は死ねなかった。
気づけば暖かなベッドの中。手が動くことを確認して、そろりと腹を撫でると布――包帯の感触だ。
助けられた? あんなゴミだまりのような所に来るものがいるのかと薄ら笑う。
しかし、今生きているのは事実。ころりと転がることもできぬほどに痛い身体の存在に、何があったのかを思い出す。
自分は失敗をして、そして腹を刺され、そしてあの高いぼろアパートの上から落ちた。
運よく、生きてはいたがいずれは死ぬと放っておかれたのだ。
けれど、生きている。
「はは」
思わず零れた声。
しかし、誰が、どうして助けたのかはわからない。見える範囲に視線を巡らせる限りでは、相当良い家なのだろう。
そんな家のものが、自分を助けるなんて相当、酔狂な相手なのだろうなと思った。
今すぐその相手を知る事はできない。だから少年は瞳を閉じて寝入った。
まぁ、そのうちわかるだろうと。
【少年視点】
ばふっと、己を受け止める感覚。
あ、まだ生きてる。
けれど腹は熱い。さされた場所が熱い。
手を当てればぬるりとした感触。それは間違いなく、血だ。
ああ、俺死ぬなぁ。
なんで刺されたんだっけ?
記憶をたぐって思い出すのは、そうだ。俺は裏切られた。
裏切られて、しっぽ切りをされた!
俺は歯噛みして、そいつを思い浮かべる。この怒りで命を長らえさせる事ができるはず。
そう思ったが、そんなに俺の受けた傷は甘くはなかった。
止まらない血に身体の感覚が薄く、遠くなっていく。
これはだめだ、俺は死ぬ。もういいか、別に良い人生だったわけでもない。
このまま目を閉じればきっと死ねる。
そう思って瞳を閉じた。
閉じたはず、だったんだが。
生きてる。
ふかふかの清潔なベッド。ああ、手も動く。
腹は、と撫でれば手当がしてある。包帯が巻いてある。
誰が、何のために。
そもそもあそこは見つかりにくい場所だろう。なんだこれ。
俺は、そう。追い詰められて、そして腹刺されて、落ちて。ゴミだまりに受け止めてもらってそこでは、死ななかった。
けど、血は止まりそうになかったし時間の問題だったはずだ。
でも、生きている。
「はは」
生きてる。
その実感が、こみ上げてきた。
何にせよ、助けてもらった相手に礼は言わなければいけない。
助ける価値も無いような相手を助けた、そんなやつはきっとまともじゃない。
どんな酔狂な相手がでてくるのか。すぐに知るすべは、今の俺にはないからおとなしくしていよう。
もう一眠り、もう少し、微睡もう。
【お嬢視点】
私の趣味は、庶民の格好をして街を歩くことだ。
大体執事やら何やらには後で怒られるけども。
それでも、これはやめられない。
今日も今日とて、その時間。
いつも通り、街の露店で果物一つ買って。それから、花屋で花を愛で。
街をひとまわりしてさぁ、帰ろうと思った時のこと。
視界の端に赤い色が見えた。
赤? と思って私はその路地裏を覗きこんだ。
錆びた匂いが微かにする。あの赤は、血だ。
人が、倒れている。
死んでいたなら放っておくつもりだったけど、近寄ってみればまだ生きている。
なんとか、というところだけど。
見つけてしまったなら、仕方ない。
私はその、何者かもわからぬ怪我をした少年を背負った。あ、重い。
あれ、この態勢大丈夫かな、傷口ぶしゃってならないかな?
まぁ、いいか。
そう思って路地をでた瞬間、いつも私が撒いている者達に見つかった。
彼等は少年を私から奪って、我が家に連行する。
うぅん、これは怒られそうだ。
けれど人の命ひとつ、救えたのは良い事だと思う。
破天荒系のお嬢の予感しかなかった。
この後、お前をわたしの下僕にしてやる!
とかで、お嬢の命を狙いに来る相手とバトル展開じゃないかな…
しかしここまでかいて続きがないな、と思ったので打ち止め。
どじったマフィアか悪系ギルドかなんかの末端少年
それを拾った良い所のお嬢さん
【神様視点】
その少年は路地裏で倒れていた。
薄暗いゴミだまりのような路地裏でだ。そこは人も寄らぬような場所。
腹の刺し傷からだくだくと血がながれ、ああこれは死ぬなと、少年は思っていた。このままゆっくりと瞳を閉じればきっと、と。
しかし、そこで少年は死ねなかった。
気づけば暖かなベッドの中。手が動くことを確認して、そろりと腹を撫でると布――包帯の感触だ。
助けられた? あんなゴミだまりのような所に来るものがいるのかと薄ら笑う。
しかし、今生きているのは事実。ころりと転がることもできぬほどに痛い身体の存在に、何があったのかを思い出す。
自分は失敗をして、そして腹を刺され、そしてあの高いぼろアパートの上から落ちた。
運よく、生きてはいたがいずれは死ぬと放っておかれたのだ。
けれど、生きている。
「はは」
思わず零れた声。
しかし、誰が、どうして助けたのかはわからない。見える範囲に視線を巡らせる限りでは、相当良い家なのだろう。
そんな家のものが、自分を助けるなんて相当、酔狂な相手なのだろうなと思った。
今すぐその相手を知る事はできない。だから少年は瞳を閉じて寝入った。
まぁ、そのうちわかるだろうと。
【少年視点】
ばふっと、己を受け止める感覚。
あ、まだ生きてる。
けれど腹は熱い。さされた場所が熱い。
手を当てればぬるりとした感触。それは間違いなく、血だ。
ああ、俺死ぬなぁ。
なんで刺されたんだっけ?
記憶をたぐって思い出すのは、そうだ。俺は裏切られた。
裏切られて、しっぽ切りをされた!
俺は歯噛みして、そいつを思い浮かべる。この怒りで命を長らえさせる事ができるはず。
そう思ったが、そんなに俺の受けた傷は甘くはなかった。
止まらない血に身体の感覚が薄く、遠くなっていく。
これはだめだ、俺は死ぬ。もういいか、別に良い人生だったわけでもない。
このまま目を閉じればきっと死ねる。
そう思って瞳を閉じた。
閉じたはず、だったんだが。
生きてる。
ふかふかの清潔なベッド。ああ、手も動く。
腹は、と撫でれば手当がしてある。包帯が巻いてある。
誰が、何のために。
そもそもあそこは見つかりにくい場所だろう。なんだこれ。
俺は、そう。追い詰められて、そして腹刺されて、落ちて。ゴミだまりに受け止めてもらってそこでは、死ななかった。
けど、血は止まりそうになかったし時間の問題だったはずだ。
でも、生きている。
「はは」
生きてる。
その実感が、こみ上げてきた。
何にせよ、助けてもらった相手に礼は言わなければいけない。
助ける価値も無いような相手を助けた、そんなやつはきっとまともじゃない。
どんな酔狂な相手がでてくるのか。すぐに知るすべは、今の俺にはないからおとなしくしていよう。
もう一眠り、もう少し、微睡もう。
【お嬢視点】
私の趣味は、庶民の格好をして街を歩くことだ。
大体執事やら何やらには後で怒られるけども。
それでも、これはやめられない。
今日も今日とて、その時間。
いつも通り、街の露店で果物一つ買って。それから、花屋で花を愛で。
街をひとまわりしてさぁ、帰ろうと思った時のこと。
視界の端に赤い色が見えた。
赤? と思って私はその路地裏を覗きこんだ。
錆びた匂いが微かにする。あの赤は、血だ。
人が、倒れている。
死んでいたなら放っておくつもりだったけど、近寄ってみればまだ生きている。
なんとか、というところだけど。
見つけてしまったなら、仕方ない。
私はその、何者かもわからぬ怪我をした少年を背負った。あ、重い。
あれ、この態勢大丈夫かな、傷口ぶしゃってならないかな?
まぁ、いいか。
そう思って路地をでた瞬間、いつも私が撒いている者達に見つかった。
彼等は少年を私から奪って、我が家に連行する。
うぅん、これは怒られそうだ。
けれど人の命ひとつ、救えたのは良い事だと思う。
破天荒系のお嬢の予感しかなかった。
この後、お前をわたしの下僕にしてやる!
とかで、お嬢の命を狙いに来る相手とバトル展開じゃないかな…
しかしここまでかいて続きがないな、と思ったので打ち止め。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる