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君を囲う、愛が檻
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超絶執着系とおっとりさん
私にその婚約の話が来たのは、本当に突然の事でした。
いいえ、突然では――なかったのでしょう。
父は申し訳ない、と私に頭を下げました。お父様、頭を下げることはありません、と私は微笑みます。
家の事業が傾いているのは、私だって察していたのですから。
今回の婚約は、その傾いた事業のある意味、補てん。
私は貴族の娘にはよくある事ですからと、紡いだのです。
そして、私は、私の夫となる方にお会いしました。
初めまして、と。
初めましてではないのだが、と私は思う。
しかし出会ったのは幼少の頃。覚えては、いないのだろう。
私は初めまして、と言葉返して名乗る。
この方に嫌われぬように、できるだけ柔らかな笑みを浮かべて。
わが心の内を悟られぬように。
ああ、こうして目の前に立って会う。そのなんと喜ばしいことか。
ここに立つまで長い時間がかかった。本当に長く、どんな手を使ってでも立たなければならなかった。
彼女の家を追い詰め、破たんぎりぎりまで追い込み。
そして、救いの手を差し伸べる。どうして、とあちらは思っただろう。
しかしそこは、先代に助けられた事がありなどと適当に理由を連ねた。
最初は不振がっていたが誠実に彼女の父に対応し、信じてくれ始めた。
そして申し訳ない、どうしたらいいのだろうかと。対外的な理由を欲しがったのだ。
それは彼にとっても下心が全くなかった、とは言えない。
おそらく私が紡ぐ言葉がわかっていたのだ。
では、あなたの娘さんをください、と。
それで、体裁は整う。
誰がどう見ても、彼女を私が手に入れることに問題がないように少しずつ、外堀を埋め。
囲い込んで、やっと傍らに立つことができた。
あとは、彼女の心を手に入れるだけ。
それまで、身体さえも我慢しようと思えた。
優しく、真綿でくるむように。そっと触れて。少しずつ距離を詰める。
何、もう手に入っているのだ。
あと少し、私の元に落ちてくれるまで我慢することぐらい、なんでもない。
夫となる方はとても優しい方でした。
お話も楽しいし、共にいても苦痛はありません。
むしろ、こんな素敵な方に私が釣り合うのかと、そう思うくらいでした。
けでとそんなことは気にしなくていいのですと、私の気持ちを先に察して仰ります。
私がこの方にほだされるのなんてすぐのことでした。
この方なら、私もいつか、愛することができるのではと思えたのです。
どうしても手に入れたい子を外堀からごりごり固めて。
どうしようもないほどに囲って手に入れたところから、距離をちょっとずつ詰めていく系の。
私にその婚約の話が来たのは、本当に突然の事でした。
いいえ、突然では――なかったのでしょう。
父は申し訳ない、と私に頭を下げました。お父様、頭を下げることはありません、と私は微笑みます。
家の事業が傾いているのは、私だって察していたのですから。
今回の婚約は、その傾いた事業のある意味、補てん。
私は貴族の娘にはよくある事ですからと、紡いだのです。
そして、私は、私の夫となる方にお会いしました。
初めまして、と。
初めましてではないのだが、と私は思う。
しかし出会ったのは幼少の頃。覚えては、いないのだろう。
私は初めまして、と言葉返して名乗る。
この方に嫌われぬように、できるだけ柔らかな笑みを浮かべて。
わが心の内を悟られぬように。
ああ、こうして目の前に立って会う。そのなんと喜ばしいことか。
ここに立つまで長い時間がかかった。本当に長く、どんな手を使ってでも立たなければならなかった。
彼女の家を追い詰め、破たんぎりぎりまで追い込み。
そして、救いの手を差し伸べる。どうして、とあちらは思っただろう。
しかしそこは、先代に助けられた事がありなどと適当に理由を連ねた。
最初は不振がっていたが誠実に彼女の父に対応し、信じてくれ始めた。
そして申し訳ない、どうしたらいいのだろうかと。対外的な理由を欲しがったのだ。
それは彼にとっても下心が全くなかった、とは言えない。
おそらく私が紡ぐ言葉がわかっていたのだ。
では、あなたの娘さんをください、と。
それで、体裁は整う。
誰がどう見ても、彼女を私が手に入れることに問題がないように少しずつ、外堀を埋め。
囲い込んで、やっと傍らに立つことができた。
あとは、彼女の心を手に入れるだけ。
それまで、身体さえも我慢しようと思えた。
優しく、真綿でくるむように。そっと触れて。少しずつ距離を詰める。
何、もう手に入っているのだ。
あと少し、私の元に落ちてくれるまで我慢することぐらい、なんでもない。
夫となる方はとても優しい方でした。
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むしろ、こんな素敵な方に私が釣り合うのかと、そう思うくらいでした。
けでとそんなことは気にしなくていいのですと、私の気持ちを先に察して仰ります。
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この方なら、私もいつか、愛することができるのではと思えたのです。
どうしても手に入れたい子を外堀からごりごり固めて。
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