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ナギ

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ここは夜半の帝国

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乙女げーに転生した系も書いてみたい。
乙女げー設定を考えるのが面倒で今もそっとどこかでかいている話の設定をとってきてます。
キャラの名前は変えてあります。
この前かいた贋作~の設定もそこからちょっときてるので共通項いろいろ。



 あ、この絵。この光景見たことある、という既視感。そして向けられた声。
「お前を俺が育ててやるよ」
 その声が聞いたことがある声で。
「んあっ!?」
「……なんだよ、その声は」
 ぷっと吹き出して笑いに歪む秀麗な顔。
 あっ、ちょ、あっ、あっ!
 いや、え、あ、え!?
 そのまま、私の意識はホワイトアウト。ぶっとんだ。
 私――名前の無い、ううん、あったんだけどわからなくなってしまった少女は、帝国の皇位継承権、第七位を持つ男に拾われた。
 私の物語の始まりはそこで、けれどゲームのスタートはここじゃない。
 ゲームの始まりは、私が軍校に入るところ。
 途切れる意識の中でイケメンめー! ありがとうございます!! と、私は思った。



「ええ、ええ。ばっといろんなことが頭の中に入ってきたときはひゃふー! って思った。思ったけど実際に体験するのと見るのは違うっていうのがよく分かりました、はい! お疲れさま私! そして頑張ろう、私!!」
 と、私はこれから住む街、その入り口で叫んだ。
 私が私として覚醒して、そして始まった物語。
 おそらく私は、死んで転生をしたんだと思う。
 めっちゃやりこんだ、乙女ゲーム『夜半の帝国』の中へ。しかも、黒のいとし子編だと、思う。どうせなら青がよかった。
 またなんでそんなとこに! と思った。だってこのルート、唯一どうなのっていうエンディングがある。
 しかもそれからさらに派生する流れもある。
 私を拾ってくれた人が皇帝になり、もろもろの事件を経て、ちょっと、そう。
 おかしくなってしまって、滅亡エンド。からの、ほかのキャラによる……まぁ、今はそれは関係ないか。
 何にせよ、このモードはいろいろと選択肢がありすぎるのだ。
 でも、だ。
 これはゲームじゃない。ゲームじゃなくてちゃんと、ここに生きてる実感がある。
 だってゲームでは、一行くらいで終わった時間。
 色々な経験を経て力をつけ、そして軍校に入る――みたいなのが、めっちゃどえす工程だったんだから。
『いとし子、行かぬのか?』
『最初は管理局とやらだろう』
「あ、うん。行く行く!」
 しみじみとあの苦難の日々を思い出してたら足元から声がかかった。
 黒いのと、白いの。
 ふたつは、精霊だ。
 この世界には精霊と人がいる。
 精霊は、その身に色を纏う。白、黒、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫だ。
 それぞれに王と呼ばれるものがいて。さらにその種から、姿形的? なところで属、さらに細かく族に分かれるのだ。
 例えば、黒いのは黒種獣属獣族。白いのは白種神族竜族と。
 ふたつは私のかけがえのない存在だ。ゲームをやりこんでいた私は、その知識がある。
 だからこの傍らにいるふたつが何者かも知ってる。
 それから、この後の展開も。
 でも、このルートに進みたいから、この選択絶対! みたいなものもない。というより、絶対進みたいとこに必ずいけて、望み通りの結果になることは少ないって勉強した。
 その行動をとれる力がなければまず進めない。
 それも分かってるから、私はなるようになれ! だと思ってるけど。
 てくてく歩いて、進んでいく先。
 軍校の管理局、その前で私は――幼馴染と再会するのも、知ってる。
 多分これは、私が努力しなくても巡る縁。




 現状の、私の周囲について整理整頓しよう。
 まず、この黒のいとし子編の攻略キャラは、とりあえず多い。
 赤とか二人じゃない? 白は実質一人だった。
 で、この黒はというと。
 私を拾った、皇位継承権第七位の養い親、キーア。
 それから、その異母弟で皇位継承権第六位の皇子、ディウス。
 皇位継承権第二位である皇帝陛下の弟の、息子であるラドル。
 幼馴染のツァルト。
 訳アリの遅れてきた新入生、ルヴァ。
 軍校で一番の先輩、レンツ。
 それから精霊の、黒種の王様。
 でも、私別にこの誰とも、くっつかなくていいんじゃない? って思う。
 だって確かにゲームの世界だけどこの中のだれかと必ず、という必要はないと思うし。
 ゲームの時は、本当に萌えた。ふおああああってなった。
 でもね。
 でもね!
 二次元と三次元はやっぱり違ってて!
 実際の養い親、キーさまはイケメンなんだけど本当にどきちくでどきちくでどきちくで!! 公式ファンブック通りでしたありがとうございます!! 離れたとこからなら、楽しめたと思う。でもそばにいたら違う、やばい。無茶苦茶する。これで恋心が芽生える展開が本当にない。恋するとかどんだけどえむなのかというところ。どうあっても近所の悪いお兄ちゃんみたいな感じだ。尊敬はしてるけど。感謝もしてるけど。
 異母弟の皇子、ディウスはやさしくてしっかりしてるし、すごく付き合いやすいけどやっぱり近所のお兄ちゃんで。彼は、私に負い目があるから私の事を好きって言ってるんだと思う。まー、女の子に怪我させて申し訳ない、責任取るってとこなんだと思うけど、別に気にしなくていいんだけどなぁって私は思う。傷跡も残ってないし。
 ラドルは、同年代だから友達ーって感じだし。一緒に勉強とかするの楽しい。一緒に動くことが多いから、恋愛みたいにならないようには気を付けてる。
 と、まぁ他の皆とも恋愛ってなぁにって感じ。
 そもそも恋愛するより、勉強とかのが楽しい!
 でも、もうそろそろそれも言ってられなくなる。
 いわゆるイベントが始まるから。
 黒種の王様は、訳ありで。今、本来の力を持っていない。追われている身で、それらが仕掛けてくる武闘大会が来月にはある。
 私はそれが起こることを知っている。けど根本的な解決は今すぐできるものではない。
 そしてこの一件が、ある意味ルート確定にも響くのも覚えている。
 さぁ、どうしようと考えるけど解決策が思い浮かぶべくもなく。でも恋愛云々はさっぴいても、私は彼を助けたい。
 きっとストーリーの通りに進んでしまうんだと、思う。



 話の通りには進んでいるけれど、少し変わってきた。
 レンツ先輩が、瞳にけがを負っていない。
 それは私が、講師としてやってきているキーさまに、先輩に試験を受けさせないでほしいと頼んだからだ。
 どうしてと問われたけどいやな予感がするとはぐらかす。
 私のいやな予感がする、は昔からの常套手段だ。養い親は笑って、いいぜと言ってくれた。
 そして、本当にレンツ先輩はあの試験を受けなかったのだろう。目印を付けられることになる、試験を。
 これでレンツ先輩は、事件が起こって、その痛みを一身に受けることはないと思う。
 あれは結界が崩された反動の向かう先の目印だったから。
 そしてゲームのストーリー通りに進んで、事件が起こる。
 黒種の王を身の内にかくまっている先輩。
 その王を殺したい精霊達。
 私はそうさせたくない。けど私をとどめる、精霊を孕んだ訳ありの彼、ルヴァ。
 私は彼が好きだけど、それは恋情ではない。
 話せば、わかってくれる。
 だから私は先に、話しておくことにした。私は、あなたの求めるものではないよ、と。
 私は精霊である、ルヴァの――つがいでは、ないと。



 どうにかこうにか!
 事件は片付いた。何か起こると予想してきたキーさま大活躍で。
 そして、黒種の王様は助かり、レンツ先輩も怪我を負わずに終わった。
 ルヴァは本来の精霊としてを取り戻すために離れた。その時感じたのは、私への恋情とかではなくて。家族に向けるような、そんなあたたかさだった。
 けど、やっぱりストーリー通り、黒種の王様は不完全。
 こぼれた力を取り戻さないといけないそう。
 その為に、キーさまと来月、旅に出る。私はそれについて行けない。
 しかし! なんでついていけないのか、わかってるから防ぎようはある!!
 夏の大夜会。
 そこで、決闘が起こらないようにするだけだから。
 断固! 拒否!!
 私は話の中で、黒編のどこに進んでも見られないこの流れを、見たい。
 公式ファンブックによると、終盤は罵り合いの旅らしく。
 キーさまはともかくあのレンツ先輩が、そんな! バカな! と、思う。
 ついていきたい……だから! 私は!
 キーさまのパパ、つまり皇帝陛下を味方につけることにした。
 味方になってもらうためなら着せ替え人形にもなるし、何よりパパでもおじい様でもなんでも好きなように呼んで差し上げる!!



 どうして! 今! こうなっているのか!
 私は芝生の上に押し倒されている。
 見上げると、どうにも切羽詰まっているような表情のラドルだ。
「どうしたの……何?」
「お、お前は!」
「うん?」
「俺が、こんなに好きだって言ってるのに……まったく振り向かない」
「えっと……」
 何が悪いと悲痛な声色。
 待って、なにこれ。こんなイベント、無かった!
「……キスすれば意識するか?」
「え、ちょ、ちょっと! ラ、ラドル! 落ち着こう?」
「落ち着いてる」
「ラドル!」
 やだ、と小さく零すとラドルの動きは止まった。
 わざとらしいため息とともに身を起こし、私も引き起こす。
「悪い……でも、お前、意識しないから」
「それ、は……ごめん」
「でも、もう意識したな」
 その言葉には頷かざるをえない。
 こくりと頷くと、そうかと満面の笑み。
 なんて嬉しそうな笑みを、と思う。
 ラドルとはいつも、等身大で接する事ができた。
 でもね、ラドル。あなたはそのうち皇位継承権を継ぐ。
 そんなラドルと私では釣り合いがとれない。だから私は、踏み込まないでいるのに。





書きたいとこだけ書いてます。ぶつぎり。
短編ではどう考えても無理だった!
そしてここまで書いて、やっぱり元ができあがりすぎてるのでいじるのは難しい。
そも乙女げーに落とし込むのにはハードルが高かった黒ルート。
他の色のルートなら、考えられそうではあるけども。

精霊は色で種にわかれ。見た目的な感じで属になり、その小分類が族みたいな感じです。
主人公はいとし子という、精霊から無条件で好き!とされる存在。いとし子は種に対し一人。
で、キーさまは白のいとし子。それもあって拾った。
いとし子には、つがいという存在がいる。唯一無二みたいな。出会えるかどうかは、わからないけど。
つがいとの関係は親子であったり恋人のようであったり友のようであったりさまざま。

そんな世界設定ー。
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