短編詰め合わせ

ナギ

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ひといきにいいきって

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こういうこいないのかなって。
断罪のときに逆に全部あげつらう。



「見苦しい嫉妬によって彼女をいじめるなど、未来の王妃としてはふさわしくないではないか! 私はお前との婚約を破棄する!」
 と、婚約者であった王子が勝ち誇った表情でもって高らかに告げた。
 わたくしにとっては、先程まで言われた内容というのはまったく身に覚えがない事。
 それに傍らのお嬢さんがわたくしに向ける笑みはとても醜いものでした。なるほど、自作自演。
 わたくしが無実であるという証拠もありません。彼女があげた内容についてはねつ造してしまえばどうにかなるものでした。
「何か、最後に言うことはあるか?」
「言ってよろしいの?」
 ああ、と頷かれたのでわたくしはそれでは、と笑みを浮かべました。
「まず最初から突っ込ませていただいてよろしくて? ダメと言っても言いますけど。最初にそのお嬢さんが教科書やなにやらが破かれたと言いましたがまずわたくしと教室も授業も違いますのよ? 何故わざわざ教科書を破くなんてしなければいけませんの。そもそも本も紙も効果なものです。わたくしは本の内容などに問題がなかったので新しい物を買わずお母様からいただいたものを使ってますの。人一倍取り扱いに気を付けているわたくしがそんなことをするわけがありません。ふたつめ、水をかけたと言いますがどうやってなのでしょう。わたくしがバケツを持ちますの? そんな姿想像できまして? できないでしょう? そもそもナイフやフォーク、扇、本などより重い物をわたくしがもつわけがないでしょう。構内でも専属の荷物持ちがいますのよ。もしその荷物持ちにさせたとおっしゃるのでしたらこちらに呼んできましょう。させておりません。彼女が口裏合わせをしたとおっしゃるかもしれませんが、彼女は王妃様がわたくしに紹介した方なのです。わたくしの手助けをしたならば、すぐさま王妃様に報告が参ります。日報は毎日書いていますから。それにいつ、と日付を告げましたがわたくしその日は学園を休んでおりましてよ。なぜ覚えているのかと仰られるのなら出席簿を確認なさいませ。その日はそもそも学園自体がお休みですもの、開校記念日ですから誰もこの学園内にいないはずですわ。ああ、部活や補修があった方は別でしょうが。みっつめ、階段から突き落とされたとおっしゃりましたね? もう一度場所をお聞きしてよろしくて? そこは立ち入り禁止の場所ですわ。わたくし、模範的な生徒ですからそんな場所にはいきません。逆にあなた、そこから突き落とされたというのならどうしてそこにいらっしゃったの? それは殿下、あなたにもいえることですが。そちらの場所は改修工事が始まる為に立ち入り禁止の場所。危険だから行ってはいけない場所でしょう。それから最後に一番の大きな間違いを指摘させていただきますわ。わたくしは殿下を愛していません。わたくしがあなたを好き? 冗談はおやめにやって。仮にも契約で結ばれた婚約相手を信じもせず、ないことを信じてわたくしの事を悪くおっしゃったのですからわたくしも言わせてもらってよろしいですわね? 御相子ですわ。あなたが王子に不敬だとおっしゃるなら、まず王族としての最低限の礼儀をわきまえてらっしゃい。わたくしあなたのような馬鹿で間抜けな王子と結婚なんてまっぴらごめん、婚約破棄? そんなものとっくにこっちからお願いしてますのよ! わたくしの、家の名に傷がつく? そんなこと気にしませんわ。回復しようと思えばできることなのですから。それよりもわたくしがあなたといってどれだけの精神的な苦痛を受けたと思ってますの? 勉強しても頭は足りない。問題を起こしてはわたくしがしりぬぐい。この件だってそう。あなたとそこの令嬢がしてきたいろいろな事をフォローしてきましたのよ。ねぇ皆様、もうわたくしそういったことしませんからどうぞ遠慮なく殿下を見捨ててくださいませ。わたくしと殿下、好きな方を選ぶとよろしいのです。婚約破棄をしてわたくしは自由になりますから、これからは好きなことができますわ」
 ああなんて幸せ、と、一気にまくし立てたわたくしはほぅと言葉零しました。
 王子と彼女はぽかんとするばかり。わたくしはもう話すこともありませんと背を向けて学園を去りました。
 そして家に帰ってすぐお父様にこういうことがあったのですがとお話して、婚約破棄に向けて動き出したのです。
 王家はそれを渋りましたが、王妃様が配してくれた荷物持ちの彼女が事実のみを伸べてくれました。本当に彼女には感謝しております。
 わたくしの教科書を守ってくださり、水をかけられそうになったらさっとわたくしを抱えてよけて。
 頼りになる人でした。
 そんな彼女が、実は女装したもう一人の王子だったと知るのは――わたくしの婚約破棄が為ってすぐのことでした。



がーっというのかいてみたかっただけ。
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