短編詰め合わせ

ナギ

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最愛のお兄様

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お兄様ほんともうやめて、恥ずかしいから! みたいな。
妹ちゃんがどえすな話。



 お花畑脳のお兄様が、婚約者にする! といって私に紹介したのは子爵家の娘でした。
 ええ、はい。
 そんなの紹介される前から知ってましたけど。
 そうね、お兄様が普通の貴族であれば、お好きにすればと言ったわ。
 でもお兄様、王子ですのよ。妾ならともかく。どう見ても正妃としてと言っているわけで。
「初めまして、私はメアリと言います。これからよろしくね、ロッタちゃん」
「仲良くするようにな」
「…………いえ、無理です」
 我ながら底冷えするような声だと思った。
 お兄様はその言葉に眉吊り上げた。私はわざとらしくため息をついて、お兄様にその方が大勢の貴族の前に立って、認めていただけるとお思いですかと問う。
 するとお兄様はそれは、と口ごもられた。一応、理解はしてらっしゃる、と思ったのだけど。
「そんなものは愛の力で」
「どうにもなりません。それからあなた。声をかけるのは目上からです。いくらここが私的な場であっても、私は王女。貴女は子爵家の娘。いずれお兄様と結婚するにしても今、身分の開きがあるのは理解してらっしゃる?」
「だ、だって仲良くなりた……」
「私は礼儀も無い方とは仲良くできません」
 おろおろとするメアリ嬢は、頭が弱いとしか思えない。
 頭がお花畑のお兄様とは丁度良いバランスなのでしょうがしかし。
 しかし、一国の主としてはいかがなものとしか思えないのです。
 これはお父様とお母様がお兄様をちやほやしながら育てた末の結果でしょう。
 私は、そんな様子に乳母がびしっときっちり育ててくれたのでお花畑にはならずにはすんだのです。
 乳母には本当に感謝しなければなりません。
 だって、お兄様、恥ずかしいのだもの。それでも兄は兄。王位につくなら私が支えようと思ってはいたのです。
 いたのですが。
「もう無理かしら……」
 はぁとため息をついて、私はあのお話をお受けすることに決めたのです。
 隣国の若い王から正妃として迎えたいという話を。
 きっと、この国はお兄様により傾いてしまうでしょう。私が色々としりぬぐいをし、支えていたことを知っている諸侯はお兄様を見限るかもしれません。
 私がいないのだからと支える方もいらっしゃるかもしれません。
「……お兄様、突然ですが私、輿入れすることに決めました」
「え? それは……」
「隣国の……私にずっとお手紙を下さっていた方です。ですから、近々あちらに行きますわ」
 にっこりと浮かべた笑顔に、お兄様はそうかそうかと喜ばれます。
 メリア嬢も一緒になって。
 私は準備がありますからと二人の元を離れました。
 私にはやることがあるのです。お返事をかいて、そして皆様に挨拶をして。
 根回しをして。
 きっと国が傾いたら、隣国に合併されることになるでしょうし。
「誘いに乗るようで少し、癪ではあるのですが……」
 私からの返事に、きっとあの方はにこにこするのでしょう。
 いずれこうなるとわかって、いらっしゃったのでしょうが。
 私の言った通りになったでしょう、とお会いしたら最初に仰られそうです。
 お兄様は確かに、頭の中がお花畑でいらっしゃいました。
 しかしそれゆえに人に好かれていたのも事実なのです。
 わたくしもそうでした。
 お兄様の柔らかな笑みを愛しいと思っていましたし、あたたかな気持ちになりました。
 メリア嬢が現れるまではお花畑なりにがんばっていらしたもの。
 けれど、もうそんな私が好きだったお兄様はいらっしゃいませんから。
 さよなら、最愛のお兄様。
 私は幸せそうにする二人にちらりと視線を向けて、どうしようもないと瞳を伏せたのでした。



このあと隣国の若様ときゃっきゃうふふするんですけど。
飽きた!
お兄さまは主人公ちゃんの今までのすべてで。
若様はこれからの象徴みたいなイメージ。
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