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吸血令嬢と運命の相手
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真っ白な長い髪に血のように赤いぷっくりとした唇。
その瞳はルビーのように、夜の中で輝くのだという。
会えば忘れられぬほどの美貌の令嬢――その令嬢に、巷の男達は焦がれているわけではない。
恐れていた。
それは彼女が、吸血鬼だからだ。
出会えばすべて奪いつくして、死へと誘う美貌の姫は夜な夜な相手を探している。
「というのが、私の噂らしいのだけどどう思います?」
「うん、本当の事じゃない?」
「いえ、確かに血はいただいてますけど! でも命は奪ってませんよ!」
ばすばすとクッションを叩きながら心外だわと零す少女はルビーの瞳で相手を射抜く。
ゆうゆうと座り、目の前で茶を飲むのはこの国の宰相であり、叔父であった。
そして、幼き頃に両親を事故で失った両親の代わりに育ててくれた養い親でもある。
「その噂のおかげで結婚の話も来ませんのよ! 私が噂の吸血鬼じゃないかって……いえ、そうではあるんですけど!」
「はいはい。それで? 相談事とは?」
「叔父様が知ってるイケメンを紹介してください! 血のおいしそうな!!」
「……それはもう、国王以外いないんだけど」
「えー!」
少女はそれは無理と声をあげる。
姪っ子のそんな姿に苦笑を零し、男は良いと思うんだけどなと零した。
少女は、淑女たる教育をちゃんと受けている。どこに出ても恥ずかしくない令嬢だ。
ただ、そう。
一つ問題があるとするならばバケモノの血を受けついでいること。
自分もまたそうではあるのだが、すでに自制ができている。少女はまだそれができていないことだ。そして、その血故に普通の人間よりも身体能力が優れている。
この国の祖たる男は吸血姫を愛した。灰になって消えた吸血姫は一人の男児を残す。
さすがに、王に男児を付けることはできず、公爵家として立たせた。
どんどん血は薄れ、吸血衝動なども消えてはいったのだが時折、それが現れる者が出る。
それが少女であり、自分でもあった。
王家はもちろんこのことを知っている。だから、彼女がバケモノの血を引いていることは問題ないのだ。
そういう事情もあって、縁談の話はいくつか来ているのだが男は少女にその話をしていなかった。
宰相が皆から隠すほどに溺愛している少女の存在を貴族達は知っている。
夜会になどと話も来ているのだが、今の彼女をそう言った場所に出すのは難しいと思っているのだ。
「国王の何がいやなのかな?」
「うーん、だって王様でしょ? なんか怖そうだしめんどそうじゃないですか?」
「……それは、あってるかな」
男は国王を思い浮かべる。
仕事はできる。国を纏めるに問題はない。
ただ顔つきはとても厳しく、怖そうには見える。めんどうというのも、思い当たる節がいくつかあった。
「なら、無しでーす!」
「そうか。じゃあもう、城に来て好みのイケメンを物色すればいいよ。私に会いに来たと言って何か理由をつけておいで。そうだ、何かケーキを焼いてきてほしい」
「あ、そうします! そうね、自分で探します!」
わぁ、楽しみとにこにこと少女は笑む。
そして数日後――王宮に宰相を訪ねて出向く。その途中で出会った運命の相手に、少女は心躍らせるのだ。
そして、その運命の相手の話を聞いて、男は苦笑する。
それが誰だか知っているけれど、探してごらんと答えはしなかった。
お相手は国王様っていう鉄板。
その瞳はルビーのように、夜の中で輝くのだという。
会えば忘れられぬほどの美貌の令嬢――その令嬢に、巷の男達は焦がれているわけではない。
恐れていた。
それは彼女が、吸血鬼だからだ。
出会えばすべて奪いつくして、死へと誘う美貌の姫は夜な夜な相手を探している。
「というのが、私の噂らしいのだけどどう思います?」
「うん、本当の事じゃない?」
「いえ、確かに血はいただいてますけど! でも命は奪ってませんよ!」
ばすばすとクッションを叩きながら心外だわと零す少女はルビーの瞳で相手を射抜く。
ゆうゆうと座り、目の前で茶を飲むのはこの国の宰相であり、叔父であった。
そして、幼き頃に両親を事故で失った両親の代わりに育ててくれた養い親でもある。
「その噂のおかげで結婚の話も来ませんのよ! 私が噂の吸血鬼じゃないかって……いえ、そうではあるんですけど!」
「はいはい。それで? 相談事とは?」
「叔父様が知ってるイケメンを紹介してください! 血のおいしそうな!!」
「……それはもう、国王以外いないんだけど」
「えー!」
少女はそれは無理と声をあげる。
姪っ子のそんな姿に苦笑を零し、男は良いと思うんだけどなと零した。
少女は、淑女たる教育をちゃんと受けている。どこに出ても恥ずかしくない令嬢だ。
ただ、そう。
一つ問題があるとするならばバケモノの血を受けついでいること。
自分もまたそうではあるのだが、すでに自制ができている。少女はまだそれができていないことだ。そして、その血故に普通の人間よりも身体能力が優れている。
この国の祖たる男は吸血姫を愛した。灰になって消えた吸血姫は一人の男児を残す。
さすがに、王に男児を付けることはできず、公爵家として立たせた。
どんどん血は薄れ、吸血衝動なども消えてはいったのだが時折、それが現れる者が出る。
それが少女であり、自分でもあった。
王家はもちろんこのことを知っている。だから、彼女がバケモノの血を引いていることは問題ないのだ。
そういう事情もあって、縁談の話はいくつか来ているのだが男は少女にその話をしていなかった。
宰相が皆から隠すほどに溺愛している少女の存在を貴族達は知っている。
夜会になどと話も来ているのだが、今の彼女をそう言った場所に出すのは難しいと思っているのだ。
「国王の何がいやなのかな?」
「うーん、だって王様でしょ? なんか怖そうだしめんどそうじゃないですか?」
「……それは、あってるかな」
男は国王を思い浮かべる。
仕事はできる。国を纏めるに問題はない。
ただ顔つきはとても厳しく、怖そうには見える。めんどうというのも、思い当たる節がいくつかあった。
「なら、無しでーす!」
「そうか。じゃあもう、城に来て好みのイケメンを物色すればいいよ。私に会いに来たと言って何か理由をつけておいで。そうだ、何かケーキを焼いてきてほしい」
「あ、そうします! そうね、自分で探します!」
わぁ、楽しみとにこにこと少女は笑む。
そして数日後――王宮に宰相を訪ねて出向く。その途中で出会った運命の相手に、少女は心躍らせるのだ。
そして、その運命の相手の話を聞いて、男は苦笑する。
それが誰だか知っているけれど、探してごらんと答えはしなかった。
お相手は国王様っていう鉄板。
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