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剥き出し感情論
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私は駄目な人とそれをすくい上げてくれる人を書くのが好きなのですが
じょうずにかけたためしがない
そして逸れる
ふぁんたじー世界においてだと、ふったふられた、婚約だ破棄だは
そう言うの書きやすいかなぁと思ったけど別にそんなこともなかったかな!
婚約、やめましょと。
いつもと同じ平坦な口調で女は言った。
男はその言葉に一瞬、息を詰まらせて。そしてよわよわしく、何故と問うたのだ。
その問いに女はひどく、綺麗な笑みを浮かべて。
「私と一緒ではあなたが栄達できないわ。これから我が家は裁かれるの。あなたまでこれに引きずられるわけにはいかないから」
「なんで……そんなこと、言う?」
「……だって、私は踏み台だったでしょう? だから切り捨てて」
ふふ、と笑い零す。
踏み台? 確かに、確かにそうだったさ!
そう男は声を荒げて、女に詰め寄った。女はその表情に驚いて、数歩下がる。
そして、壁際に追い詰められた。
男は女の顔の横にどんと、大きな音を立てて手をつく。
「そうだよ、踏み台にしてやったんだよ! お前の家は公爵家だから、伯爵家の、末の子の僕が成り上がるために!」
「知ってるわ」
「なのに! 僕はね! 君を好きになって、しまったんだよ!」
「知ってるわ」
「なら、なんで! なんで言わない! そんな顔して、全部投げ捨てる!」
「そうしかできないからよ。だって、私を連れて逃げて、なんて言っても。あなたが困るだけでしょう?」
「っ!」
だから私を捨ててくれていいのよと、女は笑う。
家の格は落ちるけれど、あなたを好いている人はたくさんいる。
だから、私が処される前に捨てて、身綺麗になりなさいと女は言う。
「今捨てておけば、あなたはいち早く我が家の間違いに気付いて、見切りをつけたと見てもらえるわ」
「そんな……」
「今しかないわ。だって明日には、もう決まってしまうから」
「……君は、酷いことを言う」
「ごめんなさいね。これが私なの」
「……まるで、僕が踏み台にされているような気分だ……そんなことはないのに」
男は女に縋る様に崩れ落ちる。その腰を抱いて、いやだと言いながら。
いやだ、君を失いたくないと。
「君は何もしていないのに。父上と縁を切ればいいのに」
「だめよ。お父様には私しかいないから。最後までつき従ってあげるのは私の役目よ。それは私が気付けなくて、諌められなかった責任」
そう言って女は男の頭を撫でる。
ゆるゆると、優しく。
女は男の頭を見下ろしてしょうがない人ねと笑うのだ。
これから自分が迎える末は、大体予想がついている。
よくて平民に落ちる。最悪、殺されるだろう。きっと、父の犯した罪以外もなすりつけられることになるだろうから。
この、自分を好きと言って嘆く人を救う手立ては、もう本当はあるのだ。
この人を好きだと言う少女がいることを知っているから。そして、女は彼女に彼を託している。
私がいなくなったらよろしく、と。
己の持つ恋心を悟られぬように、殺しながら。
かきたいものがまいご。
じょうずにかけたためしがない
そして逸れる
ふぁんたじー世界においてだと、ふったふられた、婚約だ破棄だは
そう言うの書きやすいかなぁと思ったけど別にそんなこともなかったかな!
婚約、やめましょと。
いつもと同じ平坦な口調で女は言った。
男はその言葉に一瞬、息を詰まらせて。そしてよわよわしく、何故と問うたのだ。
その問いに女はひどく、綺麗な笑みを浮かべて。
「私と一緒ではあなたが栄達できないわ。これから我が家は裁かれるの。あなたまでこれに引きずられるわけにはいかないから」
「なんで……そんなこと、言う?」
「……だって、私は踏み台だったでしょう? だから切り捨てて」
ふふ、と笑い零す。
踏み台? 確かに、確かにそうだったさ!
そう男は声を荒げて、女に詰め寄った。女はその表情に驚いて、数歩下がる。
そして、壁際に追い詰められた。
男は女の顔の横にどんと、大きな音を立てて手をつく。
「そうだよ、踏み台にしてやったんだよ! お前の家は公爵家だから、伯爵家の、末の子の僕が成り上がるために!」
「知ってるわ」
「なのに! 僕はね! 君を好きになって、しまったんだよ!」
「知ってるわ」
「なら、なんで! なんで言わない! そんな顔して、全部投げ捨てる!」
「そうしかできないからよ。だって、私を連れて逃げて、なんて言っても。あなたが困るだけでしょう?」
「っ!」
だから私を捨ててくれていいのよと、女は笑う。
家の格は落ちるけれど、あなたを好いている人はたくさんいる。
だから、私が処される前に捨てて、身綺麗になりなさいと女は言う。
「今捨てておけば、あなたはいち早く我が家の間違いに気付いて、見切りをつけたと見てもらえるわ」
「そんな……」
「今しかないわ。だって明日には、もう決まってしまうから」
「……君は、酷いことを言う」
「ごめんなさいね。これが私なの」
「……まるで、僕が踏み台にされているような気分だ……そんなことはないのに」
男は女に縋る様に崩れ落ちる。その腰を抱いて、いやだと言いながら。
いやだ、君を失いたくないと。
「君は何もしていないのに。父上と縁を切ればいいのに」
「だめよ。お父様には私しかいないから。最後までつき従ってあげるのは私の役目よ。それは私が気付けなくて、諌められなかった責任」
そう言って女は男の頭を撫でる。
ゆるゆると、優しく。
女は男の頭を見下ろしてしょうがない人ねと笑うのだ。
これから自分が迎える末は、大体予想がついている。
よくて平民に落ちる。最悪、殺されるだろう。きっと、父の犯した罪以外もなすりつけられることになるだろうから。
この、自分を好きと言って嘆く人を救う手立ては、もう本当はあるのだ。
この人を好きだと言う少女がいることを知っているから。そして、女は彼女に彼を託している。
私がいなくなったらよろしく、と。
己の持つ恋心を悟られぬように、殺しながら。
かきたいものがまいご。
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