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素直じゃない
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やっと素直になったおのこ。
まさか聞いているとは、思わなかった。
俺は確かに、あの時。
あいつのことなんて好きじゃない。ただの幼馴染って言った。
言った、けど!
それで、あいつが幼馴染に手を出すなんて思ってもいなかったんだ。
「私、あなたの親友のトール様と婚約することになったの。お祝いしてくれる?」
「う、うそだろ?」
「まだ口約束、だけど……」
「……は! 釣り合いが、とれて、ない、だろ」
吐き捨てるような言葉。
もう、俺は戻れないと思った。このまま勢いのまま、言ってしまう。
「お前とあいつは、似合わない!」
苦し紛れのように飛び出す言葉。
それを浴びせるたびに幼馴染の表情は変わっていく。
「お前みたいな、女らしくない、刺繍も下手なやつが、あいつとなんて、やめてしまえよ」
「……ひどい」
「っ! 俺は本当のことしか、言ってない!」
お前とあいつは似合わない。
お前と、お似合いなのは――俺だろう!
「あいつより……俺の、ほうが!」
「え?」
「俺ほうが、お前の事好きだ! 俺の方がお似合いだ!!」
そう言って、俺はぐっと言葉に詰まる。
もうどうしたらいいかわからない。
言いつくろうことも、できない。
幼馴染は瞬いて、そして花綻ぶように笑ったのだ。
「やっと……素直になってくれたわね」
「え?」
「トール様と婚約なんて話、ないわ」
「は?」
「トール様に……気持ちを確かめたいならこう言ってみろ、って……」
あ、あいつ!!
顔がかーっと、赤くなる。
くそ、しまった。はめられた。そんな気しかしない。
でも、まぁいいかと思う。
「ねぇ、幼馴染やめる?」
「……やめる」
「恋人にしてくれる?」
「恋人にしてやるよ」
ああ、なんて言い方! そう思いつつも、吐いた言葉は戻らない。
でも幼馴染は――恋人は笑っている。
俺の事、よくわかっているから笑って許してくれている。
くそ。
あとでちゃんと、正面から好きって言う。
まさか聞いているとは、思わなかった。
俺は確かに、あの時。
あいつのことなんて好きじゃない。ただの幼馴染って言った。
言った、けど!
それで、あいつが幼馴染に手を出すなんて思ってもいなかったんだ。
「私、あなたの親友のトール様と婚約することになったの。お祝いしてくれる?」
「う、うそだろ?」
「まだ口約束、だけど……」
「……は! 釣り合いが、とれて、ない、だろ」
吐き捨てるような言葉。
もう、俺は戻れないと思った。このまま勢いのまま、言ってしまう。
「お前とあいつは、似合わない!」
苦し紛れのように飛び出す言葉。
それを浴びせるたびに幼馴染の表情は変わっていく。
「お前みたいな、女らしくない、刺繍も下手なやつが、あいつとなんて、やめてしまえよ」
「……ひどい」
「っ! 俺は本当のことしか、言ってない!」
お前とあいつは似合わない。
お前と、お似合いなのは――俺だろう!
「あいつより……俺の、ほうが!」
「え?」
「俺ほうが、お前の事好きだ! 俺の方がお似合いだ!!」
そう言って、俺はぐっと言葉に詰まる。
もうどうしたらいいかわからない。
言いつくろうことも、できない。
幼馴染は瞬いて、そして花綻ぶように笑ったのだ。
「やっと……素直になってくれたわね」
「え?」
「トール様と婚約なんて話、ないわ」
「は?」
「トール様に……気持ちを確かめたいならこう言ってみろ、って……」
あ、あいつ!!
顔がかーっと、赤くなる。
くそ、しまった。はめられた。そんな気しかしない。
でも、まぁいいかと思う。
「ねぇ、幼馴染やめる?」
「……やめる」
「恋人にしてくれる?」
「恋人にしてやるよ」
ああ、なんて言い方! そう思いつつも、吐いた言葉は戻らない。
でも幼馴染は――恋人は笑っている。
俺の事、よくわかっているから笑って許してくれている。
くそ。
あとでちゃんと、正面から好きって言う。
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