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偽り姫
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すでに腐敗していたのだ。
腐った頭を切り落とし、すげかえられた頭もまた腐っている。
そんなことを介入した他国の者はしらない。
腐敗の象徴たる王を殺し新たな王を据える。
新たな王は機会を狙い他国へと手を貸してくれと頼んだ。
他国は喜んで手を貸す。腐敗した国でも礼として何かを得れれば良いのだから。
それは領土であったり、金であったり、奴隷であったり。
「姫様、大丈夫でございますか」
「ええ、どうやら殺されることはないようですし……」
「そうは仰っても……」
「私よりも皆よ。ひどいことにはしないと定めてはいるでしょうけれど……」
私も、その奴隷の一人。
私に従っていた者達も同じように檻に入れられている。
隣の檻には私を守っていた騎士達。彼等は――いいえ、同じ檻にいる侍女だった者達も貴族ではなく平民から私が拾った者達。
おとなしく、という私の言葉をしぶしぶながら守ってくれている。
先王の、腐敗した王の娘の一人であった私は無い罪をかぶせられここにいる。
腐敗の象徴のひとつとして。
先王と、それから新王との争いに関わらないでいたらいつの間にか、そうなっていた。
上手くやられてしまった。情報収集などまったくしていなかったのだから。
私は関わっていないので大丈夫、なんてことなどなかったのだ。
自分は馬鹿だったと思うが悔やんでも仕方がない。これから先をどう切り抜けるかだ。
どうしたらいいだろうか――それを考えていると、奴隷を集めた場にやってきた一団がいる。
他国の者だ。この国の服装ではない。肌の色も髪の色も私達とは違う。
あれは……おそらく、隣国の砂の国の者達だ。
数人いる男達。主が一人、あとは腹心の部下か、それともお目付けか。他には私達を管理している者達も数人。
その中で一際、目を引く男がいた。
頭に布を撒いているけれど、黒い髪が見える。金色の瞳は意志が強そう。
腐ってはいない――強い光を宿した瞳。
精悍な面持ち、立派な体躯。私なんて片手で持ちあげられそうだ。
その男と、目があった。
私は視線を逸らさない。逸らしてはいけないと思ったからだ。
じっと見つめていると、その男は口端をあげて笑いこちらへ向かってくる。
私は瞬いて、ただ近づいてくるのを待つだけだ。
かしゃんと鉄の触れ合う音。
男が入り口の、その扉を揺らしてみせた。
「学はあるのか?」
『あなたがどんな学を求めているのかわかりませんが、この言葉が使える程度には』
『上等だ』
驚いた。
私が使ってみせたのは古語。潰えかけ、使えるものなどほとんどいない言葉なのに、使ってみせた。
ということは、この男もそれなりに知識があるはず。
地位も、あるはず。
『私の侍女達も同じく、古語程度は使える。私の騎士達もまた特別だ』
『……そんなことを言うお前はなぜここにいる』
『権謀術数というものに興味がなかったから、ここにいる』
『だろうな』
かすかに笑って、男はくるりと私達から背を向けた。
なんだ、見に来ただけか。
うまく取引をすればここから皆を出せるかと思ったのだが。
「おい、こいつらにする」
「はい、わかりました。検査などをし、体を清めてから」
「いい。急ぐからこのまま連れて行く」
牢を預かる男はばたばたと準備を始める。
お前達を引き取ってやると、男は言う。
そのかわり、高くつくぞと。
その言葉に、私は笑ってみせた。
後悔はさせないと。
と言うかんじで書こうとしていたらしいんですけど。
ちからつきたらしい。
この姫さんは良い姫さんで。
腐敗の中でも色々できることをしていた。それらは、別のずるい姫さんがもっていってしまっている。
しかしこのかしこさを知っているものもいて。
男が知らないうちに持っていってしまったので後々取り返そうとする。
その頃には、男の国で。男の妹のよき話し相手になっていて。
なんかいいかんじになってる。
で、仲良くなって腐敗時代のことをきいて。なんか間接的に命助けてられてて。
お前の奪われた名誉をとりかえすとかでのりこんで。ざまぁの流れかな…
もしくはどこかでさらわれて取り戻しにいくやつ。
腐った頭を切り落とし、すげかえられた頭もまた腐っている。
そんなことを介入した他国の者はしらない。
腐敗の象徴たる王を殺し新たな王を据える。
新たな王は機会を狙い他国へと手を貸してくれと頼んだ。
他国は喜んで手を貸す。腐敗した国でも礼として何かを得れれば良いのだから。
それは領土であったり、金であったり、奴隷であったり。
「姫様、大丈夫でございますか」
「ええ、どうやら殺されることはないようですし……」
「そうは仰っても……」
「私よりも皆よ。ひどいことにはしないと定めてはいるでしょうけれど……」
私も、その奴隷の一人。
私に従っていた者達も同じように檻に入れられている。
隣の檻には私を守っていた騎士達。彼等は――いいえ、同じ檻にいる侍女だった者達も貴族ではなく平民から私が拾った者達。
おとなしく、という私の言葉をしぶしぶながら守ってくれている。
先王の、腐敗した王の娘の一人であった私は無い罪をかぶせられここにいる。
腐敗の象徴のひとつとして。
先王と、それから新王との争いに関わらないでいたらいつの間にか、そうなっていた。
上手くやられてしまった。情報収集などまったくしていなかったのだから。
私は関わっていないので大丈夫、なんてことなどなかったのだ。
自分は馬鹿だったと思うが悔やんでも仕方がない。これから先をどう切り抜けるかだ。
どうしたらいいだろうか――それを考えていると、奴隷を集めた場にやってきた一団がいる。
他国の者だ。この国の服装ではない。肌の色も髪の色も私達とは違う。
あれは……おそらく、隣国の砂の国の者達だ。
数人いる男達。主が一人、あとは腹心の部下か、それともお目付けか。他には私達を管理している者達も数人。
その中で一際、目を引く男がいた。
頭に布を撒いているけれど、黒い髪が見える。金色の瞳は意志が強そう。
腐ってはいない――強い光を宿した瞳。
精悍な面持ち、立派な体躯。私なんて片手で持ちあげられそうだ。
その男と、目があった。
私は視線を逸らさない。逸らしてはいけないと思ったからだ。
じっと見つめていると、その男は口端をあげて笑いこちらへ向かってくる。
私は瞬いて、ただ近づいてくるのを待つだけだ。
かしゃんと鉄の触れ合う音。
男が入り口の、その扉を揺らしてみせた。
「学はあるのか?」
『あなたがどんな学を求めているのかわかりませんが、この言葉が使える程度には』
『上等だ』
驚いた。
私が使ってみせたのは古語。潰えかけ、使えるものなどほとんどいない言葉なのに、使ってみせた。
ということは、この男もそれなりに知識があるはず。
地位も、あるはず。
『私の侍女達も同じく、古語程度は使える。私の騎士達もまた特別だ』
『……そんなことを言うお前はなぜここにいる』
『権謀術数というものに興味がなかったから、ここにいる』
『だろうな』
かすかに笑って、男はくるりと私達から背を向けた。
なんだ、見に来ただけか。
うまく取引をすればここから皆を出せるかと思ったのだが。
「おい、こいつらにする」
「はい、わかりました。検査などをし、体を清めてから」
「いい。急ぐからこのまま連れて行く」
牢を預かる男はばたばたと準備を始める。
お前達を引き取ってやると、男は言う。
そのかわり、高くつくぞと。
その言葉に、私は笑ってみせた。
後悔はさせないと。
と言うかんじで書こうとしていたらしいんですけど。
ちからつきたらしい。
この姫さんは良い姫さんで。
腐敗の中でも色々できることをしていた。それらは、別のずるい姫さんがもっていってしまっている。
しかしこのかしこさを知っているものもいて。
男が知らないうちに持っていってしまったので後々取り返そうとする。
その頃には、男の国で。男の妹のよき話し相手になっていて。
なんかいいかんじになってる。
で、仲良くなって腐敗時代のことをきいて。なんか間接的に命助けてられてて。
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