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プロローグ
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世界を作ったのは白いカミサマだ。
まず世界の枠を作り、その中心に自分の住む場所を作った。そのあとに枠の中にある程度の水を満たし、海とする。
真っ白な世界では面白くないから、空を生み気まぐれにその様相を変え、昼と夜を作った。
次にカミサマはたくさんの土くれを海へと投げた。それはいくつもの大地へと変わる。
カミサマの住まう場所はその大地に囲まれるようにあった。
その大地に何もいないのは寂しいと、カミサマは生命を生み出した。
草木に始まり、多種多様な動物。そして最後に、人間を作った。
その様子を見ていた別の、黒いカミサマが、面白そうだと隣に世界の枠をまた設けた。
しかし、そこでそのカミサマは満足してしまった。だが枠を作ったからにはやらねばならない。
そこでカミサマはその世界の枠に自分自身を落とし込むことにした。
しかし、自身を喪うわけにもいかない。自分の身を受ける存在を、隣のカミサマの大地から黙って少し拝借した。
それで作り上げたのは丸い卵。
自分自身を世界に落とし込んでも、自我はこの卵に宿り、何かの存在として生まれるようにするために。
その卵に力を注ぎ、自分のすべてをこの世界にすべて落とし込む。
神の力がにじんだ世界は、傍らにある世界とは違うものになった。
人間は存在しない。そこにあるのは幻獣ばかりだ。角を持つ獣、鱗と翼を持つものとその姿は多種多様。
しかし知性がないわけではない。
人ならざる者は生まれた時から、自我を持ち、言葉を持ち、意思の疎通を可能とした。それと共に、稲生の力をそれぞれ持ったのだ。
そして、傍らの世界の大地を使った卵からカミサマが再び生まれなおすと、もう一方の世界にもその影響が出た。
二つの世界が溶け合う場所が生まれたのだ。
カミサマはそれに気づいてあわてた。互いの世界は不干渉なものだと思っていたからだ。
カミサマもそれに気づいてあわてた。文句を言われると思ったからだ。
しかし、お互いの世界を改めて切り離すのも手間暇かかる。失敗したらもう一度やり直しだ。
しばらくその溶け合う場所を見ていたが、閉じたり開いたり。しかし何かしら大問題が起きる、というわけではない様子。
ならば良いかと二人のカミサマは話し合った。
カミサマはカミサマにくどくどと文句を言われた。カミサマはそこでカミサマに提案したのだ。
自分の世界のものは、お前の世界のものに力を貸すようにしよう、と。
カミサマはそれを断るのも、と思い好きにすればいいと告げた。カミサマは律儀に、自分の作った世界にそれを盟約として課した。
傍らの世界のものが、本当に助けを欲していると思い、本当に力を貸して良いと思ったなら、世界の壁を越えてあちらへ行き、助けるという責を課すと。
隣り合う世界を行き来する事は可能ではあるが、互いの世界を壊さぬために色々な制約がある。
この盟約は、その制約からは外れる特別だった。
しかし、人間がそれを知ることはない。それは人ならざるもの達だけが知ることだった。
そしてこれには穴があったのだ。すべて主観の問題。
本当にそうである、という証拠もいらない。そう思ったなら、なのだ。
やがて人間が幻獣と呼ぶようになる人ならざるものたちは、傍らの世界を覗き見ては気に入りを見つけ、自らの一端を貸し与えたのだ。
そしてそんな人間は、大抵魔力を持つものだった。魔力を持つものは血筋に依存する。
人々は幻獣の恩恵を得るものを、やがて頭に据えるようになった。そして、国が出来た。
国が出来、人間は幻獣に一族とずっと関わりを持つように頼む。それは他の一族を牽制する為でもあり、治めるものたちを納得させる為でもあった。
幻獣はそれを受け入れる。何故ならそれを受けて得る恩恵があったからだ。
魔力は、幻獣にとっておいしいもの。それをもらえるなら、と。
人間と幻獣の関係には世界を超えて、互いの利益があったのだ。
最初は世界が違っていてもよかった。しかし時が経つにつれ、お互いの世界を行き来できればという思いも生まれる。
ふたりのカミサマの行き来はお互い自由なのだが、そこに住まう者にとってはそうではない。
一つを中心に、たくさんの国がある世界は人の住む世界。
そして国も何も無い世界は人ならざるものの住む世界だった。
人に似た形をとる事はできるが、完全に同じではない幻獣たちは、人間を真似て国を作り始めた。
姿形異なっても気にはしない。気があうもので作った国もどきだ。とりあえずというように、一番強いものを頭に据えて、統治という真似事、国もどき同市の争いの真似事。
真似事で成り立った世界だ。
ふたつの世界は互いを支えるでもなく、相反するでもなく存在し続けた。
だが時の流れにより、世界は少しずつ変わる。
ふたつの世界が重なる場所、重なる時が生まれたのだ。
これはそんな時に、とある幻獣に見初められてしまった引きこもり令嬢の話。
まず世界の枠を作り、その中心に自分の住む場所を作った。そのあとに枠の中にある程度の水を満たし、海とする。
真っ白な世界では面白くないから、空を生み気まぐれにその様相を変え、昼と夜を作った。
次にカミサマはたくさんの土くれを海へと投げた。それはいくつもの大地へと変わる。
カミサマの住まう場所はその大地に囲まれるようにあった。
その大地に何もいないのは寂しいと、カミサマは生命を生み出した。
草木に始まり、多種多様な動物。そして最後に、人間を作った。
その様子を見ていた別の、黒いカミサマが、面白そうだと隣に世界の枠をまた設けた。
しかし、そこでそのカミサマは満足してしまった。だが枠を作ったからにはやらねばならない。
そこでカミサマはその世界の枠に自分自身を落とし込むことにした。
しかし、自身を喪うわけにもいかない。自分の身を受ける存在を、隣のカミサマの大地から黙って少し拝借した。
それで作り上げたのは丸い卵。
自分自身を世界に落とし込んでも、自我はこの卵に宿り、何かの存在として生まれるようにするために。
その卵に力を注ぎ、自分のすべてをこの世界にすべて落とし込む。
神の力がにじんだ世界は、傍らにある世界とは違うものになった。
人間は存在しない。そこにあるのは幻獣ばかりだ。角を持つ獣、鱗と翼を持つものとその姿は多種多様。
しかし知性がないわけではない。
人ならざる者は生まれた時から、自我を持ち、言葉を持ち、意思の疎通を可能とした。それと共に、稲生の力をそれぞれ持ったのだ。
そして、傍らの世界の大地を使った卵からカミサマが再び生まれなおすと、もう一方の世界にもその影響が出た。
二つの世界が溶け合う場所が生まれたのだ。
カミサマはそれに気づいてあわてた。互いの世界は不干渉なものだと思っていたからだ。
カミサマもそれに気づいてあわてた。文句を言われると思ったからだ。
しかし、お互いの世界を改めて切り離すのも手間暇かかる。失敗したらもう一度やり直しだ。
しばらくその溶け合う場所を見ていたが、閉じたり開いたり。しかし何かしら大問題が起きる、というわけではない様子。
ならば良いかと二人のカミサマは話し合った。
カミサマはカミサマにくどくどと文句を言われた。カミサマはそこでカミサマに提案したのだ。
自分の世界のものは、お前の世界のものに力を貸すようにしよう、と。
カミサマはそれを断るのも、と思い好きにすればいいと告げた。カミサマは律儀に、自分の作った世界にそれを盟約として課した。
傍らの世界のものが、本当に助けを欲していると思い、本当に力を貸して良いと思ったなら、世界の壁を越えてあちらへ行き、助けるという責を課すと。
隣り合う世界を行き来する事は可能ではあるが、互いの世界を壊さぬために色々な制約がある。
この盟約は、その制約からは外れる特別だった。
しかし、人間がそれを知ることはない。それは人ならざるもの達だけが知ることだった。
そしてこれには穴があったのだ。すべて主観の問題。
本当にそうである、という証拠もいらない。そう思ったなら、なのだ。
やがて人間が幻獣と呼ぶようになる人ならざるものたちは、傍らの世界を覗き見ては気に入りを見つけ、自らの一端を貸し与えたのだ。
そしてそんな人間は、大抵魔力を持つものだった。魔力を持つものは血筋に依存する。
人々は幻獣の恩恵を得るものを、やがて頭に据えるようになった。そして、国が出来た。
国が出来、人間は幻獣に一族とずっと関わりを持つように頼む。それは他の一族を牽制する為でもあり、治めるものたちを納得させる為でもあった。
幻獣はそれを受け入れる。何故ならそれを受けて得る恩恵があったからだ。
魔力は、幻獣にとっておいしいもの。それをもらえるなら、と。
人間と幻獣の関係には世界を超えて、互いの利益があったのだ。
最初は世界が違っていてもよかった。しかし時が経つにつれ、お互いの世界を行き来できればという思いも生まれる。
ふたりのカミサマの行き来はお互い自由なのだが、そこに住まう者にとってはそうではない。
一つを中心に、たくさんの国がある世界は人の住む世界。
そして国も何も無い世界は人ならざるものの住む世界だった。
人に似た形をとる事はできるが、完全に同じではない幻獣たちは、人間を真似て国を作り始めた。
姿形異なっても気にはしない。気があうもので作った国もどきだ。とりあえずというように、一番強いものを頭に据えて、統治という真似事、国もどき同市の争いの真似事。
真似事で成り立った世界だ。
ふたつの世界は互いを支えるでもなく、相反するでもなく存在し続けた。
だが時の流れにより、世界は少しずつ変わる。
ふたつの世界が重なる場所、重なる時が生まれたのだ。
これはそんな時に、とある幻獣に見初められてしまった引きこもり令嬢の話。
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