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ふぁとあくびひとつ。
昨晩は話し込んでしまったわブランシュは反省する。
今まで興味を持たなかったからだろうか、ムゥの世界について根掘り葉掘りしてしまったのだ。
「ブランシュ」
「本当に一緒に来るの?」
「ああ」
目立ちそうだわとブランシュは思う。
しかし止めることもできないのもわかっていた。
「そう……じゃあこれを首に」
「いやだ!!」
ひらりとブランシュの指先で踊るピンクのリボン。
ムゥはつけるものかと声を上げるがつけてとブランシュはせまる。
「つけてくれないと、わたしがつれていると言い切れないわ」
そもそも力ある幻獣はこの世界にはこれないのだ。いても弱く、姿は隠している。気に入った者にしか姿を見せない。
それが普通なのだが、ムゥはそうではない。
「リボンは妥協するが、ピンクはいやだ」
「……じゃあわたしもつけるわ、おそろい」
「おそろいだ、と……」
「ええ、おそろい」
ブランシュは鏡の前に座ると髪の一房をとりそこにリボンを結んだ。
そしてほら、とムゥを手招く。
ムゥは歩み寄るとぴょんとブランシュの膝の上に乗った。
「早く結べばいい」
しぶしぶ結ばれてやるという様子だが尾は揺れている。
それが本心ねと思いながらブランシュは首にリボンを結んだ。
「似合ってるわ」
ブランシュは足元にムゥを下ろし扉へ向かう。
食堂に行くのは、いつもは少し気鬱。しかし今日はそうではなかった。
足元をみればムゥがいるのだ。
「ブランシュ?」
立ち止まって、扉を開けない。
どうしたのかとムゥが見上げてくる。
少し前の、声だけのとき。なぜわたしに話しかけるのかと、わずらわしいと思ったことがあるのは否定しない。
けれど声が聞こえなかった三日間。最終的には心配になっていた。
そして、聞こえなかったのはこちらに来るためだと言い、目の前にいる。
そこまでして、普通はこないはずだ。それをしたのだから、ムゥが向ける好意は本物だと思えた。
「今日は逃げずに授業をうけるわ」
「そうか」
「だから、そばにいてね」
もちろんだと尾が跳ねる。それは俺の喜び、幸せだと。
ブランシュは微笑んで扉を開け、食堂に向かった。
朝、ここでちくちくと視線向けられとる朝食には味がなかった。
今日はおいしく食べることができるかしらと思う。
食堂に入ればちくちくと視線がささる。ひそひそと何か言われているのもわかった。
「ムゥ、何がいいの? 適当にとったのでいい?」
「ブランシュに任せる」
しかし、ブランシュは足元に視線を向けている。いつもはさっさととっていくブランシュの動きが遅いことに周囲は気づいて、その原因を見たのだ。
猫ではない。犬のようではあるが、角がある。一体何をつれているのかとすぐ話題になり、広まった。
そんな外野の様子を気にせず、いくつか朝食を選んで席に座る。
さすがにテーブルの上にあがるのはここではまずいと思ったのだろう。ムゥは隣の席に上がった。
ハムや卵、野菜と適当にとったものをブランシュはムゥのそばに置いた。
自分と同じものでいいのかしらとも思ったのだが口にしているのだから問題ないのだろう。
「美味しい?」
「飛び上がって喜んで、驚くことはないが美味い」
よかったわとブランシュは安心した。
そして朝食をとり終わる頃、食堂の入り口が騒がしくなる。
何かしらねとそちらを向けば学園長がいた。
あら早い、とブランシュは思う。ムゥのことは広がる。そして問われると思ってはいたのだがこんなにすぐとは思わなかったのだ。
「ブランシュ嬢」
「おはようございます、学園長」
ブランシュは立ち上がり、礼をする。そして笑みを向けた。
「来てくださると思っておりました。こちらでお話しします?」
「いや、私の部屋で」
はいとブランシュは頷き、ムゥを抱え上げた。
学園長はついてくる意思を見せたブランシュを確認し、ついてきなさいと先を歩んだ。
「質問攻めになるかしら」
「俺が答える。ブランシュは黙っていればいいぞ」
「そうするわ」
ブランシュは頷く。
ムゥは幻獣だとは言える。しかし、それ以上はわからない。
学園長も、ムゥが幻獣なのはわかっているだろう。だからこそ慌ててきたのだ。
学園長室に通され、幻獣だとは思うのだが、と聞かれる。
ムゥは丁寧に学園長に答えた。
答えられる質問には、だが。
「人が学術的にも我らのことを知りたいのはわかるがな、俺は協力する気はない。お前達のためにここにきたのではない」
ムゥはブランシュの膝の上だ。ブランシュはわたしはよくわかりませんのでと最初に言った。
学園長はちらちらととりなしてほしいという視線を向けてくるがスルーだ。
最終的に、ムゥはずっとそばにいることを認める。そして干渉はしないという約束を取り付けていた。
無理強いすればそれ相応、やりかえさせてもらうと脅していたが、ブランシュは聞かなかったふり。
そして、長い時間を学園長室で過ごし、退出したところでブランシュはまた問題とぶつかる。
「お待たせしました?」
「そこそこな」
「俺はさっき来たところだけどね」
「今度はこっちに付き合ってもらおうか」
ムゥは唸り声をあげる。
学園長室の外で待ち伏せていた王子三人。それはムゥにとって1番気に入らない対象だった。
付き合ってもらおうか、と言われたブランシュは断ることはできさそうと思う。そうできる空気ではなく、わかりましたと頷くしかなかった。
昨晩は話し込んでしまったわブランシュは反省する。
今まで興味を持たなかったからだろうか、ムゥの世界について根掘り葉掘りしてしまったのだ。
「ブランシュ」
「本当に一緒に来るの?」
「ああ」
目立ちそうだわとブランシュは思う。
しかし止めることもできないのもわかっていた。
「そう……じゃあこれを首に」
「いやだ!!」
ひらりとブランシュの指先で踊るピンクのリボン。
ムゥはつけるものかと声を上げるがつけてとブランシュはせまる。
「つけてくれないと、わたしがつれていると言い切れないわ」
そもそも力ある幻獣はこの世界にはこれないのだ。いても弱く、姿は隠している。気に入った者にしか姿を見せない。
それが普通なのだが、ムゥはそうではない。
「リボンは妥協するが、ピンクはいやだ」
「……じゃあわたしもつけるわ、おそろい」
「おそろいだ、と……」
「ええ、おそろい」
ブランシュは鏡の前に座ると髪の一房をとりそこにリボンを結んだ。
そしてほら、とムゥを手招く。
ムゥは歩み寄るとぴょんとブランシュの膝の上に乗った。
「早く結べばいい」
しぶしぶ結ばれてやるという様子だが尾は揺れている。
それが本心ねと思いながらブランシュは首にリボンを結んだ。
「似合ってるわ」
ブランシュは足元にムゥを下ろし扉へ向かう。
食堂に行くのは、いつもは少し気鬱。しかし今日はそうではなかった。
足元をみればムゥがいるのだ。
「ブランシュ?」
立ち止まって、扉を開けない。
どうしたのかとムゥが見上げてくる。
少し前の、声だけのとき。なぜわたしに話しかけるのかと、わずらわしいと思ったことがあるのは否定しない。
けれど声が聞こえなかった三日間。最終的には心配になっていた。
そして、聞こえなかったのはこちらに来るためだと言い、目の前にいる。
そこまでして、普通はこないはずだ。それをしたのだから、ムゥが向ける好意は本物だと思えた。
「今日は逃げずに授業をうけるわ」
「そうか」
「だから、そばにいてね」
もちろんだと尾が跳ねる。それは俺の喜び、幸せだと。
ブランシュは微笑んで扉を開け、食堂に向かった。
朝、ここでちくちくと視線向けられとる朝食には味がなかった。
今日はおいしく食べることができるかしらと思う。
食堂に入ればちくちくと視線がささる。ひそひそと何か言われているのもわかった。
「ムゥ、何がいいの? 適当にとったのでいい?」
「ブランシュに任せる」
しかし、ブランシュは足元に視線を向けている。いつもはさっさととっていくブランシュの動きが遅いことに周囲は気づいて、その原因を見たのだ。
猫ではない。犬のようではあるが、角がある。一体何をつれているのかとすぐ話題になり、広まった。
そんな外野の様子を気にせず、いくつか朝食を選んで席に座る。
さすがにテーブルの上にあがるのはここではまずいと思ったのだろう。ムゥは隣の席に上がった。
ハムや卵、野菜と適当にとったものをブランシュはムゥのそばに置いた。
自分と同じものでいいのかしらとも思ったのだが口にしているのだから問題ないのだろう。
「美味しい?」
「飛び上がって喜んで、驚くことはないが美味い」
よかったわとブランシュは安心した。
そして朝食をとり終わる頃、食堂の入り口が騒がしくなる。
何かしらねとそちらを向けば学園長がいた。
あら早い、とブランシュは思う。ムゥのことは広がる。そして問われると思ってはいたのだがこんなにすぐとは思わなかったのだ。
「ブランシュ嬢」
「おはようございます、学園長」
ブランシュは立ち上がり、礼をする。そして笑みを向けた。
「来てくださると思っておりました。こちらでお話しします?」
「いや、私の部屋で」
はいとブランシュは頷き、ムゥを抱え上げた。
学園長はついてくる意思を見せたブランシュを確認し、ついてきなさいと先を歩んだ。
「質問攻めになるかしら」
「俺が答える。ブランシュは黙っていればいいぞ」
「そうするわ」
ブランシュは頷く。
ムゥは幻獣だとは言える。しかし、それ以上はわからない。
学園長も、ムゥが幻獣なのはわかっているだろう。だからこそ慌ててきたのだ。
学園長室に通され、幻獣だとは思うのだが、と聞かれる。
ムゥは丁寧に学園長に答えた。
答えられる質問には、だが。
「人が学術的にも我らのことを知りたいのはわかるがな、俺は協力する気はない。お前達のためにここにきたのではない」
ムゥはブランシュの膝の上だ。ブランシュはわたしはよくわかりませんのでと最初に言った。
学園長はちらちらととりなしてほしいという視線を向けてくるがスルーだ。
最終的に、ムゥはずっとそばにいることを認める。そして干渉はしないという約束を取り付けていた。
無理強いすればそれ相応、やりかえさせてもらうと脅していたが、ブランシュは聞かなかったふり。
そして、長い時間を学園長室で過ごし、退出したところでブランシュはまた問題とぶつかる。
「お待たせしました?」
「そこそこな」
「俺はさっき来たところだけどね」
「今度はこっちに付き合ってもらおうか」
ムゥは唸り声をあげる。
学園長室の外で待ち伏せていた王子三人。それはムゥにとって1番気に入らない対象だった。
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