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第一章
2.私、異世界人の子を産んでました
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目を開けると、石造りの立派な建物が私の周りをぐるりと取り囲むように、そびえ立っていた。現代建築ではあり得ない、石を手で積んだのかのような歪な形の建物だ。さらに、見上げると空が見える。つまり、ここは、目の前の建物の中庭のような場所なのだろう。
さっきまで、確かに家の中にいたはずなのに。
はっとして、抱きしめていた澪璃を覗き込む。
腕のなかの存在は、明らかに体の質量が少なくなっていた。生まれた頃のような小さな赤ちゃんの姿になって、寝息を立てている。
そして、その頬には鱗のようなものが。
---今、私の腕の中にいるのは何!?
明らかに、人類ではないその姿に、血の気が引いた。腕が震え、取り落としそうになるが、深呼吸をして抱き直す。
「澪璃!澪璃!!どこなの!?」
命よりも大事な我が子。あの娘に何かあったなら、私は生きていけない。
「くぅるるる」
腕の中から、小さなうめき声のような、鳴き声のような声がする。はっとしてのぞき込むと、赤ちゃんの目が薄く開いていた。その色は---蒼。
「……澪璃、なの?」
「うぅ」
信じられないが、目を開くと、澪璃の小さい頃によく似ている気がする。
震える手で、赤ちゃんの口元を2回揉む。赤ちゃんは口をあひる口にしてブゥっと息を吐いて笑った。昔、澪璃が好んで、よくやった手遊びだった。懐かしさに思わずこちらも笑いが零れた。
そもそも、瞬間移動して、こんなよく分からない場所に立っている。だったら、澪璃が小さくなってしまうこともある、の…かも?
オロオロしながらも、もう一度腕の中の赤ちゃんをしっかり抱き直した。
急に周囲がざわめいた。
石造りの建物の中から沢山の人が出てくる。
皆、背が高く、背中からコウモリのような羽を生やし、中世の騎士のような甲冑を身に着け、その隙間から角と、頬の鱗が見える。二足歩行だが、どう見ても人間ではない。しかも、須らく武器を携えている。
「幼竜だ」
「メスだ!」
「なぜ人間が?」
「奪い返せ!」
私はなすすべ無く、あっという間に取り囲まれてしまった。
---取られる!
慌てて澪璃を抱きしめて、覆い被さるようにしゃがみ込んだ。
見えないけど、ピリピリとした雰囲気に肌が粟立つ。
剣を抜く気配がして、切られる!と咄嗟に目をつぶった時だった。
私を中心に、ぶわっと凄まじい風が吹いて、周囲がわっと言って吹き飛んだ。
何度か、詰め寄る、吹き飛ばされるを繰り返して、相手は私たちに触れないと気づいたようだ。
一人がため息を付くと、武器を収めると、一歩前に出た。
「ついて来い」
なんで大人しく従う必要が?と思ったが、こちらは丸腰な上に、赤ちゃんまでいる。圧倒的に不利な状況だ。
仕方なく、騎士の後ろを少し離れてついていく。
そして、残りの騎士たちは私の後ろをぞろぞろとついてきた。
■
連れていかれた先は、立派な広間。
そして、階段の先の豪奢な椅子に一人の男性が座っていた。
金髪に青い目をしていて、やはり頭の両側に角がある。
私たちの姿を見て、一瞬だけ目を見開いたように見えたが、直ぐに無表情に戻った。
うわぁ、イケメンだなぁ……でも、冷たそうな目。絶対怖い人だ……。
お付きのものに耳打ちされ、頷いた後、金髪の男性は、私に声をかけた。
「その幼竜はお前の子か?」
「ヨウリュウってなに?でも、この子は私の子よ!」
「控えよ!竜帝になんという口の利き方だ!」
横から騎士たちが口々に文句を言う。私は一瞬怯んだが、金髪の男性---おそらく竜帝は、軽く手を振るだけで周囲を黙らせる。
「見ればまだ卵から孵る年でもなさそうだが?」
一度は怯んだが、話の焦点が澪璃であるなら、私は黙るわけにはいかない。
「卵って何?この子は正真正銘わたしが生んだ子よ!澪璃、10歳!」
「10歳……ふむ、やはりまだ孵る年ではないか。それはその状態でそなたを守ったという。であれば、姿形を歪めていた反動が出たのやも知れんな」
「反動って何!?」
竜帝は、視線だけで澪璃を見る。
えっ、と澪璃の顔を覗き込むと、少し青白い顔で眠っていた。私は蒼白になって声を上げる。
「どういうこと?これはただ寝てるんじゃないの?この子は、ちゃんと目を覚ますの!?」
焦って声を張り上げる私から竜帝は視線をそらす。
「力を蓄えるために寝ているだけだ。暫くそのままかもしれぬがいずれ目を覚ます」
さっきまで、確かに家の中にいたはずなのに。
はっとして、抱きしめていた澪璃を覗き込む。
腕のなかの存在は、明らかに体の質量が少なくなっていた。生まれた頃のような小さな赤ちゃんの姿になって、寝息を立てている。
そして、その頬には鱗のようなものが。
---今、私の腕の中にいるのは何!?
明らかに、人類ではないその姿に、血の気が引いた。腕が震え、取り落としそうになるが、深呼吸をして抱き直す。
「澪璃!澪璃!!どこなの!?」
命よりも大事な我が子。あの娘に何かあったなら、私は生きていけない。
「くぅるるる」
腕の中から、小さなうめき声のような、鳴き声のような声がする。はっとしてのぞき込むと、赤ちゃんの目が薄く開いていた。その色は---蒼。
「……澪璃、なの?」
「うぅ」
信じられないが、目を開くと、澪璃の小さい頃によく似ている気がする。
震える手で、赤ちゃんの口元を2回揉む。赤ちゃんは口をあひる口にしてブゥっと息を吐いて笑った。昔、澪璃が好んで、よくやった手遊びだった。懐かしさに思わずこちらも笑いが零れた。
そもそも、瞬間移動して、こんなよく分からない場所に立っている。だったら、澪璃が小さくなってしまうこともある、の…かも?
オロオロしながらも、もう一度腕の中の赤ちゃんをしっかり抱き直した。
急に周囲がざわめいた。
石造りの建物の中から沢山の人が出てくる。
皆、背が高く、背中からコウモリのような羽を生やし、中世の騎士のような甲冑を身に着け、その隙間から角と、頬の鱗が見える。二足歩行だが、どう見ても人間ではない。しかも、須らく武器を携えている。
「幼竜だ」
「メスだ!」
「なぜ人間が?」
「奪い返せ!」
私はなすすべ無く、あっという間に取り囲まれてしまった。
---取られる!
慌てて澪璃を抱きしめて、覆い被さるようにしゃがみ込んだ。
見えないけど、ピリピリとした雰囲気に肌が粟立つ。
剣を抜く気配がして、切られる!と咄嗟に目をつぶった時だった。
私を中心に、ぶわっと凄まじい風が吹いて、周囲がわっと言って吹き飛んだ。
何度か、詰め寄る、吹き飛ばされるを繰り返して、相手は私たちに触れないと気づいたようだ。
一人がため息を付くと、武器を収めると、一歩前に出た。
「ついて来い」
なんで大人しく従う必要が?と思ったが、こちらは丸腰な上に、赤ちゃんまでいる。圧倒的に不利な状況だ。
仕方なく、騎士の後ろを少し離れてついていく。
そして、残りの騎士たちは私の後ろをぞろぞろとついてきた。
■
連れていかれた先は、立派な広間。
そして、階段の先の豪奢な椅子に一人の男性が座っていた。
金髪に青い目をしていて、やはり頭の両側に角がある。
私たちの姿を見て、一瞬だけ目を見開いたように見えたが、直ぐに無表情に戻った。
うわぁ、イケメンだなぁ……でも、冷たそうな目。絶対怖い人だ……。
お付きのものに耳打ちされ、頷いた後、金髪の男性は、私に声をかけた。
「その幼竜はお前の子か?」
「ヨウリュウってなに?でも、この子は私の子よ!」
「控えよ!竜帝になんという口の利き方だ!」
横から騎士たちが口々に文句を言う。私は一瞬怯んだが、金髪の男性---おそらく竜帝は、軽く手を振るだけで周囲を黙らせる。
「見ればまだ卵から孵る年でもなさそうだが?」
一度は怯んだが、話の焦点が澪璃であるなら、私は黙るわけにはいかない。
「卵って何?この子は正真正銘わたしが生んだ子よ!澪璃、10歳!」
「10歳……ふむ、やはりまだ孵る年ではないか。それはその状態でそなたを守ったという。であれば、姿形を歪めていた反動が出たのやも知れんな」
「反動って何!?」
竜帝は、視線だけで澪璃を見る。
えっ、と澪璃の顔を覗き込むと、少し青白い顔で眠っていた。私は蒼白になって声を上げる。
「どういうこと?これはただ寝てるんじゃないの?この子は、ちゃんと目を覚ますの!?」
焦って声を張り上げる私から竜帝は視線をそらす。
「力を蓄えるために寝ているだけだ。暫くそのままかもしれぬがいずれ目を覚ます」
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