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中島君とは…よく目が合う
斎藤花蓮は思っていた。
中島弘人は、花蓮と同じ高校に通っていたが、一度も同じクラスになったことはなく、最終学年を迎えた。そして今年もまた別のクラスだった。
初めは存在すら気づいていなかった。ある時視線を感じて、その方向を向くと彼がいた。それ以来、気づくと彼を見ることが多くなった。彼を見ると、必ず彼も花蓮を見ていた。目が合うと、妙にそわそわして、お互い視線を外すのだった。
中島君も私の事が気になっているのだろうか?
「…蓮! …花蓮!」
気が付くと親友の葵が花蓮の座っている机のそばに来て呼んでいた。
「何ボーっとしてるの?」
「ごめん! 気が付かなかった。」
葵は花蓮の顔の横に自分の顔を近づけて、花蓮の視線の先の中島弘人を見た。
「花蓮は中島君の事が好きなんでしょ?」
「いや、そんなんじゃ…」
「隠さなくてもいいって! 私はいいと思うな~、中島君。かっこいいし。」
「だから、そんなんじゃないってば!」
確かに中島弘人を見かけるとつい目で追ってしまうが、一度も話したことないし、どんな性格なのかも知らない。好きになるきっかけさえ訪れていない。葵の言うような事は無い、と花蓮は思っていた。
「好きになるのに理由なんている? そんなたいそうなきっかけなんて無くても何度か目があって好きになるなんて普通にあるよ。」
葵は中島弘人をチラチラ見た。
「逆に私は理由もなく好きになる方が運命を感じる!」
「…そう?」
窓から暖かい風が花蓮の頬をかすめた。
わかりかけそうになった何かを暖かい風が吹き飛ばしていったような気がした。
2.
夕暮れ
もう季節も終わりが近づき、桜のトンネルの下は雪のように花びらが舞い散っている。
花蓮は大学進学のため、この春上京した。
初めての町
初めての一人暮らし
嬉しさよりも不安の方が勝っていた。
花蓮は母親に会いたくなった。
今頃母は、夕食の準備をしているのだろうか?
仕事もあり、かつ祖母の介護もしている。
いつも笑顔でなんてことないみたいに振舞っていたけど、大変じゃないはずはない。
母親の事を考えていたら、涙が込み上げてきた。
その先の角を曲がれば、花蓮のマンションだった。
その時、誰かから急に羽交い絞めにされて、マンション脇の路地に引きずられていった。
見ず知らずの男が、花蓮の口を押えて抱き着いている。
何で!
何故私がこんな目にあうの!
助けて!
」
誰か!
花蓮はそう叫びたかったが、パニック状態で何もできなかった。
その時!
誰かが男の腕を引っ張り、顔を思いっきり殴った。
男は驚いて、一目散に逃げて行った。
「…中島…君?」
花蓮を助けてくれたのは、中島弘人だった。
「大丈夫?」
「…うん。」
「よかった、無事で。」
Café Copenhagen
「ありがとう。助けてくれて。」
「さっき駅前のコンビニにいたら…斎藤が歩いてるの見かけて…。後ろから怪しい奴がついて行ってたから、なんかヤバいなと思って…。」
「そうだったんだ。全然気づかなかった。今度から気を付ける。」
「うん。」
弘人は花蓮に優しく微笑んだ。
花蓮はさっきから心臓の鼓動が高なっていた。
「中島君…私の事、よくわかったね! 一緒にクラスになったこと無いのに…。」
「よく目が合ってた…。」
弘人は花蓮の目をじっと見た。
「…、よく…目が…合ってたね…。」
「うん。よく目が合ってた…。」
「…なんだか…、初めてしゃべった感じしないね」
二人は同時に言った。
その時、店員が注文していたドリンクを運んできた。
「中島君、甘党なの?」
「あー、うん。男のくせに恥ずかしいけど、アイス抹茶ラテ好きなんだ。」
「そんなことないよ、美味しいよね。」
「斎藤さんは、ヘーゼルナッツコーヒー?」
「うん、好きなの。」
「そうなんだ!」
何故か気恥ずかしくなって、二人は運ばれてきたドリンクを無言で飲んだ。
「コペンハーゲンか…。」
弘人は窓の外に見えるカフェの看板を見ながら言った。
コペンハーゲンか…
コペンハーゲン…
コペン…
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