コペンハーゲン

まんまるムーン

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9.


 今晩会えないかな? 話があるんだ。

仕事中、花蓮のケータイに弘人からメッセージが入った。

花蓮は仕事が終わると、弘人が指定したレストランへ向かった。

時間よりだいぶ早く着いたのに弘人は先に来ていた。

「早かったんだね。」

「いろいろ切り上げてきた。」

「外、すごいね!」

壁いっぱいの窓の外に、みなとみらいの夜景が広がっていた。

「きれいだな。」

「うん。」

「…花蓮…」

「ん?」

「一緒に…コペンハーゲンに行かないか?」

「コペンハーゲン!」

「うん。俺、赴任することになったんだ。」

花蓮は少し驚いた。

 あれ… コペンハーゲンって… いつかどこかで…

花蓮はふとデジャヴュのようなものを感じた。

葵が言ったように、結婚話が出るかもしれないとは思っていたが、まさか海外赴任で、コペンハーゲンについて行くなんて…。

 …ん…?

 コペンハーゲンって…、どこの国だっけ?

「デンマークだよ! デンマークの首都! 花蓮、コペンハーゲンってどこの国って思ってただろ!」

弘人は思わずニヤニヤして、花蓮を見た。

そして真剣な表情に変わった。

「俺と結婚して一緒にコペンハーゲンに行ってください!」


窓の外には観覧車が輝きながら回っていた。

花蓮の目の前の景色も、輝きながら回りだした。




10


暖かくて柔らかい薄いピンクの靄の中に浮かんでいた。

このままずっとフワフワ浮かんで眠っていたいと思っていた。

いきなり花蓮の手を誰かがつかんだ。

横を見ると、弘人がいた。

弘人は制服を着ていた。

高校時代の弘人だった。

そして花蓮も高校時代の花蓮だった。

「下に俺たちが見える。」

弘人はつぶやいた。

目を凝らすと、靄がだんだん消えていき、校舎がはっきり見えるようになった。

そして校舎もだんだんと消えて行って、校舎の中が見えた。

廊下に弘人と小田が立っている。弘人は花蓮をじっと見つめていた。

「弘人、ずっと私の事見てるね。」

「…うん。この時だけじゃない。いつもいつも…花蓮のこと、目で追ってた。」

「何故見てたの?」

「何故って…。」

「大学の時、何度も付き合うかもしれないチャンスあったけど、付き合わなかった。私、好かれてないと思ってたよ。」

「そんなこと、ありえないよ。ただ…。」

「ただ…?」


「俺、思うんだけど…、果物とか美味しくなるまで寝かせとくでしょ。ワインなんかも。人間関係もそういうのってあるような気がするんだよな…。」

「…私は食べ物か?」

花蓮は眉間に皺を寄せた。

「いや、そういう意味じゃなくて…。でも、俺たちの場合、待つことが大事なんだ。俺にとっても花蓮にとっても…。」

「…、全く意味わかんない…。」

「ずっと花蓮と一緒にいたい。」


「ほんとに?」
「うん、ずっと一緒。死ぬまで一緒。だから我慢もするし待つこともいとわない!」


「見て!」

花蓮が見下ろすと、もう高校時代の二人はいなくなって、今度は大学時代に初めて弘人と話した喫茶店にいる二人が見えた。


喫茶 コペンハーゲン

「俺、めっちゃクールな顔してるけど、ほんとは嬉しくてニヤけてしまいそうなのを必死に堪えてたんだ。」

「そうだったの? そうしてくれてたらよかったのに。」

弘人はそう言って少し膨れている花蓮を愛おしそうに眺めた。

「あ! 今から大学生の俺が言うこと、しっかり聞いておいて! 潜在意識の奥底にたたきこんで!」

「え? どうして?」

「いいから! ほら、もう言い始めるよ!」

大学生の弘人は、弘人は窓の外に見えるカフェの看板を見ながら言った。


「コペンハーゲンか…。」


花蓮はしっかりと聞いた。

振り返って弘人を見た。

二人はしっかり見つめあった。

弘人の輪郭はだんだんぼやけていって、そして姿は消えていった。





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