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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!

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 朝食の後片付けをして掃除を始めようとすると、チャイムが鳴った。モニターを見ると、中年の女性が立っている。

誰?

「おはようございます。家事代行サービスの緒方です!」
家事代行サービス? そんな人呼んでるの、この家は! 夏子、今は仕事してなかったよね? しかし来てしまった人を追い返すわけにはいかない。私はロックを解除して入ってもらった。


「おはようございます! 本日もよろしくお願いします。では、さっそく始めさせていただきますね!」
「は、はぁ…。よろしくお願いします。」
緒方さんというその女性は手慣れた手つきで掃除をしていった。私はする事を奪われてしまって、どうしていいのか自分の立ち位置に戸惑ってしまった。

 その時、ラインが来た。見て見ると、エステサロンからの連絡だった。
「本日11時、いつものコースでお待ちしております。本田」
何? エステ? 家事を代行してもらってエステ行ってんの、夏子? どうしたらいいんだろ? でも予約入れてるし、行かないとお店の人に迷惑かかるよね…。お金は? 夏子、今働いて無かったよね? 家計から出してるのかな? 尚之さんに聞くべきなのかな? 私は夏子にラインを送った。しかし待っても待っても返信は来ない。そのうち家事代行の人も仕事を終えて帰って行った。時間は迫ってくる。しょうがない…。尚之さんに聞こう…。

“お疲れ様です。ちょっと相談なのですが、本日11時にエステの予約をしているみたいなんです…。私がしたようなのですが、記憶がありません。今からキャンセルするのもお店に迷惑がかかりますし、どうしたらよいでしょうか? もし、行かせていただけるのであれば、費用は家計から出させていただいてもよろしいのでしょうか…。お忙しい所、本当に申し訳ありません。お返事お待ちしてます。”

 震える指で送信した。怖い…怖い…やっぱり送らなきゃよかったかな…。尚之さんが帰ってきたら、またあの冷たい目で睨まれるのだろうか…。

 送信した直後に返信が来た。速っ! 私がライン送るの見てたの? わかってたの? もしかしてこの家には監視カメラがあるのっ? とりあえず気持ちを落ち着けて尚之さんからのラインを開いた。

“了解。支払いはカードで。”

短かっ! それだけっ? 何、この全く感情が読み取れないラインはっ!? 返信の速さと短さに背筋が凍り付きそうだ。都会の人って…こうなの?

 とりあえず準備しなきゃ! エステだから顔のマッサージとかするんだよね? どうせメイク落とすんだからスッピンでいいか…。部屋着だったので、洋服だけ着替えようと思って、クローゼットを開けた。当然の事ながら、富裕層の若い奥様方が買うようなブランドの服がいっぱい…。ヘタに着て行って、汚してしまったら怖いな…。私はその中でもなるべく高くなさそうな洋服を選んだ。

 普通のTシャツにジーンズだけなのに、鏡に映るその姿は果てしなくカッコイイ…。夏子…足長いし、痩せてるのに出てるとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでるから何着ても似合うな…。やっぱり生まれつきなのだろうか…。いいなぁ、美しく生まれた人は…。

 いけない! 時間が無いっ! 私は急いでエステサロンへ向かった。
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