最古の吸血鬼は眷属と静かに暮らしたい

紅葉

文字の大きさ
3 / 4
一章

2話 3人での朝食

しおりを挟む
「おはよう、アル様~。」

眷属のうちの1人が元気よく返事をする。2人の眷属は体格は同じようなものの、纏った雰囲気は正反対とも言えるものだった。

ギルと呼ばれた眷属は短めの赤髪に吸血鬼特有の赤い瞳、見た目で感じられる活発さ、軽快さはまさにその通りで野性味のある色気を帯びていた。ノアと呼ばれた眷属は銀髪で目にかかるほどの長さの髪をオールバックにし、同じく赤い瞳を持っていた。紳士的で清涼感のある佇まいをしており、見る人に好感を抱かせる。

そんな2人が自慢で仕方のない主人ことアルフレッドも、なかなかの親バカならぬ眷属バカだった。2人をまだ幼い時に迎え入れ、育ててきたアルフレッドは2人を我が子のように愛していた。

5年前に、2人の成長が止まってからは大人になった2人に、眷属の契約を解除すると伝えたが、2人は頑として首を縦に振らなかった。我が子のように愛してきた2人を自分のせいで狭い世界に閉じ込めたくなかったアルフレッドは契約を解除し、2人の前から姿を消したが、2人は必死にアルフレッドの姿を3年間探し続け、求め続けた。

2人のことを気にかけ、自分を必死に探している姿を見ていたアルフレッドはついには耐えられなくなり2人の元に姿を表した。2人は必死にアルフレッドに懇願し、再契約を結んでもう二度と2人を置いていかないと約束したのだ。

アルフレッドは今までの長い年月の中で、2人以外に幾人かの眷属を持ってきた。皆一様に自分の元を離れたがらなかったが、契約を解除し、説得やアルフレッドが目の前から姿を消すと皆は自然と世界に溶け込んでいったのだ。自ら旅立たせたとはいえ、長く共にしてきた我が子のような眷属たちを送り出すのは辛く、寂しいものだった。

本音を言うと2人がここまで自分の元を離れたがらなかったのは親としてかなり嬉しいものだった。そのため3人は森深くの広い屋敷でひっそりと穏やかに暮らしている。

「うん、ギルもおはよう。」

もう一度、穏やかに返事をするアルフレッドはまだ少しだけ重たい瞼を持ち上げながらにっこりと微笑む。

「アル様ぁ~また抜け出したんですか?いつも同じ場所にいるからいいですけど、せめて書き置きくらいは残してくださいよ。」

「おい、アルフレッド様に失礼だろうが…静かにしてろこの単細胞。」

「ひっでぇなおい、アル様聞きましたか今の!この口の悪さは一生治りませんよ。」

「アルフレッド様、朝食の用意ができました。一緒に参りましょう。」

ギルの言葉を無視してノアは微笑みながらアルフレッドに声をかける。後ろでブツブツと文句を垂れてるギルと、それを完全に無視するノアの2人が面白くてアルフレッドはついつい口元を緩めてしまう。

「ふふ…、朝から元気だね2人とも。」

自分たちの主人が笑ってくれたことが何よりも嬉しくて眷属の2人もつい笑顔になってしまう。

「さぁ、行きましょうアルフレッド様。」

「腹も減ったし早く行こうぜアル様~。」

吸血鬼は一般的な人間の食事を取ることができ、味も感じるし満腹感も得ることができるが人間の食事では吸血鬼としての活動に必要な栄養を摂ることができない。そのため食卓のグラスにはいつも真っ赤な鮮血が注がれている。


この世界で人間が自ら血を売ることは国で禁止されているが、裏社会ではかなりの高額で取引が行われている。吸血鬼による吸血行為には性的快感を得ることができるため、自ら好んで血を飲ませる物も少なくはない。その為、吸血鬼専用の娼館も存在し、普段は普通の娼館として営業しているが特別な会員証を見せることで、吸血行為を黙認し、高額な金銭で売買が行われている場所もある。

ヴァンパイアのように無差別に人を襲うわけではなく、理性のある吸血鬼は元は人でもあり、人間が好きな奴も多いので人々からの警戒も薄い。まぁ、バレたらハンターがこぞってやってくるのでバレない様に暮らしている。

3人の食卓のグラスの中にある真っ赤な鮮血は先ほどギルが森で仕留めてきた鹿の血だった。アルフレッドは人間の血を好まない。所謂ベジタリアンとでも言われるような部類の吸血鬼だった。飲めないわけではなく飲まない。

このように動物の血で生きている吸血鬼は一般的な人間の血飲む吸血鬼よりも身体能力の低下が見られるのだが、数千年の時を生きてきたアルフレッドにはそれが見られなかった。寧ろ一般的な吸血鬼よりもはるかに強い。

毎日アルフレッドと食事を共にしてきた眷属の2人は、動物の血だけではアルフレッドの役に立てないと考え、夜な夜な外に出て人間の血を飲んでいる。それはアルフレッドも気付いており、特に自分に合わせる必要もないと気にしていなかった。寧ろ外に出ることはいいことだと喜んですらいた。






一緒に朝食を食べ終えたノアがアルフレッドに声をかける。

「昨晩は随分と冷え込みましたしお身体は冷やされておりませんか?」

吸血鬼に体温など関係ないのにそんな心配をしてくれるノアが可愛くて仕方がない。

「大丈夫だよ、ありがとうノア。」

「本日は久しぶりに街に出る予定です。アルフレッド様はどういたしますか?」

いつもだったらノアだけで街に行かせてギルと自分は屋敷での引きこもり生活を満喫しているところだったが、今朝の日光浴で気分も良く、久しぶりに街に出てみる気分になった。

(街に出るのは約半年ぶりか…。)

「今日は一緒に街に出るよ、久しぶりにお買い物でもしてみようかな。ギルはどうする?」

その場にいたギルが拗ねないようにちゃんと聞くことは忘れない。

「アル様が行くなら俺も行きますよ~。」

当然とばかりに返事をするギルはアルフレッドとのお出かけに心躍らせていた。

「かしこまりました。そのように準備致します。」

深く頭を下げたノアも久しぶりの主人とのお出かけに足取りが軽くなっているように見えた。

「アル様はなんか見たい物でもあるんですか?」

「んー、特には無いけど今日は天気もいいし久しぶりに外出しようかと思ってね。」

「じゃあ俺が美味しい店紹介しますよ、昼はそこで食べましょう。」

「それは楽しみだ。」

約半年ぶりの外出にアル自身も浮き足立っていた。




***

会員者→会員証に訂正しました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

超絶悪役当て馬転生、強制力に抗う方法は×××

笹餅
BL
乙女ゲームのクズ悪役ストーカーに転生した少年。 17歳のゲーム開始前日から、物語は大きく変わった。 ゲーム通りに進めば、ゾンビになってしまうからゲームの激つよ強制力から必死に逃げるしかない。 ゾンビ回避の近道は攻略キャラクター達と仲良くする事。 勝手に友情ストーリーを目指していたら、別の好感度が上がっている事に気付かなかった。 気付いた頃には裏ルートが始まっていた。 10人の攻略キャラクター×強制力に抗う悪役令息

転生悪役兄と秘密の箱庭でxxx生活

かなめのめ
BL
箱庭世界の乙女ゲームに転生した大学生。 ヒロインに意地悪する悪役少女の兄となり、関わりたくないと思っていた。 好奇心で森の中に入るとそこに広がるのはあのゲームで出てきた城だった。 城に住む5人の魔族や聖人達と奇妙な生活を始める事に… 外には人喰いの化け物がうろつく危険な森の中で、逃げ道がなくなった。 悪役兄ポジだったのに、何故か攻略キャラクター達に身も心も愛される事に… 5人の魔族、聖人×悪役人間兄 その愛は無限に箱庭の中に溢れている。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

BLゲームの悪役に転生した僕、悪役なのに愛されてます、?

表示されませんでした
BL
ストーリーの途中で内容が変わったのでおかしなところが多々あるかもしれません。その時は優しくご指摘してくださると幸いです。 題名変えました。

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

処理中です...