ミスリード役のワガママ小物王女は、ひねくれた不憫系ラスボスを懐柔したい

いずみ

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人格破綻者

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「姫様、どうやらまだ体調がよろしくないようですね。他国に“なんとかは風邪をひかない”と言うことわざがあるようですが……はて、なんだったか」

 コークスとの勉強会は王室の一室で行われている。

 彼は長い足を汲みながら、サーブされたお茶を優雅に飲んでいる。その姿だけ見れば、まるで一枚の絵画のように様になっているが、その形のいい薄い唇から出てくる言葉は非常に刺々しく、私に対する敵意に満ちている。

「まぁ、ジルコニア卿。さすが博識でいらっしゃるのですね。その“なんとか”と言うのが気になりますわ。調べたらぜひ教示下さいませ」

 いつもの私は、コークスの礼を欠いた物言いをされても不機嫌そうにただただダンマリを決め込むだけで、後々使用人達に当たり散らすというのが流れだった。

 いつもと反応が違う私の返しに、コークスはお茶を飲む手を止めてゆっくりと私に目線を合わせるように顔を上げる。

「……使用人達が噂するように、先日の病が脳にまで影響を及ぼしているのでは? いつもの姫様と態度が違いすぎて、正直気持ちが悪いですね」

 怪訝な顔を隠しもせずに胡乱な視線を向けてくる。冷たい氷河のような瞳に一瞬寒気が走るものの、なんとか口角を上げて微笑みをキープした。

「卿とはこれから家族になるのですから、ぜひ気楽にガーネットと呼んでくださいませ」
「ふん……なるほど、そういう事ですか。私に擦り寄り、兄であるアダマスと心を通わせようと目論んでいるのですね。なんとも浅ましい考えをお持ちで」

 コークスは心底呆れたように私をみて嘲笑する。

 彼はあのゲームのキャラ設定通り、一見物腰は穏やかで優しく頼り甲斐があるように見えるが、その本性は公爵家期待の跡取りで若くして栄誉ある騎士団長のアダマスに対するコンプレックスの塊であり、狭量で極度のブラコンで、嫌みったらしい奴である。

 こんな奴の手を借りないといけないだなんて……とも思うけど、ここはR18のBLゲームの世界。モブならまだしも、私のような悪役令嬢に残された道は多くないので、たとえ媚びてでも、生き残るためならばなんでもやるつもりだ。

「これまでの私の所業を鑑みれば浅ましいと言われればその通りで、返す言葉もございません。ただ、今後は私もこれまでの態度を改めて、歴史あるジルコニア家にとって血筋以上に有益な人材になれるよう一層勉学や貴族らしい所作に励む所存ですので、ぜひ卿にも協力していただきたいのです」
「……」

 私が感情込めてそう訴えれば、調子が狂ったとばかりにコークスは渋々教科書を開き、数日間の病欠により遅れていたカリキュラムをこなしていった。
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