ミスリード役のワガママ小物王女は、ひねくれた不憫系ラスボスを懐柔したい

いずみ

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手フェチ

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初めは私が急に態度を変えたことに対して警戒していたコークスだったが、まさかこの調子で三ヶ月間も真面目に勉強に取り組むとは思っていなかったらしく、そのうちに若干警戒はしながらも自分の任されている公務も私の授業時間中に並行して消化していくようになった。

 気がつけば、季節も私が前世の記憶を取り戻した冬の終わりから春へと移り変わろうとしている。

 何人かの使用人の懐柔に成功し情報を精査したところ、オパールはすでにハーレムを築きつつあるようだ。
 騎士の同僚では頭脳派の青髪ラリマー、寡黙な黒髪のグラニット、直情的な赤髪ロードクロス。王族では私の弟デマントイドに加えて、なんと攻略が激ムズとされていた父王アレキサンドライトまでもすでに奴の手におさまった聞く。

(BL世界あるあるのご都合主義か知らないけど、いくらなんでも節操がなさすぎじゃない?)

 この世界では同性愛自体は罪ではないものの、婚約者がいたりすでに結婚した後に発覚した場合は、その家門に大きく傷が付くスキャンダルとなる。

 そんな事を考えつつ、私はコークスに教えを仰ぎつつジルコニア家と縁の深い貴族名簿の暗記に勤しんでいた。

 コークスは私の勉強とは別に、何冊もファイリングされた書類を持ち込んでおり、そのすべてに目を通している。膨大な量の文字が書かれている書類をひとつひとつ確認し、絶え間なくサインを走らせ、物凄いスピードで重要書類を完成させてゆく。
 彼の骨張った長い指が忙しなく分厚い本をめくり、計算や文章で悩む時の癖なのかトントンと机を軽く指で叩き、もう片方の親指を唇に這わせているのを見ると、場違いにも改めて美しい男だなと感じた。
 本来の私の正式な婚約者であるアダマスは、騎士団長に就任してから何かと理由をつけて二年間も私に会いに来ることはなかったし、異性とこんな至近距離で何かをするなんて経験が今までなかったから妙に意識してしまっているのかもしれない。

「私の手ばかり見ていないで、自分の手も動かしたらどうです? それとも、ようやく音を上げましたか。今回は随分と長期的でしたね。ご苦労な事です」

(……本当、性格以外は完璧ね)

 いくら美形とはいえ、一瞬見惚れてしまった自分のチョロさが忌々しい。

 お互いムキになって言い合いになっても仕方がないので、私は内心苛立ちながらも口角を上にキープしつつなんとか気を取り直して、また教科書に視線を戻し黙々と紙に筆を走らせていった。
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