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第二章 無計画な白い結婚
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マリアの追試験は不合格だった。
「どうして!?おかしいわ!!ヨーゼフ様、どうにかして!!」
「マリア、あれはどうにもできないよ。せめてグループ課題だった時にチームの令嬢たちとしっかり協力していれば落第は免れたはずなんだ。
あの時、授業で準備はすべて終わっていると言っていたよね?どうして嘘をついたんだい?」
「嘘じゃないの…。嘘じゃないのよ、ヨーゼフ様。私…、本当に知らなくて…。」
マリアは涙をためて俯く。その姿は運命の姫が悲しんでいるように、ヨーゼフには見えてしまう。
「マリア、やはり二人で平民になろう。」
「そ、そんな!」
マリアは涙を引っ込めておろおろとしている。しかし、貴族学園を卒業できないマリアを妻に迎えるにはヨーゼフが身分を落とすしかない。
「ヨーゼフ様を平民にはできません…。私は…、愛人でいいです。」
「しかし、マリア、君は愛人は嫌だとあれだけ…。」
「ヨーゼフ様と離れる方が嫌です!愛人として、ずっとそばに置いてください!」
ヨーゼフは感動してマリアを抱きしめたが、後ろで話を聞いていたダミアンが呆れたため息をついた。
「今、ヨーゼフ様には婚約者がいない状態です。最初から愛人がいては新しい婚約者などできませんよ。」
「じゃあ婚約者はいなくていいわ!」
「そうはいきません。外交の仕事を今後任されるヨーゼフ様にパートナーは必要です。」
「私が行くわ!」
「あなたでは不適格だと先ほど示されたばかりですよね。」
険悪になる二人をヨーゼフが遮る。
「大丈夫だ、ダミアン。今から婚約者を探してもすぐにはできない。最初の内は一人でもこなせる仕事だけをやるよ。どうせ、兄上に王子ができなければ平民になりたくともなれないんだ。
マリアの今後については一度男爵と話し合わなくてはね。」
マリアがいいことを思いついたと手をたたく。
「そうだわ!クラウディア様に婚約者に戻っていただくのはどうかしら?」
さすがのヨーゼフもぎょっとしてマリアを見た。この子は…何を言っているんだ?
「クラウディア様も相手がいなくてお困りでしょう?きっと喜ばれるわ!」
卒業パーティーから一週間程度経過していたが、その間、ヘルムフート公爵が婚約破棄の書類と高額な慰謝料の請求を持ってきただけでクラウディアもクラウスも登城してはいなかった。
「それは難しいでしょう。」
「ダミアン?」
「婚約破棄を婚約解消とする代わりに、ヘルムフート公爵家はクラウディア嬢とクラウスの婚約の許可を求めている様です。」
ーーーー
あのようなことがあってはクラウディアとヨーゼフの再婚約は難しいと、国王夫妻はよくわかっていた。ヨーゼフがクラウディアを友人または便利な側近の一人程度に思っていたのはもちろん知っていたが、クラウディアがヨーゼフに恋情を寄せていないこともまた明らかだった。
クラウディアが修道院にでも行くとなれば話は別だったかもしれないが、彼女は唯一の直系の娘でもあった。実際、クラウスは遠縁からの養子で、ヨーゼフとクラウディアの間に生まれた子供を養子にとり、その後を継がせることになっていたのだ。
だから、クラウスに婚約者はいなかった。
ここでクラウディアがフリーになって、公爵が当然考えるのは、二人を夫婦にすることだった。
「というわけで、義姉上、いいえ、クラウディアと婚約し、卒業後に結婚することになりました。つきましてはヨーゼフ殿下の側近は辞退させていただきたく、ご挨拶に参りました。」
こう言ってクラウスがヨーゼフに挨拶に来たのは婚約破棄のわずか三週間後であった。
「どうして!?おかしいわ!!ヨーゼフ様、どうにかして!!」
「マリア、あれはどうにもできないよ。せめてグループ課題だった時にチームの令嬢たちとしっかり協力していれば落第は免れたはずなんだ。
あの時、授業で準備はすべて終わっていると言っていたよね?どうして嘘をついたんだい?」
「嘘じゃないの…。嘘じゃないのよ、ヨーゼフ様。私…、本当に知らなくて…。」
マリアは涙をためて俯く。その姿は運命の姫が悲しんでいるように、ヨーゼフには見えてしまう。
「マリア、やはり二人で平民になろう。」
「そ、そんな!」
マリアは涙を引っ込めておろおろとしている。しかし、貴族学園を卒業できないマリアを妻に迎えるにはヨーゼフが身分を落とすしかない。
「ヨーゼフ様を平民にはできません…。私は…、愛人でいいです。」
「しかし、マリア、君は愛人は嫌だとあれだけ…。」
「ヨーゼフ様と離れる方が嫌です!愛人として、ずっとそばに置いてください!」
ヨーゼフは感動してマリアを抱きしめたが、後ろで話を聞いていたダミアンが呆れたため息をついた。
「今、ヨーゼフ様には婚約者がいない状態です。最初から愛人がいては新しい婚約者などできませんよ。」
「じゃあ婚約者はいなくていいわ!」
「そうはいきません。外交の仕事を今後任されるヨーゼフ様にパートナーは必要です。」
「私が行くわ!」
「あなたでは不適格だと先ほど示されたばかりですよね。」
険悪になる二人をヨーゼフが遮る。
「大丈夫だ、ダミアン。今から婚約者を探してもすぐにはできない。最初の内は一人でもこなせる仕事だけをやるよ。どうせ、兄上に王子ができなければ平民になりたくともなれないんだ。
マリアの今後については一度男爵と話し合わなくてはね。」
マリアがいいことを思いついたと手をたたく。
「そうだわ!クラウディア様に婚約者に戻っていただくのはどうかしら?」
さすがのヨーゼフもぎょっとしてマリアを見た。この子は…何を言っているんだ?
「クラウディア様も相手がいなくてお困りでしょう?きっと喜ばれるわ!」
卒業パーティーから一週間程度経過していたが、その間、ヘルムフート公爵が婚約破棄の書類と高額な慰謝料の請求を持ってきただけでクラウディアもクラウスも登城してはいなかった。
「それは難しいでしょう。」
「ダミアン?」
「婚約破棄を婚約解消とする代わりに、ヘルムフート公爵家はクラウディア嬢とクラウスの婚約の許可を求めている様です。」
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あのようなことがあってはクラウディアとヨーゼフの再婚約は難しいと、国王夫妻はよくわかっていた。ヨーゼフがクラウディアを友人または便利な側近の一人程度に思っていたのはもちろん知っていたが、クラウディアがヨーゼフに恋情を寄せていないこともまた明らかだった。
クラウディアが修道院にでも行くとなれば話は別だったかもしれないが、彼女は唯一の直系の娘でもあった。実際、クラウスは遠縁からの養子で、ヨーゼフとクラウディアの間に生まれた子供を養子にとり、その後を継がせることになっていたのだ。
だから、クラウスに婚約者はいなかった。
ここでクラウディアがフリーになって、公爵が当然考えるのは、二人を夫婦にすることだった。
「というわけで、義姉上、いいえ、クラウディアと婚約し、卒業後に結婚することになりました。つきましてはヨーゼフ殿下の側近は辞退させていただきたく、ご挨拶に参りました。」
こう言ってクラウスがヨーゼフに挨拶に来たのは婚約破棄のわずか三週間後であった。
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