理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき

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第三章 無計画な告白

裏/ベネディクト・ダンフォード

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「あっはっははははは!なんだそれは!」

オールディー滞在の最後の夜、ベネディクトは兄妹水入らずで話したいと、嫁いだ妹をブルテン大使館に呼び出して夕食を共にしていた。

「いや、報告の通りの男だな、ヨーゼフ・バッツドルフは。」

げんなりした顔で好物の食後の紅茶を飲んでいる妹を見ながら、ベネディクトはにんまりする。向かいの妹、キャサリンは紅茶を一口飲んで嫌そうにわずかに眉を寄せた。

「私の好きな紅茶じゃありません。」

「なぜ俺がお前の好きな紅茶を出してやらなきゃならない。」


ダンフォード公爵家は数代前に王弟が立ち上げた一族だ。内政に外交に存在感のある一族であるが、その存在感をもたらしているのが、圧倒的な諜報能力の高さである。

ダンフォード家の五人兄弟のそれぞれが独自の諜報網を持ち、情報を集めている。長男のアンブローズは内政に関わる国内貴族の情報を、次男のベネディクトは外交に関わる諸外国の情報を、長女のキャサリンは社交に関わる流行や家庭内のプライベートな情報を、それぞれ独自に集めて定期的に情報交換をしていた。

キャサリンが他国に嫁いだ今、その役目は次女のドローレスに引き継がれているが、キャサリン独自の情報網はヒューゲン国内に展開されている。キャサリンがバッツドルフ邸を瞬く間に掌握し、ヒューゲン社交界にあっという間に馴染むのもあたりまえだろう。


「お前はさすがに今回のデジレ元王女の暴言は怒っていたな。」

「私が怒るような情報を彼女に吹き込んだのはお兄様でしょう?」

「お見通しか?」

「コンスタンス女王が妹のデジレ元王女とそれを過剰に可愛がる前国王を疎ましく思っていたことは何年も前からです。実際、コンスタンス女王はダンスフロアから戻らないという形で静観していました。
前々から示し合わせていたのか、お兄様が勝手にやったのかは知りませんけれど。」

コンスタンス王女は近隣諸国の王族の中でも群を抜いて腹黒い。それはもう真っ黒だ。仲のいい友人だろうと、お世話になった恩師だろうと、かわいがっている部下だろうと、関係なく囮に使うし、罠に嵌めるし、権力を奪う。疎ましい妹なんて、気にするはずがない。

妹を怒らせるという形でヒューゲンまで巻き込んで大事にしたのはベネディクトの独断だ。これでオールディーはブルテンと帝国の戦への援助を約束してくれるだろう。


「周囲には亡くなった元婚約者を侮辱されての怒りに見えただろうな。」

「それで構いませんわ。」

別にキャサリンは過去の婚約者たちに惚れていたわけではない。王太子のことは全くタイプではなかったようだし、戦死した将軍は父と同年代の男だった。ただ、キャサリンは将軍の娘を気に入っていたので、将軍に嫁ぐことは実は楽しみにしていたようだ。

家族にしかわからない些細な変化ではあったが。


「にしても、お前の夫は人が良すぎるな。それに純粋すぎるだろう。」

王族として育ってきたが故の無神経さはキャサリンは嫌いなところだろう。婚前の下調べでもほぼ愛想を尽かしている愛人を責任感だけで囲い続けていることはわかっていた。若気の至りを上手く清算できないのは優しすぎるからだろう。

「それでこのまま白い結婚を続けるとして、お前はどうするんだ?」

「どう、と言いましても、戦が続く間はどうにもできないでしょう?それにヒューゲンを裏からぐちゃぐちゃにすることも楽しそうで。」

キャサリンは悪い顔でにっこりと笑う。

「ヒューゲンに根付く男尊女卑は根強いもの。切れ者と噂の国王陛下であっても、女に何ができるのかと私のことはノーマークです。こちらにいる間にダンフォード家の、ブルテンの利になるようにいじってみるわ。」

「ああ、怖いね。」

キャサリンの素顔と本性を知るものは恐れるだろう。ギャップがすごすぎる。化粧で本性に顔の方を寄せているが、幼い頃はすっぴんの状態でこのようなことを言うものだから、よく末の弟が怖がっていた。


「もしかしたら、案外早く戦は終わるかもしれないよ。」

そうして、ベネディクトはキャサリンが持っていないだろう特ダネを与えた。


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