理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき

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第四章 無計画なプロポーズ

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翌朝、ほとんど眠れなかったヨーゼフはいつもより少し早い時間に朝食にやってきた。

あの後、どうにかこうにかマリアと関係を持とうとしたが、疲れもあったのか何もできなかった。マリアはさらにへそを曲げて泣きながらヨーゼフを部屋から追い出した。
情けない姿で本邸へもどってくることになったわけである。こんなこと、キャサリンには知られたくない。


ヨーゼフよりもやや遅れてキャサリンはいつもの様子で食堂へやってきた。

「あら、旦那様。今日はお早いですね。」

「ああ。君は、体調は大丈夫なのか?」

「おかげさまですっかり元気になりました。お花もありがとうございます。」

いつもと変わらない美しい所作で朝食を口に運ぶキャサリンに、なぜかヨーゼフは心身が癒されるのを感じた。


「旦那様こそ、大層お疲れの様ですね。」

「あ、いや、昨晩寝られなくてだな。」

「そうですか。なのは喜ばしいですが、お仕事に支障がないようになさってください。」

「いや!ち、違うんだ!」

キャサリンは優雅に退席していく。反応せずに情けなく閨から追い出されたと思われたくはないが、一晩中マリアと共にいたとも思われたくはない。複雑な男心である。



ーーーー



その日はガブリエルからブルテン海軍に関する情報共有を受ける日であった。一通りの情報共有を受けたあと、思わず聞いてしまう。

「戦死された将軍について、ですか?」

「ああ。どんな人物だったんだい?」

「それは勇猛果敢な大将軍でありましたが…、その勇猛さ故に戦死された様です。」

「どんな見た目だった?」

「見た目…?真っ赤な髪の大男でしたよ。」

「私の髪とどちらが赤い?」

「…将軍の方が赤が強かったとおもいますが。どうされました?」

年下なのに理知的なガブリエルに怪訝な顔をされるとすべて話してしまいそうになる。

「その、亡くなられた将軍は妻の前の婚約者だからな。どのような人か気になってな。」

「はあ、随分と仲がよいのですね。安心しました。」


別に仲は良くはない。話すのは朝食の時だけだし、夫婦として過ごすのは社交の時だけ。もちろん子作りもしていないし、ただでさえ自分のあれは…。

ヨーゼフの肩はずんと重くなった。



ーーーー



その日からしばらく、マリアは大人しかった。精神的な打撃を受けていたヨーゼフはそっとしておいてもらえることがありがたかった。

「本当にそうでしょうか?」

「どうした、ペーター?」

「あちら様のことです。別にヨーゼフ様をそっとしておくために、大人しくしているのではないと思います。」

「ではなんだと言うのだ?」

「あちら様も傷ついておられるのです。愛し愛されているはずのヨーゼフ様に閨ごとを拒絶され、若く美しい妻を迎えられ、あげくようやくと思えば…あんな…。」

「黙れ。」

「申し訳ございません。ですが、ヨーゼフ様は今後のあちら様も面倒を見ていくつもりなのでしょう?だとしたら今の状態はあまりにも残酷です。愛人でなくなるのならば、屋敷から出し、しかるべきところに預けるべきでは。」

マリアを愛人でなくす?そんなことができるとは考えもしなかった。

「しかるべきところとはどういうところだ?」

「この屋敷でのことをべらべらと話されても困りますから、十分な金を渡して田舎に住まわせるのが妥当でしょうか。それか修道院などもあります。」

「な!それではマリアが可哀そうだろう!」

「どうして可哀そうなのです?」

「どうしてって…。」

マリアはおしゃれ好きだし、甘いものも好きだ。そんな娯楽のない地方の田舎にやるのは可哀そうだ。

「普通、平民は自分たちで金を稼ぎ、その稼ぎの中でつつましく生活するものです。」

「しかし、マリアは私と出会わなければ貴族だったはずなんだ!」

「仮に貴族夫人であったとしても、社交をし、家の管理をし、夫と家のために働いているものです。それを全くしていないあちら様が暮らすに困らないお金を与えられて、住む場所も与えられるのです。可哀そうでしょうか?」


ヨーゼフには反論することができなかった。


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