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第四章 無計画なプロポーズ
裏/エアハルト・ヒューゲン
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「おいおい、あいつはそんなことを言っていたのか?」
ヒューゲンの国王であり、ヨーゼフの兄であるエアハルトはバッツドルフ家の家令であるペーターの定期報告にため息をついた。
「あいつが子作りできないというのは本当なのか?」
「わかりませんが、お忙しくてそれどころではないというのが正確な答えでしょう。奥様はその後、私に王族の血を引く子供たちのリストアップを命じられ、部屋に戻られました。」
「夫人としてもヨーゼフと子をなすつもりはなさそうだな…。子のいない貴族夫人の立場など低いだろうに。やはり、夫人は離縁するつもりでいるのか?」
「おそらく、どう転んでもいいように三年間は身ぎれいでいるおつもりの様です。実際、三年間子供がいなかったとしても、奥様の責任にはならないかと。」
エアハルトは眉を寄せる。子が三年なせなければ、離縁する夫婦もいる。もちろん妻の有責だ。離縁されずとも、夫が第二夫人や愛人を迎え、子供が生まれても文句は言えない。
それだけ、ヒューゲンという国での当たり前だ。妻は夫のために尽くし、家のために子を産み、家の繁栄のために子を育てる。
「ヨーゼフ様に長く愛人がいたことも、そのためにクラウディア夫人と婚約破棄したことも、奥様との結婚を機に掘り返され、今や年下の世代までも知っていることです。
逆に、愛人と別れたことは一時期の話題にはなりましたが、あまり人々の口にのぼりません。噂にならないのです。」
長年仕えてくれているペーターの心配そうな顔にエアハルトはさらに困惑する。
「その顔はなんだ?」
「私はこれらの情報操作は奥様によるものではないかと考えています。」
「夫人が?まさか。なぜブルテン人のしかも夫人にそんなことができる?」
「国王陛下、奥様を侮ってはいけません。」
「侮る?10以上年下の娘をか?」
ペーターの言葉に、何をふざけたことをと笑ってしまう。
「侮ってなどいないさ。むしろ利用している。おかげでヨーゼフは愛人の娘と縁を切れたじゃないか!」
「それは先見の明があったかと。」
エアハルトはキャサリンを迎えるに至った経緯を思い出してほくそ笑む。
ブルテンからヒューゲンに嫁を迎えるにあたり、考えられる縁談は二つあった。まずはヨーゼフに分家のダンフォード公爵家の長女または次女を嫁に迎えること。もう一つはヒューゲン王太子であるエアハルトの息子の婚約者にダンフォート公爵家の次女を迎えること。
すぐに成立する婚姻で年齢差も現実的ということで、表向きに選ばれたのはヨーゼフとキャサリンだ。エアハルトとしても、ヨーゼフにダンフォード家の長女を迎えるというのは愛人と縁を切らせる絶好の機会だと考えていた。
ヨーゼフが”運命の姫”と言ってはばからない、『眠りの森の姫』の挿絵の女性、あれは先代ダンフォード公爵の一人娘、つまり、キャサリンの母をモデルにしたものである。
彼女の5人の子供たちの中でも長男と長女は母親似だと聞いていたのだ。
初顔合わせではきつい顔立ちの美人で驚いたが、すぐに妻である王妃が化粧だと見破った。
素顔を見ればすぐに落ちるのではないか。
そう思って待っていた。まさか素顔を見るまでに時間があれほどかかるとは思わなかったが。
「さっさと子作りして子供を数人設けてくれればそれでいいのだが。本来なら夫人の気持ちなど関係なく初夜に出会ってすぐに契っていたはずなんだ。何を甘ちょろいことを…。」
エアハルトは「押し倒してしまえばいいものを…」と、はあとため息をついた。ペーターは最後まで複雑そうな顔をしていた。
ヒューゲンの国王であり、ヨーゼフの兄であるエアハルトはバッツドルフ家の家令であるペーターの定期報告にため息をついた。
「あいつが子作りできないというのは本当なのか?」
「わかりませんが、お忙しくてそれどころではないというのが正確な答えでしょう。奥様はその後、私に王族の血を引く子供たちのリストアップを命じられ、部屋に戻られました。」
「夫人としてもヨーゼフと子をなすつもりはなさそうだな…。子のいない貴族夫人の立場など低いだろうに。やはり、夫人は離縁するつもりでいるのか?」
「おそらく、どう転んでもいいように三年間は身ぎれいでいるおつもりの様です。実際、三年間子供がいなかったとしても、奥様の責任にはならないかと。」
エアハルトは眉を寄せる。子が三年なせなければ、離縁する夫婦もいる。もちろん妻の有責だ。離縁されずとも、夫が第二夫人や愛人を迎え、子供が生まれても文句は言えない。
それだけ、ヒューゲンという国での当たり前だ。妻は夫のために尽くし、家のために子を産み、家の繁栄のために子を育てる。
「ヨーゼフ様に長く愛人がいたことも、そのためにクラウディア夫人と婚約破棄したことも、奥様との結婚を機に掘り返され、今や年下の世代までも知っていることです。
逆に、愛人と別れたことは一時期の話題にはなりましたが、あまり人々の口にのぼりません。噂にならないのです。」
長年仕えてくれているペーターの心配そうな顔にエアハルトはさらに困惑する。
「その顔はなんだ?」
「私はこれらの情報操作は奥様によるものではないかと考えています。」
「夫人が?まさか。なぜブルテン人のしかも夫人にそんなことができる?」
「国王陛下、奥様を侮ってはいけません。」
「侮る?10以上年下の娘をか?」
ペーターの言葉に、何をふざけたことをと笑ってしまう。
「侮ってなどいないさ。むしろ利用している。おかげでヨーゼフは愛人の娘と縁を切れたじゃないか!」
「それは先見の明があったかと。」
エアハルトはキャサリンを迎えるに至った経緯を思い出してほくそ笑む。
ブルテンからヒューゲンに嫁を迎えるにあたり、考えられる縁談は二つあった。まずはヨーゼフに分家のダンフォード公爵家の長女または次女を嫁に迎えること。もう一つはヒューゲン王太子であるエアハルトの息子の婚約者にダンフォート公爵家の次女を迎えること。
すぐに成立する婚姻で年齢差も現実的ということで、表向きに選ばれたのはヨーゼフとキャサリンだ。エアハルトとしても、ヨーゼフにダンフォード家の長女を迎えるというのは愛人と縁を切らせる絶好の機会だと考えていた。
ヨーゼフが”運命の姫”と言ってはばからない、『眠りの森の姫』の挿絵の女性、あれは先代ダンフォード公爵の一人娘、つまり、キャサリンの母をモデルにしたものである。
彼女の5人の子供たちの中でも長男と長女は母親似だと聞いていたのだ。
初顔合わせではきつい顔立ちの美人で驚いたが、すぐに妻である王妃が化粧だと見破った。
素顔を見ればすぐに落ちるのではないか。
そう思って待っていた。まさか素顔を見るまでに時間があれほどかかるとは思わなかったが。
「さっさと子作りして子供を数人設けてくれればそれでいいのだが。本来なら夫人の気持ちなど関係なく初夜に出会ってすぐに契っていたはずなんだ。何を甘ちょろいことを…。」
エアハルトは「押し倒してしまえばいいものを…」と、はあとため息をついた。ペーターは最後まで複雑そうな顔をしていた。
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