理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき

文字の大きさ
43 / 56
第五章 無計画な真実の愛

2

しおりを挟む
「旦那様、今日はよろしくお願いします。」

「あ、ああ。」

キャサリンは首周りの広く開いた水色の夏らしいワンピースを着ていた。布で作られた花が可愛らしいワンポイントとしてあしらわれているが、少し大人っぽいデザインのものだ。明るい金髪は今日も強めに巻かれて涼し気なハーフアップにまとめられている。

後ろでは侍女がワンピースに合わせたデザインの日傘を持っていた。


「その、素敵なワンピースだね。」

「ありがとうございます。ブルテンの有名なデザイナーのものなんです。」

「…ヒューゲンではまだドレス以外は買っていないのか?」

「そうですね。あまり好みにあわなくて。」

エスコートに腕を差し出すと、キャサリンが手を乗せてくれる。こうしてヨーゼフはキャサリンとの、そして人生初めてのデートに出発した。



ーーーー



「何か気に入るものはあるかい?」

「ドレスに合わせるならルビーかガーネットでしょうか?」

「大きなパーティー用のドレスは朱色だっただろう?ガーネットがいいんじゃないかい?」

「ドレスを把握されているのですか?」

「ああ。要望を出すときに見せてもらったんだ。」

キャサリンは微妙な顔をしている。ヨーゼフは店員に指示をだしてガーネットの大きな飾りのついたネックレスをいくつか出させた。

「これなんてどうだろう?」

「そちらはオールディーでのパーティーに着けて行ったものと似ているのでダメですわ。」

「そうか…。オールディーからの大使もいるから同じに見えてはよくないか。」

国宝級の宝石や家宝であればいつもパーティーで身に着けていてもおかしくはないが、あいにくバッツドルフ家は立ち上がったばかりで、そのような宝飾品はない。
同じものをあまりにも使いまわせば、悪い印象を持たれてしまう。


「こちらを試してみてもいいですか?」

「もちろんです。」

このために襟ぐりの深い服を着てきたらしい。選ばれたネックレスはキャサリンの肌にもよく映えていた。

「よく似合ってるよ!」

「本当に、お似合いですわ!」

「では、こちらでお願いしますわ。合わせて耳飾りもありますか?」

キャサリンの宝飾品はつつがなく決まった。キャサリンの好みのものを選んだというよりは、消去法で選んだという感じだったが。

「キャサリンはどの宝石が好きなんだい?」

「私ですか?」

「ああ。君が好きなものをプレゼントしたいんだ。」

「特にこれと言って好みの宝石はありませんが…。」

キャサリンは困った顔をしてヨーゼフを見ている。

「旦那様のタイピンなども必要なのでは?同じガーネットのものか、ルビーのものを見せていただけます?」

「かしこまりました。」

結局、必要なものだけを購入して店を出ることになった。



ーーーー



その後のレストランでも、立ち寄ったブティックでもキャサリンの好きなものはよくわからないままだった。

「ヒューゲンのデザインは気に食わないかい?」

「気に食わないわけではないのですが…、ブルテンに行く予定があるのでそちらで購入しますわ。」

「どういったものが好みなのか教えてくれないか?」

「そうですわね…。」

最後に訪れたカフェでキャサリンは優雅に紅茶を口に運んだ。ちょっと眉を顰める。

「どうしたんだい?まずかったかい?」

「そういうわけではありません。店でそんなこと言わないでください。」

「す、すまない。」

ヨーゼフもキャサリンと同じ紅茶を飲んだ。いつもの紅茶とは違う銘柄のようだ。もしや好みの紅茶があるのか。

「その…、甘いものは好きかい?ここのケーキはよく取り寄せているんだ。もし気に入ったものがあるなら一緒に取り寄せるから、お茶をしよう。」

「ありがとうございます。甘いものは好きです。」

ヨーゼフの顔が輝く。『甘いものは好き』ようやく情報を得られた。

「ケーキは好きかい?チョコレートは?ブルテンのお菓子だとトライフルやヴィクトリアサンドイッチか?」

「どれも好きですわ。」

キャサリンは戸惑った顔をしながらも、優雅に紅茶を飲む。

「どれが特に好きなんだい?」

「どれも好きですわ。」

「好んで食べるものはないのか?」

「取り立てて好むものはありませんわ。」


キャサリンはため息をついて、カップを受け皿に置く。

「旦那様、明確に好きなものを持たない人間もいるのです。似合うものを着る。おいしいものを食べる。それでいいではありませんか。うざいですわ。」


う、うざい…?ヨーゼフはショックを受けて項垂れた。


しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆小説家になろうにも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

処理中です...