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第一章 夜市に浮かぶ火の玉
7 エリート令息、真実を知る
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すべての話を聞いた満は呆れたようなため息をはいた。
「つまり、あなたは貴族出身の官吏たちの横暴に腹が立っていたと。どうやらなにやら税収から私腹を肥やしているらしい彼らの痛手となるように怪異騒動を起こしてみたと。そうしたら本物の怪異が来てしまったと。」
一般採用の役人であり、今回の火の玉事件の真の黒幕であった田中は仁王立ちになる満の前で項垂れている。
「怪異が去ったという噂を聞いたので確認し、再度怪異を起こしに来たと。全く、二乃子殿の仕事を増やしてくれましたね。」
「すみませんでした…。」
役人の田中は満よりも五つほど上のように見えるが、満の雰囲気に気おされてしまっていた。だが、これだけは、といった様子でいきなり顔をあげた。
「でも!俺はこんなことをする前にはちゃんと国に訴えたんだ!脱税の疑惑を監察院に密告したんだ!それなのにあいつは国の官吏になるっていうじゃないか!」
「ああ。投書をしたのはあなたでしたか。それはいつのことですか?」
「半年も前だ!でも何も起きなかった!」
「その投書には詳細な脱税の手法を記したので?」
「そんなのは俺もわからないさ!書けるわけがない!」
「だから半年音沙汰がないんですよ。脱税の調査は慎重にやらなければ。確実な証拠とともに犯人をあげて、可能ならお金を取り返したいですからね。」
「な…!?」
何者だお前!?という顔で役人の田中は満を見てくる。満は鎮火された火の玉もどきで遊んでいる二乃子に目をやると、二乃子は心得たとばかりに田中に歩み寄るとその喉元をぽんとたたいた。
「これから話すことは他言無用です。まあ、他言できないと思いますが。」
満は懐から自身の身分を証明する漆塗りの札を取り出す。
「自分は監察院所属の官吏、九条満と申します。こちらの役所での脱税の疑いが濃厚になったために取り締まりに派遣されたものです。」
「え?巫女様の護衛なんじゃ…?」
「それは仮の姿です。」
満は札をさっと懐にしまった。
「それで、あなたが脱税を疑った根拠を教えていただけますか?」
「そ、それは…話しているのを聞いたんだ。」
「誰が?」
「久遠寺万里が俺の同僚に『いくらまでならお金をとって問題ないか』ってきいてるのを聞いたんだ!」
「久遠寺万里殿ですか…。それで、その同僚というのはどなたですか?」
「ああ…、確か、松井だったかな。俺の同期の一般採用の役人で財務課に所属しているんだ。金勘定にめっぽう強いって重宝されてるんだよ。」
「なるほど…。その話だけ聞くと、その松井殿の入れ知恵により万里殿自身が脱税を行っているように聞こえますね。万里殿の交友関係に平民の役人との付き合いはなかったですが。」
「あいつは俺たち平民を見下してるからな。付き合いなんてあるわけがない。松井もどうせ貴族様には逆らえないから言うこと聞いてるだけだろ。」
満は腕を組んで考え込む。”火の玉事件”が解決した今、早く二乃子は次の仕事に行きたいだろう。しかし、脱税の方法がわからなければ犯人を捕まえることは難しい。一般役人の松井に接触して手法を聞き出すという方法もあるが、彼が本格的に犯罪にかかわっていた場合に証拠を消されるという可能性もある。
ここは、やはり…。
「現行犯で万里殿を捕まえてしまうのが一番早いですかね…。」
「…そんなことが可能なんですか?」
不思議そうな可愛らしい顔で二乃子が満を見つめる。
「脱税の手口、つまりどこのお金をちょろまかしているのかというのはわかりませんが、お金がある場所は多くありません。すべてに罠をしかけましょう。」
一般役人の田中が「そんなのどうするんだよ」と満が誰かも忘れてけんか腰にきいてくる。満は全く気に留めず二乃子に頷いて見せた。
こちらをじっと見ていた二乃子は心得たとばかりに大きく頷いてくれた。
ー---
それは市役所から人が減る夕方の頃、上級の官吏にしか持てないはずの金庫の鍵を持って、育ちの良さそうな若手の官吏が護衛に軽く挨拶をして、金庫へと入っていった。
そして、彼は金庫の外へ一歩出た後、その場からぴたりと動けなくなってしまった。
「おい!お前たち!俺を助けろ!」
ぴくりとも動かなくなったが口だけはよく回るその官吏は困惑する護衛たちをさも使えない奴らだといわんばかりにののしる。
「助けろ、と言われましても…。」
「わからないのか!?動けないんだ!!」
「は、はあ…。」
若手の官吏は懐に手をあててその姿勢から全く動かない。護衛が官吏に触れて動かそうとしてみるが手をバチンとはじかれて官吏に触れられない。
若手の官吏が「役立たず!!」と騒ぎ立てるところに遅くまで働いている一般官吏たちが集まってくる。
「あれは…久遠寺万里殿か?」
「手が触れられないらしい…。」
「おい、誰か市長を呼んで来い。」
そうして二時間程度騒いでいた若手の官吏、こと久遠寺万里のもとにほろ酔いの久遠寺市長がやってきた。
「万里くん…どうしたのだね?もう終業時間を過ぎている…。君は残業なんてしないだろう…?」
「市長!この場から一歩も動けないんです!」
「…君はもしかして金庫から出てきたのかい?」
「………はい。」
市長は微妙な顔をして万里を見た。
「それは私にはどうにもできない…。」
「は?」
「まさか…君がそんなことをするとは…監察院に目をつけられてはかばえないよ…。」
「ど、どういうことで…?」
「先月、巫女姫様がいらっしゃっただろう?そこでうちの金庫に新しい保護システムを組み込んでくれたんだ…。正規の手順を踏まずに税金を持ち出したものがいた場合には監察院に通報が行くことになっている。
まさか、その場で犯人が動けなくなるような仕組みになっていたとは…。」
どうにもできないとその場は解散になり、翌日に監察院の北東州支部に万里はなすすべもなく盗んだお金とともに回収されていった。
ーーーー
「あ、結界は発動したんですか?」
そのころ満と二乃子は北東州の港町に来ていた。これから船に乗り、海路で北を目指すのだ。
「どうやら満殿が推測した通りの様ですね。」
満の考えはこうだ。
さすがに怪異問題が解決したといってもすぐにお金を金庫から盗むことはないだろう。自分たちにも仕事があるため、何日も翠都にとどまるわけには行かない。
そもそも、満は正体をあまり大っぴらにできないため、証拠をつかめば検挙は監察院の支部に任せる方が都合がいい。
そこで、二乃子の結界の術を使って金庫に罠を仕掛け、正規の手順を踏まずにお金を持ち出す人物を捕獲することにしたのだ。
金庫の前には護衛が立つため、咎められずに中に入るには上級官吏または貴族の地位がいるだろう。高級料理店に集まっていたメンバーを考えると、主犯と思われる久遠寺万里が直接お金を取りに来る可能性が高い。
そうして、市長に帝からの依頼だと通報システムの話をし、術を展開した。市長が万里に話してしまう可能性があったので、いつかに一般官吏にかけたのと同じ術を期間限定でかけた。
「証言をしてくれる一般官吏の情報を監察院には渡しておきましたし、現行犯で捕まえたのですから検挙できるでしょう。」
満は二乃子の腕の中でひっくり返って甘えている妖狐をじろりとにらんだ。この妖狐、結局あれから二乃子から離れず、ここまでついてきてしまった。
「で、使役できたんですか?」
「はい。」
仕方がないので二乃子が使役獣として連れていくこととした。
「名前はどうしますか?」
使役されて満足気の妖狐を忌々しく見ながら、満は二乃子にきいた。満の嫌そうな感情を感じ取ったのか、妖狐は得意げな顔でむふんと言わんばかりの顔をこちらに向けてきた。しかし、その得意げな顔も次の言葉で崩れ去る。
「七番目ですからね。」
「じゃあ、セットですかね。」
「七はセットなんですか?じゃあそれで。」
そうして二乃子は背負っていた大陸風のおしゃれなカバンを開けた。妖狐ことセットは戸惑った顔で二乃子を見上げている。
「セット、今日からあなたのおうちはこのカバンの中です。」
ずっと二乃子にべたづきで甘えていたセットは絶望したような顔でくうんと鳴いた。
「つまり、あなたは貴族出身の官吏たちの横暴に腹が立っていたと。どうやらなにやら税収から私腹を肥やしているらしい彼らの痛手となるように怪異騒動を起こしてみたと。そうしたら本物の怪異が来てしまったと。」
一般採用の役人であり、今回の火の玉事件の真の黒幕であった田中は仁王立ちになる満の前で項垂れている。
「怪異が去ったという噂を聞いたので確認し、再度怪異を起こしに来たと。全く、二乃子殿の仕事を増やしてくれましたね。」
「すみませんでした…。」
役人の田中は満よりも五つほど上のように見えるが、満の雰囲気に気おされてしまっていた。だが、これだけは、といった様子でいきなり顔をあげた。
「でも!俺はこんなことをする前にはちゃんと国に訴えたんだ!脱税の疑惑を監察院に密告したんだ!それなのにあいつは国の官吏になるっていうじゃないか!」
「ああ。投書をしたのはあなたでしたか。それはいつのことですか?」
「半年も前だ!でも何も起きなかった!」
「その投書には詳細な脱税の手法を記したので?」
「そんなのは俺もわからないさ!書けるわけがない!」
「だから半年音沙汰がないんですよ。脱税の調査は慎重にやらなければ。確実な証拠とともに犯人をあげて、可能ならお金を取り返したいですからね。」
「な…!?」
何者だお前!?という顔で役人の田中は満を見てくる。満は鎮火された火の玉もどきで遊んでいる二乃子に目をやると、二乃子は心得たとばかりに田中に歩み寄るとその喉元をぽんとたたいた。
「これから話すことは他言無用です。まあ、他言できないと思いますが。」
満は懐から自身の身分を証明する漆塗りの札を取り出す。
「自分は監察院所属の官吏、九条満と申します。こちらの役所での脱税の疑いが濃厚になったために取り締まりに派遣されたものです。」
「え?巫女様の護衛なんじゃ…?」
「それは仮の姿です。」
満は札をさっと懐にしまった。
「それで、あなたが脱税を疑った根拠を教えていただけますか?」
「そ、それは…話しているのを聞いたんだ。」
「誰が?」
「久遠寺万里が俺の同僚に『いくらまでならお金をとって問題ないか』ってきいてるのを聞いたんだ!」
「久遠寺万里殿ですか…。それで、その同僚というのはどなたですか?」
「ああ…、確か、松井だったかな。俺の同期の一般採用の役人で財務課に所属しているんだ。金勘定にめっぽう強いって重宝されてるんだよ。」
「なるほど…。その話だけ聞くと、その松井殿の入れ知恵により万里殿自身が脱税を行っているように聞こえますね。万里殿の交友関係に平民の役人との付き合いはなかったですが。」
「あいつは俺たち平民を見下してるからな。付き合いなんてあるわけがない。松井もどうせ貴族様には逆らえないから言うこと聞いてるだけだろ。」
満は腕を組んで考え込む。”火の玉事件”が解決した今、早く二乃子は次の仕事に行きたいだろう。しかし、脱税の方法がわからなければ犯人を捕まえることは難しい。一般役人の松井に接触して手法を聞き出すという方法もあるが、彼が本格的に犯罪にかかわっていた場合に証拠を消されるという可能性もある。
ここは、やはり…。
「現行犯で万里殿を捕まえてしまうのが一番早いですかね…。」
「…そんなことが可能なんですか?」
不思議そうな可愛らしい顔で二乃子が満を見つめる。
「脱税の手口、つまりどこのお金をちょろまかしているのかというのはわかりませんが、お金がある場所は多くありません。すべてに罠をしかけましょう。」
一般役人の田中が「そんなのどうするんだよ」と満が誰かも忘れてけんか腰にきいてくる。満は全く気に留めず二乃子に頷いて見せた。
こちらをじっと見ていた二乃子は心得たとばかりに大きく頷いてくれた。
ー---
それは市役所から人が減る夕方の頃、上級の官吏にしか持てないはずの金庫の鍵を持って、育ちの良さそうな若手の官吏が護衛に軽く挨拶をして、金庫へと入っていった。
そして、彼は金庫の外へ一歩出た後、その場からぴたりと動けなくなってしまった。
「おい!お前たち!俺を助けろ!」
ぴくりとも動かなくなったが口だけはよく回るその官吏は困惑する護衛たちをさも使えない奴らだといわんばかりにののしる。
「助けろ、と言われましても…。」
「わからないのか!?動けないんだ!!」
「は、はあ…。」
若手の官吏は懐に手をあててその姿勢から全く動かない。護衛が官吏に触れて動かそうとしてみるが手をバチンとはじかれて官吏に触れられない。
若手の官吏が「役立たず!!」と騒ぎ立てるところに遅くまで働いている一般官吏たちが集まってくる。
「あれは…久遠寺万里殿か?」
「手が触れられないらしい…。」
「おい、誰か市長を呼んで来い。」
そうして二時間程度騒いでいた若手の官吏、こと久遠寺万里のもとにほろ酔いの久遠寺市長がやってきた。
「万里くん…どうしたのだね?もう終業時間を過ぎている…。君は残業なんてしないだろう…?」
「市長!この場から一歩も動けないんです!」
「…君はもしかして金庫から出てきたのかい?」
「………はい。」
市長は微妙な顔をして万里を見た。
「それは私にはどうにもできない…。」
「は?」
「まさか…君がそんなことをするとは…監察院に目をつけられてはかばえないよ…。」
「ど、どういうことで…?」
「先月、巫女姫様がいらっしゃっただろう?そこでうちの金庫に新しい保護システムを組み込んでくれたんだ…。正規の手順を踏まずに税金を持ち出したものがいた場合には監察院に通報が行くことになっている。
まさか、その場で犯人が動けなくなるような仕組みになっていたとは…。」
どうにもできないとその場は解散になり、翌日に監察院の北東州支部に万里はなすすべもなく盗んだお金とともに回収されていった。
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「あ、結界は発動したんですか?」
そのころ満と二乃子は北東州の港町に来ていた。これから船に乗り、海路で北を目指すのだ。
「どうやら満殿が推測した通りの様ですね。」
満の考えはこうだ。
さすがに怪異問題が解決したといってもすぐにお金を金庫から盗むことはないだろう。自分たちにも仕事があるため、何日も翠都にとどまるわけには行かない。
そもそも、満は正体をあまり大っぴらにできないため、証拠をつかめば検挙は監察院の支部に任せる方が都合がいい。
そこで、二乃子の結界の術を使って金庫に罠を仕掛け、正規の手順を踏まずにお金を持ち出す人物を捕獲することにしたのだ。
金庫の前には護衛が立つため、咎められずに中に入るには上級官吏または貴族の地位がいるだろう。高級料理店に集まっていたメンバーを考えると、主犯と思われる久遠寺万里が直接お金を取りに来る可能性が高い。
そうして、市長に帝からの依頼だと通報システムの話をし、術を展開した。市長が万里に話してしまう可能性があったので、いつかに一般官吏にかけたのと同じ術を期間限定でかけた。
「証言をしてくれる一般官吏の情報を監察院には渡しておきましたし、現行犯で捕まえたのですから検挙できるでしょう。」
満は二乃子の腕の中でひっくり返って甘えている妖狐をじろりとにらんだ。この妖狐、結局あれから二乃子から離れず、ここまでついてきてしまった。
「で、使役できたんですか?」
「はい。」
仕方がないので二乃子が使役獣として連れていくこととした。
「名前はどうしますか?」
使役されて満足気の妖狐を忌々しく見ながら、満は二乃子にきいた。満の嫌そうな感情を感じ取ったのか、妖狐は得意げな顔でむふんと言わんばかりの顔をこちらに向けてきた。しかし、その得意げな顔も次の言葉で崩れ去る。
「七番目ですからね。」
「じゃあ、セットですかね。」
「七はセットなんですか?じゃあそれで。」
そうして二乃子は背負っていた大陸風のおしゃれなカバンを開けた。妖狐ことセットは戸惑った顔で二乃子を見上げている。
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