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第二章 大国での失恋
大国皇太子は諦めない
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その頃オーウェンは調印の終わった宿屋で突っ伏していた。
力なく笑うその瞳は死んでいた。
「いつまで死んでいる」
暇なので外に繰り出そうと呼びに来たアレクはその様子に驚いた。
オーウェンの従者に聞くとずうーっとこの旅の間中こんな調子なのだという。
「なんだ、クリス嬢に振られてそんなにショックか?」
喜んでアレクは言う。
それでこそ、いろいろ尽力した甲斐があったというものだ。
「ふんっ貴様がいろいろ邪魔してくれたからな。本来なら今頃、クリス嬢の心を掴めたかもしれないのに」
ぶすっとオーウェンが言う。
「まあ、オーウェン、女は他にもいる。パーティーの時にも令嬢たちに大変な人気があったではないか」
「ふんっお前はいいよな。好きなジャンヌと一緒にいられて」
アレクはいい加減に頭にきた。
うじうじ女々しい。
本来ならばここまで努力して邪魔してきたのだ。
更に一押しして完璧なまでに叩き潰すのが基本のはずだった。
しかし、あまりな女々しい態度にピキッと切れてしまった。
一人で腕枕していたその腕を思いっきり突く。
オーウェンの頭がバキッと落ちた。
「何しやがる」
プッツンきれてオーウェンが飛び起きた。
「うじうじうじうじ、女々しい!一回振られたくらいでうじうじするな!俺なんて何百回とジャンヌに申し込んでそのたびに振られたんだぞ。最近でこそやっと少しは返事してくれるようになったけど、最初は無視、ばい菌扱いだったんだぞ。
それを1回振られたくらいで、諦めるくらいなら、やめちまえ」
アレクは言った瞬間、やってしまったと思った。
このままうじうじさせておけばよかったんだ。
「そうか、女たらしのおまえでも、ジャンヌはなかなか難しかったのか。」
「今でもまだ恋人認定はされておらんわ」
アレクはやけで叫んでいた。
「今日は付き合え」
二人は初めてとことん飲んだ。
アレクはジャンヌの愚痴に始まって皇帝の愚痴、兄弟の愚痴、足の引っ張り合い等の愚痴を。
オーウェンはクリスの愚痴を。父の愚痴を。
そのへべれけな様子に、両国の従者は唖然とし、トリポリ王は二人に召使のように、こき使われ、愚痴のはけ口にされた。
翌朝、珍しく二日酔いで頭の頭痛で起き出したアレクの前に既にオーウェンはいなかった。
とてもやる気を出して全力で帰って行ったらしい。
「あああ、やってしまった。」
アレクはここまでの苦労が水の泡になった事を知った。
でも、何故か心の中はすがすがしかった。
オーウェンは3日目の朝には王宮に帰ってきた。
夜通しほとんど駆け通し、100名いた従者のうち帰り着いたのは3名しかいなかった。
「父上!」
やっとついてきた部下たちは倒れ込んでいたが、そのまま食堂に乗り込む。
食堂ではみんな朝食を食べていた。
そこには皇太后もいた。
「この秋からもマーマレードの王立学園の留学を続けます」
絶対に国王にはダメだと言われていたのに、許可を求めるのではなく、既成事実として国王に話していた。
「この秋からは軍に入いるのでは無かったのか」
国王が怒っていったが、
「軍はいつでも入れます。今やらなけれりばならないことをやりに行きます」
一歩も引かずにオーウェンは言った。
「女にうつつを抜かす皇太子など、国民のだれが認める」
「やるからには何事も全力を尽くさない者に誰が従ってくれるというのですか」
オーウェンは真摯な目で父であるピーターを見た。
「よく言った。オーウェン。言った限り何年かかっても絶対にクリスを連れて帰って来るんだよ」
皇太后が言った。
「当然です」
オーウェンが返事する。
「母上」
ピーターが反論しようとするが、
「女にうつつを抜かすな、お前はよくそんなことが言えたね」
呆れて言う。
「そこの王妃の心を掴むまで、1年の留学期間を3年に引き伸ばしたのは誰だい?」
「母上そこは」
ピーターは慌てる。
「えっそうなんですか?」
オーウェンとガーネットが驚いて父母を見る。
「そうだよ。前の国王にはどれだけ怒られたか」
「その上、お前がクリスに渡した誓いの飾りをお前のお母さんの気を引くために渡したのはいいが、お母さんは犬の飾りにしたんだからね」
「お母様、若気の至りの事を」
キャロルが悲鳴に近い声で抗議する。
「ふんっ、それに比べてクリスはどうだい。それを犬ならぬ、反対派の筆頭の公爵に渡して永遠の誓いを引き出したんだから。
お前の父親は3年かけてやっと母親の心を掴んで帰ってきたはいいが、20年たったいまだに反対派がいるのに、あの子はどうだい。
滞在した10日も満たない間に反対派を悉く皆味方にしてしまったんだよ。
はっきり言って後はオーウェン、お前が好かれるかどうかだけだよ。
1年や2年いなくてもクリスさえ連れて帰ってくればそれで国の安定は決まる。
心していっておいで!」
口の悪い皇太后がクリスについて最大限の賛辞を述べていた。
「はい、ありがとうございます」
オーウェンは皇太后に感謝した。
「ピーターもキャロラインもそれでいいね!」
「判りました」
二人は頷くしかなかった。
「では、急ぎますので」
そのままオーウェンは休む間もなく飛び出した。
「あいつほとんど寝てないんじゃ」
それを残された4人は呆然として見送った。
「ま、若いっていい事さね」
皇太后が笑って言った。
*************************************************
皆さん。ここまで読んで頂いてありがとうございました。
取り敢えず完結です。
また、続編始めますのでお気に入りしておいて頂けるとありがたいです。
「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/167498546
はじめました。
この話の3年前、何故クリスに戦神が憑依したのか
アレクは何故クリスを恐れるのか等々判ります。
ぜひともお読み下さい。
力なく笑うその瞳は死んでいた。
「いつまで死んでいる」
暇なので外に繰り出そうと呼びに来たアレクはその様子に驚いた。
オーウェンの従者に聞くとずうーっとこの旅の間中こんな調子なのだという。
「なんだ、クリス嬢に振られてそんなにショックか?」
喜んでアレクは言う。
それでこそ、いろいろ尽力した甲斐があったというものだ。
「ふんっ貴様がいろいろ邪魔してくれたからな。本来なら今頃、クリス嬢の心を掴めたかもしれないのに」
ぶすっとオーウェンが言う。
「まあ、オーウェン、女は他にもいる。パーティーの時にも令嬢たちに大変な人気があったではないか」
「ふんっお前はいいよな。好きなジャンヌと一緒にいられて」
アレクはいい加減に頭にきた。
うじうじ女々しい。
本来ならばここまで努力して邪魔してきたのだ。
更に一押しして完璧なまでに叩き潰すのが基本のはずだった。
しかし、あまりな女々しい態度にピキッと切れてしまった。
一人で腕枕していたその腕を思いっきり突く。
オーウェンの頭がバキッと落ちた。
「何しやがる」
プッツンきれてオーウェンが飛び起きた。
「うじうじうじうじ、女々しい!一回振られたくらいでうじうじするな!俺なんて何百回とジャンヌに申し込んでそのたびに振られたんだぞ。最近でこそやっと少しは返事してくれるようになったけど、最初は無視、ばい菌扱いだったんだぞ。
それを1回振られたくらいで、諦めるくらいなら、やめちまえ」
アレクは言った瞬間、やってしまったと思った。
このままうじうじさせておけばよかったんだ。
「そうか、女たらしのおまえでも、ジャンヌはなかなか難しかったのか。」
「今でもまだ恋人認定はされておらんわ」
アレクはやけで叫んでいた。
「今日は付き合え」
二人は初めてとことん飲んだ。
アレクはジャンヌの愚痴に始まって皇帝の愚痴、兄弟の愚痴、足の引っ張り合い等の愚痴を。
オーウェンはクリスの愚痴を。父の愚痴を。
そのへべれけな様子に、両国の従者は唖然とし、トリポリ王は二人に召使のように、こき使われ、愚痴のはけ口にされた。
翌朝、珍しく二日酔いで頭の頭痛で起き出したアレクの前に既にオーウェンはいなかった。
とてもやる気を出して全力で帰って行ったらしい。
「あああ、やってしまった。」
アレクはここまでの苦労が水の泡になった事を知った。
でも、何故か心の中はすがすがしかった。
オーウェンは3日目の朝には王宮に帰ってきた。
夜通しほとんど駆け通し、100名いた従者のうち帰り着いたのは3名しかいなかった。
「父上!」
やっとついてきた部下たちは倒れ込んでいたが、そのまま食堂に乗り込む。
食堂ではみんな朝食を食べていた。
そこには皇太后もいた。
「この秋からもマーマレードの王立学園の留学を続けます」
絶対に国王にはダメだと言われていたのに、許可を求めるのではなく、既成事実として国王に話していた。
「この秋からは軍に入いるのでは無かったのか」
国王が怒っていったが、
「軍はいつでも入れます。今やらなけれりばならないことをやりに行きます」
一歩も引かずにオーウェンは言った。
「女にうつつを抜かす皇太子など、国民のだれが認める」
「やるからには何事も全力を尽くさない者に誰が従ってくれるというのですか」
オーウェンは真摯な目で父であるピーターを見た。
「よく言った。オーウェン。言った限り何年かかっても絶対にクリスを連れて帰って来るんだよ」
皇太后が言った。
「当然です」
オーウェンが返事する。
「母上」
ピーターが反論しようとするが、
「女にうつつを抜かすな、お前はよくそんなことが言えたね」
呆れて言う。
「そこの王妃の心を掴むまで、1年の留学期間を3年に引き伸ばしたのは誰だい?」
「母上そこは」
ピーターは慌てる。
「えっそうなんですか?」
オーウェンとガーネットが驚いて父母を見る。
「そうだよ。前の国王にはどれだけ怒られたか」
「その上、お前がクリスに渡した誓いの飾りをお前のお母さんの気を引くために渡したのはいいが、お母さんは犬の飾りにしたんだからね」
「お母様、若気の至りの事を」
キャロルが悲鳴に近い声で抗議する。
「ふんっ、それに比べてクリスはどうだい。それを犬ならぬ、反対派の筆頭の公爵に渡して永遠の誓いを引き出したんだから。
お前の父親は3年かけてやっと母親の心を掴んで帰ってきたはいいが、20年たったいまだに反対派がいるのに、あの子はどうだい。
滞在した10日も満たない間に反対派を悉く皆味方にしてしまったんだよ。
はっきり言って後はオーウェン、お前が好かれるかどうかだけだよ。
1年や2年いなくてもクリスさえ連れて帰ってくればそれで国の安定は決まる。
心していっておいで!」
口の悪い皇太后がクリスについて最大限の賛辞を述べていた。
「はい、ありがとうございます」
オーウェンは皇太后に感謝した。
「ピーターもキャロラインもそれでいいね!」
「判りました」
二人は頷くしかなかった。
「では、急ぎますので」
そのままオーウェンは休む間もなく飛び出した。
「あいつほとんど寝てないんじゃ」
それを残された4人は呆然として見送った。
「ま、若いっていい事さね」
皇太后が笑って言った。
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皆さん。ここまで読んで頂いてありがとうございました。
取り敢えず完結です。
また、続編始めますのでお気に入りしておいて頂けるとありがたいです。
「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/167498546
はじめました。
この話の3年前、何故クリスに戦神が憑依したのか
アレクは何故クリスを恐れるのか等々判ります。
ぜひともお読み下さい。
応援ありがとうございます!
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