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第一王子視点1 第一王子は7歳のリアに命を助けられました

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俺の名前はカーティス・ブライトン。このブライトン王国の第一王子だ。

父の国王は当時は第一王子だったが、母の男爵令嬢とは世紀の大恋愛の末結ばれたらしい。王国始まって以来、初めて第一王子が男爵令嬢と結婚したのだ。その身分差婚は貴族社会全体を巻き込んだ大論争を巻き起こしたのだが、父は周りからの圧力に負けずに、意思を貫き通したのだった。

しかし、父は元々オルコット侯爵家の令嬢キャサリンとの間で、正式な婚約まではいかなかったが、内々の話は出ており、周りは婚約するものと思っていたのだ。それを違えての婚姻だったのだ。周りの軋轢は大きく、母は大変だったと思う。男爵令嬢が第一王子の后になってやっていくには、味方も少なく、いじめもあったと聞いている。

その心労がたたったのか、母は私を生むと産後の肥立ちが悪くて若くして亡くなった。

それを父は嘆き悲しんだらしい。

一人残された幼い俺のためにもと周りに言われて後妻を取ったのだが、その相手は母と最後まで争っていたオルコット侯爵家の令嬢キャサリンだった。

今の現王妃だ。

王妃は2年後に第二王子アリスターを生んだ。

そして、母の違う二人の王子がいれば、これがご多分にもれずに、後継者争いを生んだ。


俺の後ろ盾が男爵家だったのに対して、アリスターはオルコット侯爵家だった。端から勝負にもならなかった。その上、男爵が事故で死ぬと俺の実家は断絶になった。

俺は孤立無援に陥った。

俺は母の愛を知ること無く、育てられた。

王妃は憎き男爵令嬢の生んだ俺なんて見向きもせずに、弟の方を溺愛した。

私は弟と違って母もいない、与えられる物も殆どない、そして、教師も三流だった。

礼儀作法の教師にしても剣術の教師にしても俺ができないとすぐに叩いた。

「母親の身分が卑しいと礼儀作法も禄に出来ない」
「これだから男爵の娘の血を引く王子どうしようもないのだ」

俺は稚心に傷ついた。

母親の身分が低いと王子の能力までもが落ちるらしい。

俺は愚かなことに3流教師たちの言う事を信じてしまっていた。


でも、そんな俺にも、唯一乳母は味方してくれた。

「カーティス様は決して無能ではありません」
「あなたはこのブライトン王国を背負って立っていかれる方なのです。母上様は確かに現王妃様に比べてそのお父様の身分は低かったです。しかし、その身分にも関わらず貴方様の母上は王妃様よりも第一王子殿下の愛情を得られたのです。あなたのお母様は侯爵令嬢に勝たれたのですよ」

そうか身分が低くても勝てることもあるのか。

子供心にも乳母の言葉は心に響いた。


でも、その乳母も俺が6歳の時に事故で死んでしまった。

周りの態度も更に冷たくなった。一応王子としては扱われていたが、弟のアリスターの扱いとは天地雲泥の差があった。

でも、俺は乳母の口癖「貴方様は必ず素晴らしい王子様にお成り遊ばします。だから頑張って下さい」
その口癖を信じて自分なりに頑張っているつもりだった。


しかし、それは独りよがりになっていたらしい。

いつの間にか臣下らにはいらない王子と言われていたのだ。

「第一王子殿下は態度もがさつ。礼儀作法もなっていないわ。見た目も暗そうだし」
「それに対して第二王子殿下は見た目も天使だし、仕草も優雅よね」
「本当に二歳も年下なのに」
「まあ、母親があんなだったから仕方がないんじゃない」
「本当よね。母親の身分が低いとその子供までどうしようもなくなるのね」
「本当にいらない王子よね」

その陰口を初めて聞いた時には頬を殴られたように感じた。

そうか、俺はいらない王子なんだと。

その時、俺は剣術の教師に嫌なことを言われてむしゃくしゃしていた。

いらないなら、このまま出奔してやれ。

俺は馬小屋に潜り込むと自らの白馬を駆って一時間位で行けるダンジョンに向かった。

丁度その時、冒険者の物語をよく読んでおり、自分でも少しくらいならば出来ると思っていたのだ。

だが、それは甘かった。

第一層にいた最初のゴブリンは一刀両断したが、次から次に魔物たちが襲ってくる。衝撃波や
剣で次々にやっつけていったが、九歳の子供では高々やれるのは限られていた。あっという間に魔力は枯渇した。剣で必死に応戦するが、集団で襲ってこられて、次々に傷つけられた。
利き腕にゴブリンの剣が突き刺さった。思わず、剣を取り落とす。

次の剣は倒れて躱すが、もう逃げ道はなかった。

ボコボコにゴブリンらにやられる。もう終わりだ。

俺は諦めた。

「タラッタラー、タタラッタラーン」
どこかから音痴な歌声が聞こえてきた。

その歌が聞こえた時、何故かゴブリンらの動きが止まった。

驚いて目を開けるとゴブリンらは何やらキョロキョロしている。

「ドリャーーーー」
次の瞬間周りにいたゴブリンらは一瞬で弾き飛ばされていた。

そして、そこには小さな天使がいた。俺にはたしかにそう見えた。

「えっ、あなた人間?」
その天使は驚いて声をかけてきた。

「凄い怪我じゃない」
そう言うと天使は俺の口に何かの液体を流し込んでくれた。

プシューーーーーー。

と言う音が聞こえたと思った。

俺の傷だらけの躰は燃えるように熱くなって、そして、ハッとした時には傷は全て塞がって元に戻っていた。

「もう、何してるのよ。こんな危険な所に一人で来てはいけないでしょ」
俺はどう見ても俺よりも小さい女の子に注意されていた。

「いや、それそのまま返したいんだけど」
俺がいうと、

「何言っているのよ。ここは何も出来ない子供が一人で来て良いところじやないわ」
「子供子供って言うけれど、五歳くらいの子供に言われたくないよ」
「失礼ね。私はこう見えても七歳よ」
「俺より二つもガキじゃないか」
「ふんっ、それが命の恩人に対して言う言葉?」
女の子の言葉に俺は一瞬固まった。そうだ。そのとおりだ。

「いや、ゴメン。助けてくれてありがとう」
俺は素直にそう言うしか無かった。

「そうよ。判ればいいのよ」
女の子は胸を張って偉そうに言った。

7歳の女の子に威張られるのは少しムカついたが、でも、俺は命の恩人には何も言い返せなかった。

「君は何故一人でこんなところにいるの?」
「お母様に言われて薬草取りに来たの」
その子の言葉に俺は耳を疑いたくなった。こんな可愛げな子供にこんな危険なことをやらせるなんてなんてひどい母親なんだと。

そう言うと、

「ふんっ、これはお手伝いなのよ。平民の子供はお貴族様と違って、誰も面倒を見てもらえないのよ。出来るようになったら何でも自分でやるようにしないと生きていては行けないのよ。平民の世界は厳しいんだから」
女の子はさも当然のように言った。

そうか、平民の世界は王族の世界とは違って、こんな小さい時からダンジョンに一人で潜って生活していかないと生きていけないのか。俺はなんて恵まれていたのだろう。俺は一瞬信じてしまった。

「なわけ無いだろう。こんな所に一人で来たら普通に死ぬだろう」
俺は思わず叫んでいた。

「ふっふーん」
女の子は何故か胸を張った。

「リアの障壁は完璧なの。さっきもコボルト吹き飛ばしたでしょう。ドラゴンだって吹き飛ばすんだから」
少女は自信満々に言ってきた。

「それになんかあったらお母様のお薬飲めば治るんだから。あなたも治ったでしょ」
「ああ、本当だ。すごい薬だね」
「そうなの。お母様は王国一の薬屋なの。じきにリアもお母様みたいな薬を作るようになるんだから。だから今は修行の身なの」
女の子は希望に満ちた声で自信満々に未来の自分を語っていた。

俺はあまりにも型破りな女の子を前にして何も言えなかった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

リアは小さい時から型破り破天荒です。
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