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期末試験を忘れていました

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学園祭がやっと終わった。再び王子連中を叩きのめし、第一王子らは発表展示が中心で元々競い合いの場にはいなかったが・・・・、1年のクラスAは更に目立ってしまったのだ。

この週末はカートとダンジョンに潜って、薬草を採取して、それでポーションを作るというポーション三昧で、私は機嫌良く月曜日に学園に帰ってきた。

「おはよう!」
元気一杯に教室に入ると、雰囲気がガラリと変わっていた。

な、なんとみんな、机の前に座って勉強しているのだ。

空から槍が降ってくるのでは無いだろうか?

「どうしたの、皆? Sクラスに勝てたショックのあまり頭がおかしくなったとか」
「何を他人事宜しく言ってるんだよ。試験まで後二週間位しか無いんだよ!」
「あっ忘れていた!」
オーガストの言葉に私は思い出した。そういえば、成績の大半は試験の結果で決まるのだ。そしてその期末試験が後二週間後に迫っているのだった。
考えればあまり勉強していなかったことを思い出した。

「ヤバい!」
私は慌てて勉強しようとしたのだが、勉強する時間もほとんどなく、苦手な礼儀作法の授業が始まった。

そして、今はサマーパーティーに向けたダンスなのだ。

ダンスをしたことがなかった私には中々難しい単位だ。でも、期末試験が終わればすぐに、サマーパーティーだ。カートに恥をかかすわけにはいかない。

「リアさん、下ばかり見ない」
「ギャ!」
注意されて上を見て踊り出したとたん、思いっきりオーガストの脚を踏んだ。

うーん、中々難しい。

下を見たら
「リアさん!」
と注意されるし、
前を向いて踊ると、
「ギャ!」
オーガストの脚を踏むしで大変だった。


「痛ててて」
授業の後、オーガストが脚を見ると真っ赤になっていた。私が慣れないヒールで踊ったので更に酷い事になっており、これは足の指の骨がおれているかもしれない。

「ごめん。オーガスト、これ飲んで!」
私は作ってきた、特級ポーションを渡した。

「ああ、有り難う」
一口、口に含むが
「げっ、なんだ、この苦いのは」
顔をメチャクチャ歪めている。

「良薬は口に苦しよ」
私が言うが
「こんなの飲めるかよ!」
私に突き返してきた。

「あんた、何もったいないことしてるのよ。これ金貨25枚もするのよ!」
「えっ!こんな苦いのが」
ベッキーの言葉にオーガストは絶句した。

「リアもこんな高価なものをオーガストなんかに渡すなんて、もったいないことしないでよ」
ベッキーが文句を言う。

「だって、私のせいで怪我したみたいだから」
「げっ、見てみろよ。薬のんだから、足が熱持って来たじゃんか」
オーガストが脚を触って文句を言って来た。

「何言ってるのよ、熱くなってきたのは良くなってきた証拠よ」
「でもポーションを舐めただけだぞ」
「舐めただけで効くかどうかは判んないけど」
私は自信なさげに言った。そこまで効果があるかどうかは判らない。

「だろう。こんな苦い薬は、生まれて初めて飲んだ」
「リアの薬って、ポーションも苦いんだ」
何故かいる隣クラスのプリシラが言う。

「ポーション以外にリアの薬ってあるんですか?」
エイミーが聞く。

「リアの風邪薬はとても苦いって貴族では有名よ」
「えっ、あの苦いチェスターの風邪薬って、リアさんが作っているんですか?」
「うっそう、風邪の時に何時も飲まされるあの苦いのが・・・・」
ブリトニーとドロシアが嫌そうに言ってくれる。

「えっ、皆私の風邪薬飲んでくれてるんだ」
私は嬉しくなった。

「あ、騎士団の横の店で売っている銀貨二枚もするバカ高い風邪薬だろ。あんなの誰が買うんだって、ばかにしてたら、先生に『この薬をバカにするな』って怒られたんだ。そんなに効き目が良いのか?」
不思議そうにオーガストが聞く。

「判んないけど、母は風邪薬はこれよねって、何時もそれよ」
「うちもよ」
「苦いから嫌だって散々言っても、許してもらえなかったのよね」
「そう、苦いから良く効くのよって」
「そっか、あれ、リアが作ってたんだ」
ザカリーが嫌そうに言う。

「リアが作っていると思うと、有り難みが薄れるよな」
オーガストが失礼なことを言う。

しかし、足を見て
「あれ、痛いの治っている!嘘?」
オーガストは立ち上がって、喜びだした。

「さすがリアの薬は違うわ」
ベッキーが言う。
「でもリアが作ってるっていうのがどうにも信じがたい」
更にオーガストが言う。

「ふんっ、あんたには二度と売ってあげない」
私がブスッとして言った。

「あんた良いの?リアのポーションは他の店のポーションとは別物よ」
「リアごめん、俺が悪かった」
慌ててオーガストが謝ってくる。

「だって利かないと思うんでしょ!必要ないでしょ」
「いや、そんなこと無いって。言葉のあやで」
「ふんっ」

私は中々オーガストを許さなかった。

放課後も図書館に勉強にいくが、何と言うことだ。日頃はがらがらなのに、ぎっしりと詰まっていて、空きが中々無い。

「どうした?破壊女、まさか貴様も勉強しに来たのか?」
勉強していた男が立ち上がって聞いてきた。

「げっ、第二王子!」
私は嫌な奴に見つかったなと思った。

「まあ、貴様が今更勉強してもどうなるものではないが。今回は私が圧倒してやるわ!」
王子は自信満々に言い切った。

「殿下、そのような破壊女なんか、相手になさる価値もありませんわ」
そう言うと隣りにいたレベッカは高笑いした。

「ベッキー、クラスって、Sクラスからの成績順だっけ」
私はベッキーに聞いた。

「そんな事は無いと思うけど、確かAクラスからの成績順よ」
「えっ、じゃあSって遥か下よね。じゃあ私が負けるわけ無いわよね」
私はベッキーに聞いた。

「な、なんだと、破壊女の癖に」
「そうですわ。SクラスはSpecial、特別クラスの略号なのよ」
王子とレベッカが反抗する。

「勉強出来ない貴族を特別に集めたってこと」
「えっ、いやさすがにそこまではないわよ」
ベッキーが慌てて言ったが後の祭だった。

「おのれ、破壊女、よくもそこまで言ってくれたな。今度こそ目にもの見せてくれるわ」
「覚えていなさいよ。私勉強の成績だけは良いんだから」
いきり立つ二人に
「そこ、いい加減に静かになさい」
図書の先生の怒りが炸裂していた。
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