上 下
66 / 144

サマーパーティー編5 侯爵令嬢コニーが3年生令嬢軍団を連れて襲撃してきました

しおりを挟む
私達が3人で連れ立ってトイレから出た時だ。

「オーレリアさん。やっと見つけたわ」
コニーが3年生の貴族令嬢軍団を連れて私達に向かってきた。

「オーレリアさん。あなたよくも私に恥をかかせてくれたわね」
コニーが目を吊り上げて言ってきた。コニーはいつも一人いる印象だったので、集団をレベッカのように引き連れているなんて驚いた。お貴族様って1人では何も出来ないんだろうか。それも3年生のお偉方だ。

年鑑で覚えた顔によく似ている伯爵家から男爵家の令嬢までが、ずらりといる。

「そうよ。第一王子殿下の筆頭婚約者候補のコニー様を差し置いてパーティーに殿下と出るなんて」
「それに殿下と破廉恥にも公衆の面前で食べさせなんてするなんて」

「申し訳ないですけど、全て誤解です。殿下はご自身が命じて今回のパーティーを欠席させたカートの代わりにエスコートして頂いただけです。あと、食べさせじゃなくて余計な事を言わないように口封じに、私の嫌いなグリーンピースを口の中に入れただけです」

「カート?」
「誰それ?」
「そんな奴いたっけ」
貴族たちがボソボソ言い出す。

「平民の3年生よ。コニーさんと一緒のクラスのはずよ」
私が驚いて言った。こいつらは貴族以外は見えていないのか。私は少し憤った。私のカートを知らないなんて。

「あなたが何言っているか判らないけれど、誤魔化そうとしたってそうはいかないわ」
「そうよ。コニー様に謝りなさいよ」
「平民風情が殿下と一緒にパーティーに参加するなんてどう言うつもりなの」
貴族令嬢達は好き勝手なことを言ってくれる。ここは本音はどうあれ、全員平等を謳う、王立学園だ。私は建前論で反論しようとする、その前にプリシラが口を開いた。

「皆さん、リアさんはその嫌いなグリーンピースを殿下に無理やり口の中に入れられて、今まで泣いていたのだから、それくらいで許してあげて」
「えっ」
「あんたは黙って」
私は嫌いなグリーンピースを口に入れられて泣いていたわけではないと言おうとして、ベッキーに止められる。なんかそれじゃあ5歳の子供みたいじゃない。私はむくれた。

「プリシラ様」
公爵令嬢のプリシラがいるのに今まで気付かなかったからか、それとも私が泣いた理由が笑えたからか、破壊女の私が泣いていたという事実を知らなかったからか令嬢達は戸惑った。

「プリシラ様。ここは学園で、私は一応先輩です。いくら公爵家のご令嬢とはいえ、邪魔しないでいただきたいのですが。そもそも、図太いオーレリアさんが泣くなんてありえないでしょう」
「何言っているのよ。私も女よ。泣くときはなくわよ」
なんて事を言ってくれるのだ。この女は。私も泣く時は泣くのだ。

「どのみち殿下の気を引こうとしているんでしょ」
コニーがとんでもないことを言ってきた。私は必死に王族と関わるのを避けていると言うのに。

「何言っているのよ。私昔から母に言われているの。王子と結婚したら親子の縁を切るって。そもそもうちの母がお貴族様嫌いなのは、そこのモリーさんがよく、知っているはずよ」
私はコニーのすぐ後ろにいた気の強そうなモリー・ベック伯爵令嬢を指差した。

「えっ」
指されたモリーは驚いていた。何故いきなり指さされたか、判らないみたいだ。

「あなた、何故私の名前を」
「あってるでしょ。だってあなた小さい頃の特徴そのままだもの」
「すいません。リア、貴族年鑑を丸覚えしているんです」
後ろからベッキーがフォローしてくれる。

「モリーさんが何を知っているというのよ」
コニーが聞いてきた。

「昔、モリーさんのお父さんの伯爵が母を怒らせて燃やされそうになったことがあって」
「えっ、あなた、ひょっとしてあの薬屋のチェスターの娘なの」
モリーが2歩下がった。それも明らかに顔がひきつっている。

「ええ」
私が笑って言うと、

「すいません。コニー様。その子は無理です」
「ちょっとモリー、どうしたのよ」
「すいません。父からは絶対に近寄るなって厳命されているんです。コニー様も近寄らないほうが身のためです。みんなも早く逃げたほうが良いわよ」
明らかに怯えた顔で慌ててモリーは言うと後ろを振り返りもせずに逃げ出したのだ。ちょっと待て、そこまで怯える理由があるのか? 私はあなたのお父さんを助けてあげたのに。

「えっ、ちょっと」
コニーは慌てた。

後ろにいた令嬢達も次々に後ろに下がりだす。

「オーレリアさん。今日のところは許してあげるわ。でも、次はないわよ」
そう捨て台詞を残すと一人になったコニーは慌てて去っていった。


残された私達は驚いてそれを見ていた。

「あなたのお母様、何をされたの」
プリシラが驚いて聞いて来た。

「私もよくわからないけど、叫び声が聞こえるから慌てて店に行ったら、半焼になった伯爵がいて、怒りまくった母をハンスが必死に止めていたのよ。仕方ないから、私の作ったポーション飲ませて、逃してあげたんだけど」

「あんたのところって凄いのね。薬買うのも命がけなわけ」
呆れてベッキーが言った。

「うーん、日頃はそんな事ないんだけどね。その後ジルおじさんに連れられた家令が平身低頭母に謝って行ったわ」
「本人じゃないんだ」
「本人だったらまた母が怒り出すといけないからってジルおじさんが言っていたわ」
ベッキーの疑問に私は答えた。

「でも、あのモリーって子、あなたも怖れていたけど」
「変ね。私は伯爵にポーション飲ませて助けてあげただけなのに」
「絶対リア、その時なんかやったはずよ」
「普通に、私の作ったポーション飲ませてあげただけよ」
次、来たら躰を切り刻まれるかもって忠告はしたけど・・・・
「絶対にあんたも何かやったって。でないとモリーさんがあそこまで恐れるのはおかしいわよ」
ベッキーが言い張ったが、私の記憶にはなかった。

なんでだろ?


その後王子殿下から謝られたが、私はもう気にしていなかった。

それよりもカートだ。

ドタキャンして、なおかつ関わりたくない王子の相手をさせるなど許せない!
私はプッツン切れていた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【第2章開始】あなた達は誰ですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:9,706

窓側の指定席

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:2,087pt お気に入り:13

飯がうまそうなミステリ

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:0

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,363pt お気に入り:1,133

不実なあなたに感謝を

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:79,388pt お気に入り:3,763

紅雨 サイドストーリー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:4

疲労熱

BL / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:4

処理中です...