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手を差し出してきた皇帝を思いっきり張り倒しました
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「えっ?」
私は一瞬何のことかよく判らなかった。
その鏡をつつくと向こうの女の子もつついてくる。
どう見ても鏡だ。魔道具ではない。
触っても中には入れないし。
そうだよね。この見たこともないきれいな女の子って私だよね。
髪型とか衣装とか変えるとここまで変わるんだ。
私ってきれいにもなれるんだ・・・・
いやいやいや、今気にするところはそこじゃない!
「おじちゃん。これ私ですけど」
私は戸惑って言った。そう、何からかってくれているのだ。いくら私が化けたからって、からかうこと無いんじゃない。
「さ、さようでございます。オーレリア様。あなた様がこの帝国第一王女殿下であらせられます」
「はっ?」
私は一瞬頭の中が真っ白になった。剣のおじちゃんが言うことがよく判らなかった。
「私!、私が皇女ってどういう事?」
「今まで黙っていて申し訳ありません。アリシア様からはきつく話すなと言われておりまして」
「はあああ! どういう事?」
私は思わず剣のおじちゃんに食って掛かりそうになった。
「リア、ルーカスを責めるのはやめてやってくれ」
後ろから声がかかった。
振り返るとそこには帝国の皇帝がいた。
周りのみんなは跪いているのが見えた。でも、私はそれどころではなかった。
「えっ、じゃあ、あなたが私のお父さん」
私は皇帝をまじまじと見た。
「そうだ。私がお前の父だ」
私はいきなり皇帝からそう言われても実感も何もわかなかった。でも、こいつが私と母を捨てたいけ好かない男だと言う事はよく判った。
「会いたかったよ、リア」
皇帝が手を伸ばしてきた。
私はその手がとても汚らわしいものに見えた。
「今頃父親づらするんじゃないわよ!」
私は叫ぶと同時に、いや、叫ぶ前に手が既に出ていた。
思いっきり皇帝の顔を張り倒していた。
皇帝が吹っ飛ぶ。
でも私はそれどころではなかった。
私はそのまま部屋の外に飛び出していた。
「リア!」
「リア様!」
皆の叫び声が聞こえたが、そんなのにかまっている余裕もなかった。
人がいようが障害物があろうが、ただひたすら駆けた。
もう何がなんだか判らなかった。
母からは王族に近づいたら行けないと小さい時から散々言われていた。
でも、私が王族だった。これってどういう事?
母は自分が皇帝に近づいて子供を孕まされて捨てられたから、自分の子供には王族には近づくなって言っていたわけ。
それならそうと言えよ。
何も知らなかったから、私は由緒正しい平民だと思っていたのに。
これじゃあ平民でもないじゃない。
ブライトンのお貴族様方も皆、帝国の皇女を私の代わりにカートの婚約者にしようとしていたけど、それって私のことじゃない。セドリックに出ていけって言われたけれど、私が私を追い出したことになるの?
何これ。
自分のせいで失恋したってこと?
もう訳判んない。
一体どうなっているのよ! もうやってらんないわよ!
私はあまり前を見ていなかった。
「げっ、破壊女」
はっと気づくと、声をかけてきた誰かを思いっきり弾き飛ばしていた。
「えっ?」
慌てて立ち止まるとそれは煙男だった。
「いってえええ」
呻いて倒れている煙男の手を引いて立たせた。
「なんで私の前に出てくるかな」
「な、何を、さすが破壊女、普通はぶつかったほうがまず謝るべきだろうが」
「あっ、御免」
言われて慌てて私は謝った。流石に最初の私の言葉は理不尽だった。
「えっ、いや、お前に謝られると調子が狂うんだが」
「どういう意味よ」
私はムツとして煙男を睨みつけた。
「いや、まあ」
煙男は愛想笑いをした。
「それよりあんた、私の弟?になるのよね」
「ああ、信じられないことにそうみたいだ」
嫌そうに煙男が言う。
「何よその言い方」
「じゃあ、お前は信じられるのかよ」
「私は今知ったばかりなのよ。すぐに信じられるわけ無いでしょ。あんたこそいつから知っていたのよ」
「それは最初に会う前から」
えっ、うそ、こいつ知ってて言わなかったの?
「何ですって、知ってたら言いなさいよ」
「いや、絶対に言うなって、剣聖からは言われていたし。言ったらお前の母親に殺されるって言われたから言うの無理だろう」
「まあ、そうね」
あの母ならやりかねない。
「でもなんで」
「そんなのお前の母親に聞けよ」
「そらあそうよね」
それはそのとおりだ。あの胸糞悪い皇帝に捨てられたというのが母には許せなかったのだろうか?
だから私には黙っていたとか。十二分に有り得る話だ。
「そうだ。そもそも、皇帝一族は女の子供は生まれにくいんだと。お前がとてもめずらしいんだそうだ。オヤジの執着も凄いんだぞ」
「そうなの。女だからほうって置かれたのかと思っていたわ」
「なわけ無いだろう。何回もお前の母親に帰ってきてくれって使者をお前ん所に送っていたそうだけど、その度にボロボロになって使者が帰ってきたみたいで。お前に近づいたら殺すって脅されていたみたいだし」
「そうなの」
「でもオヤジの執着も凄くて。だって普通、帝国の宝って言われる剣聖を何度も何日も他国に派遣するか」
「剣のおじちゃんってそんなに凄いの」
「そらあそうだろう。何しろ近衛騎士団長だし、その剣の腕は帝国軍60万人の頂点だからな。ま、その剣聖に勝ったお前に言っても現実味がないかもしれないが」
「私は剣では勝てないわよ。障壁で勝っただけよ」
「何でも勝てたら凄いんだよ。うちの魔道士も剣聖には勝てないんだから」
「へえええ、帝国って案外ちゃちなのね」
「貴様に言われるとなんかむちゃくちゃムカつくけど、でも、お前も帝国の皇女だろうが」
「ええええ!今まだその実感はないわよ」
「まあ、そうかも知れないけど、なにしろ剣聖に土をつけたのはお前の母親とお前だけだ」
「母は化け物だからね」
私は納得していった。
「皇帝があまりにも娘々って言うからうちの母もしゃかりきになって子供作ったんだけど、4人とも男、側室も2人娶ったんだが、それぞれ二人子供をもうけたんだが、その4人も男で、おかげで、皇子が8人もいるんだぞ。どうしてくれるんだよ」
「男が多いほうが良いじゃない。跡継ぎがいっぱいいて」
「はあああ? 普通は一人いれば良いんだよ。後継者争いが大変で、最悪なんだぞ」
「あんたが一番上だからあんたが継げばいいじゃない」
「帝国は実力主義なんだよ。多民族国家だからな」
「そんなのに多民族国家なんて関係あるの」
「色々うるさいんだよ」
どうやら皇女は私だけらしい。男はいらないから娘がほしいとか、皇女しかいない国の王族が聞いたら怒り出しそうなことを平気で皇帝は宣っているそうだ。
皇帝は私に執着していたんだ。じゃなんで母を捨てたんだろう?
私は一瞬何のことかよく判らなかった。
その鏡をつつくと向こうの女の子もつついてくる。
どう見ても鏡だ。魔道具ではない。
触っても中には入れないし。
そうだよね。この見たこともないきれいな女の子って私だよね。
髪型とか衣装とか変えるとここまで変わるんだ。
私ってきれいにもなれるんだ・・・・
いやいやいや、今気にするところはそこじゃない!
「おじちゃん。これ私ですけど」
私は戸惑って言った。そう、何からかってくれているのだ。いくら私が化けたからって、からかうこと無いんじゃない。
「さ、さようでございます。オーレリア様。あなた様がこの帝国第一王女殿下であらせられます」
「はっ?」
私は一瞬頭の中が真っ白になった。剣のおじちゃんが言うことがよく判らなかった。
「私!、私が皇女ってどういう事?」
「今まで黙っていて申し訳ありません。アリシア様からはきつく話すなと言われておりまして」
「はあああ! どういう事?」
私は思わず剣のおじちゃんに食って掛かりそうになった。
「リア、ルーカスを責めるのはやめてやってくれ」
後ろから声がかかった。
振り返るとそこには帝国の皇帝がいた。
周りのみんなは跪いているのが見えた。でも、私はそれどころではなかった。
「えっ、じゃあ、あなたが私のお父さん」
私は皇帝をまじまじと見た。
「そうだ。私がお前の父だ」
私はいきなり皇帝からそう言われても実感も何もわかなかった。でも、こいつが私と母を捨てたいけ好かない男だと言う事はよく判った。
「会いたかったよ、リア」
皇帝が手を伸ばしてきた。
私はその手がとても汚らわしいものに見えた。
「今頃父親づらするんじゃないわよ!」
私は叫ぶと同時に、いや、叫ぶ前に手が既に出ていた。
思いっきり皇帝の顔を張り倒していた。
皇帝が吹っ飛ぶ。
でも私はそれどころではなかった。
私はそのまま部屋の外に飛び出していた。
「リア!」
「リア様!」
皆の叫び声が聞こえたが、そんなのにかまっている余裕もなかった。
人がいようが障害物があろうが、ただひたすら駆けた。
もう何がなんだか判らなかった。
母からは王族に近づいたら行けないと小さい時から散々言われていた。
でも、私が王族だった。これってどういう事?
母は自分が皇帝に近づいて子供を孕まされて捨てられたから、自分の子供には王族には近づくなって言っていたわけ。
それならそうと言えよ。
何も知らなかったから、私は由緒正しい平民だと思っていたのに。
これじゃあ平民でもないじゃない。
ブライトンのお貴族様方も皆、帝国の皇女を私の代わりにカートの婚約者にしようとしていたけど、それって私のことじゃない。セドリックに出ていけって言われたけれど、私が私を追い出したことになるの?
何これ。
自分のせいで失恋したってこと?
もう訳判んない。
一体どうなっているのよ! もうやってらんないわよ!
私はあまり前を見ていなかった。
「げっ、破壊女」
はっと気づくと、声をかけてきた誰かを思いっきり弾き飛ばしていた。
「えっ?」
慌てて立ち止まるとそれは煙男だった。
「いってえええ」
呻いて倒れている煙男の手を引いて立たせた。
「なんで私の前に出てくるかな」
「な、何を、さすが破壊女、普通はぶつかったほうがまず謝るべきだろうが」
「あっ、御免」
言われて慌てて私は謝った。流石に最初の私の言葉は理不尽だった。
「えっ、いや、お前に謝られると調子が狂うんだが」
「どういう意味よ」
私はムツとして煙男を睨みつけた。
「いや、まあ」
煙男は愛想笑いをした。
「それよりあんた、私の弟?になるのよね」
「ああ、信じられないことにそうみたいだ」
嫌そうに煙男が言う。
「何よその言い方」
「じゃあ、お前は信じられるのかよ」
「私は今知ったばかりなのよ。すぐに信じられるわけ無いでしょ。あんたこそいつから知っていたのよ」
「それは最初に会う前から」
えっ、うそ、こいつ知ってて言わなかったの?
「何ですって、知ってたら言いなさいよ」
「いや、絶対に言うなって、剣聖からは言われていたし。言ったらお前の母親に殺されるって言われたから言うの無理だろう」
「まあ、そうね」
あの母ならやりかねない。
「でもなんで」
「そんなのお前の母親に聞けよ」
「そらあそうよね」
それはそのとおりだ。あの胸糞悪い皇帝に捨てられたというのが母には許せなかったのだろうか?
だから私には黙っていたとか。十二分に有り得る話だ。
「そうだ。そもそも、皇帝一族は女の子供は生まれにくいんだと。お前がとてもめずらしいんだそうだ。オヤジの執着も凄いんだぞ」
「そうなの。女だからほうって置かれたのかと思っていたわ」
「なわけ無いだろう。何回もお前の母親に帰ってきてくれって使者をお前ん所に送っていたそうだけど、その度にボロボロになって使者が帰ってきたみたいで。お前に近づいたら殺すって脅されていたみたいだし」
「そうなの」
「でもオヤジの執着も凄くて。だって普通、帝国の宝って言われる剣聖を何度も何日も他国に派遣するか」
「剣のおじちゃんってそんなに凄いの」
「そらあそうだろう。何しろ近衛騎士団長だし、その剣の腕は帝国軍60万人の頂点だからな。ま、その剣聖に勝ったお前に言っても現実味がないかもしれないが」
「私は剣では勝てないわよ。障壁で勝っただけよ」
「何でも勝てたら凄いんだよ。うちの魔道士も剣聖には勝てないんだから」
「へえええ、帝国って案外ちゃちなのね」
「貴様に言われるとなんかむちゃくちゃムカつくけど、でも、お前も帝国の皇女だろうが」
「ええええ!今まだその実感はないわよ」
「まあ、そうかも知れないけど、なにしろ剣聖に土をつけたのはお前の母親とお前だけだ」
「母は化け物だからね」
私は納得していった。
「皇帝があまりにも娘々って言うからうちの母もしゃかりきになって子供作ったんだけど、4人とも男、側室も2人娶ったんだが、それぞれ二人子供をもうけたんだが、その4人も男で、おかげで、皇子が8人もいるんだぞ。どうしてくれるんだよ」
「男が多いほうが良いじゃない。跡継ぎがいっぱいいて」
「はあああ? 普通は一人いれば良いんだよ。後継者争いが大変で、最悪なんだぞ」
「あんたが一番上だからあんたが継げばいいじゃない」
「帝国は実力主義なんだよ。多民族国家だからな」
「そんなのに多民族国家なんて関係あるの」
「色々うるさいんだよ」
どうやら皇女は私だけらしい。男はいらないから娘がほしいとか、皇女しかいない国の王族が聞いたら怒り出しそうなことを平気で皇帝は宣っているそうだ。
皇帝は私に執着していたんだ。じゃなんで母を捨てたんだろう?
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