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宮廷に来るなり白馬の騎士は皇帝に呼ばれて一人でいたところを礼儀作法指南の怖そうな者にどこかわからない所に連れて行かれました
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私は、亡国の王女で今は平民落ちのアデリナ・ハウゼンは世界一強大な帝国の第一皇子のプロポーズを受けてしまった。ルヴィの手を勢いに任せてというか、ルヴィの理論的な攻撃? というか、ごもっともな理屈に負けてしまった。
確かに子供の頃、私は何も考えずに上から目線でとんでもない約束をしてしまったのだ。
帝国の皇族相手に、当時は皇弟の息子に、世界一の騎士になって白馬に乗って迎えに来たら結婚してあげると。
なんとも凄いことを約束したものだ。帝国の領土は我がハウゼンの100倍くらいあるのだ。いくら皇弟の息子とはいえ、そんな方においそれと言って良いことではない。
でも、その時は3歳の子供だったわけで、許してほしいんだけど……
それに、その3歳の生意気なガキの言うことを真に受けて、実際に剣聖になって迎えに来るか?
私はルヴィのやった事も信じられなかった。
その後ルヴィに抱きしめられてキスされたんだけど……
本当に良かったんだろうか?
「なあに、皆が反対するなら、俺は継承権を放棄して、伯爵位くらいもらうよ。剣聖なんだし、どこでも生きていけるし」
私を腕の中で抱きしめてルヴィは言ってくれたんだけど、そんな事が帝国第一皇子に許されるんだろうか?
私にはよく判らなかった。
だって、本来皇族の結婚というものは、国と国とのしがらみで決まるのだ。同盟のために、あるいは従属のために。帝国の皇子ならばそうでなければいけないはずだ。
あるいは皇族と貴族間のしがらみで決まるのだ。
帝国ほどの大きな国であれば貴族からその伴侶を出す場合はその一族の力関係とか、各勢力の均衡とかを考えて決めるべきなのだ。
ルヴィはその帝国の継承権第一位で、イケメン、剣技は剣聖として世界一を自認しているから引く手あまただったはずだ。凄まじい競争があったはずだ。そんな所に平民の私がいきなり現れて、それも結婚相手として現れて許されるのか?
ルヴィは絶対に大丈夫だ。いざという時は俺が守ると言ってくれたけれど……本当に大丈夫なんだろうか?
私には全くうまくいく気がしなかった。
船は2日で帝都まで連れて行ってくれた。
「エルヴィン様だ」
「エルヴィン様が戻られたぞ」
港で船から降りる時に、周りには多くの者がルヴィを見て歓声を上げてきた。
凄まじい人気だ。
「あの隣につれている女は誰だ?」
「騎士じゃないな」
「侍女じゃないのか」
「文官か」
「いや、助けた平民じゃないか」
誰も私を王族とかせめて貴族とか認めてもくれないんだけど……
そして、港には迎えの馬車が2台来ていたが、
「さあ、リナ」
そう言うとルヴィがエスコートして王族専用の馬車に乗せてくれようとしているんだけど。
私が戸惑っていると、
「さあ、早く」
ルヴィは強引に私を馬車に乗せてくれた。
「えっ、あの娘、エルヴィン様の馬車に乗ったわ」
「それもエスコートされて」
「誰なの?」
みんなの騒いでいる声が聞こえた。
「ルヴィ、本当に大丈夫なの? 私はこんな格好だし」
そうだ。逃亡用の恰好なので全然王族としての衣装も着ていないのだ。
「気にしなくても大丈夫だ。とりあえず、宮廷に案内するよ。衣装は後で考えよう」
ルヴィはそう言って私を馬車に乗せてくれたんだけど。
「おいおい、良いのか? ルヴィ」
黒髪の貴公子がルヴィに聞いてきた。
「リナは俺の婚約者だ。問題はない」
「えっ、婚約者って、お前ふられたって言っていたじゃないか」
「婚約破棄されていたので、取り返してきた」
「はああああ! しかし、そんな事が許されるのか?」
「詳しいことは後だ」
ルヴィはそう言うと扉を閉めてくれた。
そのまま馬車は宮廷に向かったのだ。
大丈夫なんだろうか?
私にはお前なんぞ不要だ。と皇帝陛下に言われて追い出される未来しか見えなかった。
「大丈夫だ。リナ。俺は誓いは必ず守る」
ルヴィは自信を持っていってくれるんだけど、その自信はどこから来るんだろう?
しかし、王宮に着いた途端に私の不安は的中した。
巨大な宮廷に入るなり、いきなり、ルヴィが陛下に呼ばれたのだ。
「至急の要件です」
侍従の有無を言わせぬ言葉に、
「リナ、先に部屋に入って待っていてくれ」
そう言うなり、ルヴィはダニエルさんだけ置いて、連れて行かれたのだ。
「じゃあ、アデリナ様。お部屋に案内……」
ダニエルさんがそう言おうとして途中で言葉を飲んだ。
私の前に銀ぶち眼鏡で吊り目がちな怖そうな年配の女性が近付いてきたのだ。
「おにばばあがなんでここに?」
なんか、ダニエルさんが恐怖に震えているのが目に入った。それに鬼ババアとは何だ?
「私、宮廷礼儀作法指南を仰せつかっているロッテ・マイヤーと申します」
そして、銀プチメガネに手をかけると私の頭の先から足元まで見てくれたのだ。
私は昔のアニメを思い出した。そのおばさんとそっくりだ。
これは碌でもないことだ。という事は私にも判った。
「何と言う格好をしているのですか? すぐに私と一緒に来なさい」
「えっ」
私は強引にその手を引かれたのだ。
「「「ちょっとマイヤー様!」」」
ダニエルさんと他の女官たちが慌てて止めようとしてくれたが、
「何か?」
マイヤーさんの一睨みで固まってしまったんですけど。
私は何故か怒っているマイヤーさんに強引にどこかへ連れて行かれたのだ。
確かに子供の頃、私は何も考えずに上から目線でとんでもない約束をしてしまったのだ。
帝国の皇族相手に、当時は皇弟の息子に、世界一の騎士になって白馬に乗って迎えに来たら結婚してあげると。
なんとも凄いことを約束したものだ。帝国の領土は我がハウゼンの100倍くらいあるのだ。いくら皇弟の息子とはいえ、そんな方においそれと言って良いことではない。
でも、その時は3歳の子供だったわけで、許してほしいんだけど……
それに、その3歳の生意気なガキの言うことを真に受けて、実際に剣聖になって迎えに来るか?
私はルヴィのやった事も信じられなかった。
その後ルヴィに抱きしめられてキスされたんだけど……
本当に良かったんだろうか?
「なあに、皆が反対するなら、俺は継承権を放棄して、伯爵位くらいもらうよ。剣聖なんだし、どこでも生きていけるし」
私を腕の中で抱きしめてルヴィは言ってくれたんだけど、そんな事が帝国第一皇子に許されるんだろうか?
私にはよく判らなかった。
だって、本来皇族の結婚というものは、国と国とのしがらみで決まるのだ。同盟のために、あるいは従属のために。帝国の皇子ならばそうでなければいけないはずだ。
あるいは皇族と貴族間のしがらみで決まるのだ。
帝国ほどの大きな国であれば貴族からその伴侶を出す場合はその一族の力関係とか、各勢力の均衡とかを考えて決めるべきなのだ。
ルヴィはその帝国の継承権第一位で、イケメン、剣技は剣聖として世界一を自認しているから引く手あまただったはずだ。凄まじい競争があったはずだ。そんな所に平民の私がいきなり現れて、それも結婚相手として現れて許されるのか?
ルヴィは絶対に大丈夫だ。いざという時は俺が守ると言ってくれたけれど……本当に大丈夫なんだろうか?
私には全くうまくいく気がしなかった。
船は2日で帝都まで連れて行ってくれた。
「エルヴィン様だ」
「エルヴィン様が戻られたぞ」
港で船から降りる時に、周りには多くの者がルヴィを見て歓声を上げてきた。
凄まじい人気だ。
「あの隣につれている女は誰だ?」
「騎士じゃないな」
「侍女じゃないのか」
「文官か」
「いや、助けた平民じゃないか」
誰も私を王族とかせめて貴族とか認めてもくれないんだけど……
そして、港には迎えの馬車が2台来ていたが、
「さあ、リナ」
そう言うとルヴィがエスコートして王族専用の馬車に乗せてくれようとしているんだけど。
私が戸惑っていると、
「さあ、早く」
ルヴィは強引に私を馬車に乗せてくれた。
「えっ、あの娘、エルヴィン様の馬車に乗ったわ」
「それもエスコートされて」
「誰なの?」
みんなの騒いでいる声が聞こえた。
「ルヴィ、本当に大丈夫なの? 私はこんな格好だし」
そうだ。逃亡用の恰好なので全然王族としての衣装も着ていないのだ。
「気にしなくても大丈夫だ。とりあえず、宮廷に案内するよ。衣装は後で考えよう」
ルヴィはそう言って私を馬車に乗せてくれたんだけど。
「おいおい、良いのか? ルヴィ」
黒髪の貴公子がルヴィに聞いてきた。
「リナは俺の婚約者だ。問題はない」
「えっ、婚約者って、お前ふられたって言っていたじゃないか」
「婚約破棄されていたので、取り返してきた」
「はああああ! しかし、そんな事が許されるのか?」
「詳しいことは後だ」
ルヴィはそう言うと扉を閉めてくれた。
そのまま馬車は宮廷に向かったのだ。
大丈夫なんだろうか?
私にはお前なんぞ不要だ。と皇帝陛下に言われて追い出される未来しか見えなかった。
「大丈夫だ。リナ。俺は誓いは必ず守る」
ルヴィは自信を持っていってくれるんだけど、その自信はどこから来るんだろう?
しかし、王宮に着いた途端に私の不安は的中した。
巨大な宮廷に入るなり、いきなり、ルヴィが陛下に呼ばれたのだ。
「至急の要件です」
侍従の有無を言わせぬ言葉に、
「リナ、先に部屋に入って待っていてくれ」
そう言うなり、ルヴィはダニエルさんだけ置いて、連れて行かれたのだ。
「じゃあ、アデリナ様。お部屋に案内……」
ダニエルさんがそう言おうとして途中で言葉を飲んだ。
私の前に銀ぶち眼鏡で吊り目がちな怖そうな年配の女性が近付いてきたのだ。
「おにばばあがなんでここに?」
なんか、ダニエルさんが恐怖に震えているのが目に入った。それに鬼ババアとは何だ?
「私、宮廷礼儀作法指南を仰せつかっているロッテ・マイヤーと申します」
そして、銀プチメガネに手をかけると私の頭の先から足元まで見てくれたのだ。
私は昔のアニメを思い出した。そのおばさんとそっくりだ。
これは碌でもないことだ。という事は私にも判った。
「何と言う格好をしているのですか? すぐに私と一緒に来なさい」
「えっ」
私は強引にその手を引かれたのだ。
「「「ちょっとマイヤー様!」」」
ダニエルさんと他の女官たちが慌てて止めようとしてくれたが、
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