2 / 5
何故か男がしつこくいいよってきました
しおりを挟む
その日の仕事を終えて、帰ろうとした時だ。
またしても王宮の渡り廊下で男と遭遇したのだ。
「キャロライン・バーゼル嬢、是非とも私と付き合って下さい!」
そう言ってまた赤い薔薇を一輪差し出してきたのだ。
「えっ?」
私は驚いた。
こいつ、また、張り倒されたいのか?
私は全ての自制心を総動員して、なんとか手を出すのを止めたのだ。
「ふんっ!」
私は無視して歩き去ったのだ。
この男が誰か知らないし、こんな軽い男と付き合う気はなかった。
でも、私から無視されても男は諦めてくれなかったのだ。
その男は行きと帰りに必ず私の前に現れるようになった。
何故、男が張り倒した私と付き合ってほしいと言い出すのか?
私には全然理解できなかった。
そんなお昼休みだ。私は食堂でたまたまダリアと一緒になった。
「キャロライン、聞いたわよ。エイブラハム様に言い寄られているんだって」
会うなり、ダリアが話てきた。
「エイブラハムって誰?」
「エイブラハム様よ。この前あなたが張り倒した。オルグレン伯爵家の三男よ」
「ああ、あの男、そういう名前だったのね」
「あなた、知らないの? ハンサムで優しいと女の子達の間でとても有名な方よ。オルグレン伯爵家は名門だし、三男だけど、王太子殿下の覚えもめでたい文官だそうよ。あそこの家は子爵家の称号も持っていたし、ゴードンに比べたらめちゃくちゃ良い話だと思うわ」
ダリアはあの軽い男を推してきたんだけど……
「何言っているのよ、ダリア! 何故、私が張り倒した男から付き合ってほしいって言い寄られなきゃならないのよ? 普通はあり得ないでしょ!」
「それはそうだけど、良いじゃない。言い寄ってくれるんだから」
「何言っているのよ。エイブラハムっていったら遊び人で有名じゃない。例え私が付き合っても、遊ばれて捨てられるのが落ちよ」
私はそう言いきったのだ。
エイブラハムの名は聞いたことがあった。女をとっかえひっかえしている遊び人なのだ。何人の令嬢が泣かされたことか。そんな男と付き合う気なんてさらさらなかった。
「そうか、じゃあ、キャロライン嬢は俺が遊びでなかったら付き合ってくれるんだな」
後ろからいきなり声がして私はぎょっとした。
「え、エイブラハム様」
ダリアは私の後ろを見て、驚いた。
「な、何を言っているのよ。絶対に嫌よ!」
「そうか、遊びでなかったら良いのだな」
私が嫌だと言ったのに、男は聞いていなかった。
男は大きく頷くと、さっさと去って行ったのだ。
「凄いじゃない。キャロライン! 完全にエイブラハム様はあなたに夢中だわ」
「何言っているのよ。あんな軽薄な男絶対に嫌よ」
ダリアの言葉に私ははっきりと拒否したのだ。
その翌朝だ。
私は出勤すると、私の使えているエリザベス王女の近衞騎士隊のダンケル隊長、すなわち、私の上司に呼ばれたのだ。
「キャサリン。喜べ!」
別室に呼ばれて行くなりダンケルは喜色を浮かべて私に話し出した。
「お前に縁談がきたぞ」
「はい?」
私は悪い予感がした。
「いやあ、貴様が軟弱なゴードンに振られた時は、男勝りのお前にはもう婚約したいと思う相手が現れないのではないかととても心配だったのだが……なんと、相手は伯爵家で、王太子殿下の覚えもめでたい男だ。これほど目出度いことはない」
隊長は私に対してとても失礼なことを平然と言ってくれた。
二度と婚約できないってどういう意味よ!
私はそこまで酷く隊長に見られているとは思わなかった。
むっとしてにらみ返すと
「相手はオルグレン伯爵家の三男だ」
「お断りします」
私は間髪入れず拒否したのだ。
「はああああ! 何を言うのだ。キャロライン。もう一度考え直せ。子爵家の嫡男に振られた貴様に、普通はこういうおめでたい話は中々巡って来ないものなのだぞ。お父上もとても心配していらっしゃった。会うだけでも会えば良いだろう」
隊長は私を説得してきたが、
「あんな軽い男はお断りです」
私が断ると、
「まあ、確かにエイブラハムの浮名は聞くが、これは正式な縁談だからな。是非とも考え直して欲しいのだが」
「隊長がなんと言われようと。嫌なものは嫌です。そもそも隊長、二度と私に縁談が来ないと思っていたってどういう事なのですか?」
私が睨み付けると
「いや、それはだな……」
隊長は私の怒りに、まずいことを言ったと気付いたみたいだ。
「どうせ私は魅力のない、気の強い女ですよ! エイブラハムにも男をたてないから振られるんだと既に言われていますし……
しかし、私はあいつを立てるつもりは全っくありません。だから断ってください!」
私は隊長に反論したのだ。
「いや、まあ、すまん。しかし、婚約破棄されたところのお前に縁談が来たのだぞ。ここで会いもせずに断ると二度と縁談も来ないと俺も今必死でお前を説得しているとこなのに! いかず後家で貴様がいつまでも騎士団残っている暗い未来が見えてだな……」
「余計なお世話です!」
バンッ
私は隊長の話の途中で、怒りのあまりテーブルを叩いていた。
お茶の入ったカップが全部ひっくり返っていた。
そのまま、唖然として口を開けた隊長を置いて、私は扉を思いっきり閉めて出ていった。
ダシーーーーン!
衝撃で建物中が揺れたが知ったことでは無かった。
後輩の騎士達、いや、周りの騎士達は全て、その日は私の周りに寄ってこなかった。
その日私は、一日中とても機嫌が悪かったのだ。
またしても王宮の渡り廊下で男と遭遇したのだ。
「キャロライン・バーゼル嬢、是非とも私と付き合って下さい!」
そう言ってまた赤い薔薇を一輪差し出してきたのだ。
「えっ?」
私は驚いた。
こいつ、また、張り倒されたいのか?
私は全ての自制心を総動員して、なんとか手を出すのを止めたのだ。
「ふんっ!」
私は無視して歩き去ったのだ。
この男が誰か知らないし、こんな軽い男と付き合う気はなかった。
でも、私から無視されても男は諦めてくれなかったのだ。
その男は行きと帰りに必ず私の前に現れるようになった。
何故、男が張り倒した私と付き合ってほしいと言い出すのか?
私には全然理解できなかった。
そんなお昼休みだ。私は食堂でたまたまダリアと一緒になった。
「キャロライン、聞いたわよ。エイブラハム様に言い寄られているんだって」
会うなり、ダリアが話てきた。
「エイブラハムって誰?」
「エイブラハム様よ。この前あなたが張り倒した。オルグレン伯爵家の三男よ」
「ああ、あの男、そういう名前だったのね」
「あなた、知らないの? ハンサムで優しいと女の子達の間でとても有名な方よ。オルグレン伯爵家は名門だし、三男だけど、王太子殿下の覚えもめでたい文官だそうよ。あそこの家は子爵家の称号も持っていたし、ゴードンに比べたらめちゃくちゃ良い話だと思うわ」
ダリアはあの軽い男を推してきたんだけど……
「何言っているのよ、ダリア! 何故、私が張り倒した男から付き合ってほしいって言い寄られなきゃならないのよ? 普通はあり得ないでしょ!」
「それはそうだけど、良いじゃない。言い寄ってくれるんだから」
「何言っているのよ。エイブラハムっていったら遊び人で有名じゃない。例え私が付き合っても、遊ばれて捨てられるのが落ちよ」
私はそう言いきったのだ。
エイブラハムの名は聞いたことがあった。女をとっかえひっかえしている遊び人なのだ。何人の令嬢が泣かされたことか。そんな男と付き合う気なんてさらさらなかった。
「そうか、じゃあ、キャロライン嬢は俺が遊びでなかったら付き合ってくれるんだな」
後ろからいきなり声がして私はぎょっとした。
「え、エイブラハム様」
ダリアは私の後ろを見て、驚いた。
「な、何を言っているのよ。絶対に嫌よ!」
「そうか、遊びでなかったら良いのだな」
私が嫌だと言ったのに、男は聞いていなかった。
男は大きく頷くと、さっさと去って行ったのだ。
「凄いじゃない。キャロライン! 完全にエイブラハム様はあなたに夢中だわ」
「何言っているのよ。あんな軽薄な男絶対に嫌よ」
ダリアの言葉に私ははっきりと拒否したのだ。
その翌朝だ。
私は出勤すると、私の使えているエリザベス王女の近衞騎士隊のダンケル隊長、すなわち、私の上司に呼ばれたのだ。
「キャサリン。喜べ!」
別室に呼ばれて行くなりダンケルは喜色を浮かべて私に話し出した。
「お前に縁談がきたぞ」
「はい?」
私は悪い予感がした。
「いやあ、貴様が軟弱なゴードンに振られた時は、男勝りのお前にはもう婚約したいと思う相手が現れないのではないかととても心配だったのだが……なんと、相手は伯爵家で、王太子殿下の覚えもめでたい男だ。これほど目出度いことはない」
隊長は私に対してとても失礼なことを平然と言ってくれた。
二度と婚約できないってどういう意味よ!
私はそこまで酷く隊長に見られているとは思わなかった。
むっとしてにらみ返すと
「相手はオルグレン伯爵家の三男だ」
「お断りします」
私は間髪入れず拒否したのだ。
「はああああ! 何を言うのだ。キャロライン。もう一度考え直せ。子爵家の嫡男に振られた貴様に、普通はこういうおめでたい話は中々巡って来ないものなのだぞ。お父上もとても心配していらっしゃった。会うだけでも会えば良いだろう」
隊長は私を説得してきたが、
「あんな軽い男はお断りです」
私が断ると、
「まあ、確かにエイブラハムの浮名は聞くが、これは正式な縁談だからな。是非とも考え直して欲しいのだが」
「隊長がなんと言われようと。嫌なものは嫌です。そもそも隊長、二度と私に縁談が来ないと思っていたってどういう事なのですか?」
私が睨み付けると
「いや、それはだな……」
隊長は私の怒りに、まずいことを言ったと気付いたみたいだ。
「どうせ私は魅力のない、気の強い女ですよ! エイブラハムにも男をたてないから振られるんだと既に言われていますし……
しかし、私はあいつを立てるつもりは全っくありません。だから断ってください!」
私は隊長に反論したのだ。
「いや、まあ、すまん。しかし、婚約破棄されたところのお前に縁談が来たのだぞ。ここで会いもせずに断ると二度と縁談も来ないと俺も今必死でお前を説得しているとこなのに! いかず後家で貴様がいつまでも騎士団残っている暗い未来が見えてだな……」
「余計なお世話です!」
バンッ
私は隊長の話の途中で、怒りのあまりテーブルを叩いていた。
お茶の入ったカップが全部ひっくり返っていた。
そのまま、唖然として口を開けた隊長を置いて、私は扉を思いっきり閉めて出ていった。
ダシーーーーン!
衝撃で建物中が揺れたが知ったことでは無かった。
後輩の騎士達、いや、周りの騎士達は全て、その日は私の周りに寄ってこなかった。
その日私は、一日中とても機嫌が悪かったのだ。
146
あなたにおすすめの小説
冤罪で追放された平民書記官が、僻地で出会ったゆるふわ最強魔導士。実は王弟でした
卯崎瑛珠
恋愛
冤罪で僻地送りにされた平民書記官ミリアル。
原因は、騎士団長の横領の揉み消しだった。
左遷先は『人喰い』の噂がある、怪しい王宮魔導士ユーグの屋敷。
だが彼はゆるく見えて、実は王国最強。
「ミリちゃんを泣かせたやつは、絶対許さないよ。ねえミリちゃん、選んで。絞首と斬首、どっち?」
ミリアルはなぜかユーグに溺愛されて、騎士団長にざまぁします。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。
朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。
そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。
だけど、他の生徒は知らないのだ。
スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。
真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。
そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる