4 / 31
食堂で皇子について愚痴っていたらその皇子がやってきました
しおりを挟む
私は二度と会いたくないと思っていたロンバルトが迷宮ツアーに参加するのが決まってとてもショックを受けていた。
せっかく満員で断ろうとしたのに、部長が横から出てきて全部手配してくれたのだ。
本当に最悪だった。
ロンバウトの申し込んだ名前はロン・リューケンと本名のロンバルト・ブリューケンを短縮したなんとも短絡的に作られた偽名だった。こんな偽名で申し込みを受けていいのかと思いつつ、元近衞騎士団長が認めているのだから良いのか?
お前の偽名リーゼ・ブラストは良いのかと言われそうだが、私の偽名はブラストの遠縁で平民だと貴族年鑑にも載せているのだ。最近の貴族年鑑も分厚いのになると貴族の次男三男の息子や娘の平民の分も載せているのよ。私の権力を使えば貴族年鑑に偽名を載せるなんてお茶の子さいさいだった。でも、全てをブラストに任せていたので、元々お父様の指示だったのかもしれないんだけど……
「本当に信じられないわ!」
私はお昼休みに一緒に食事に出たヨハン相手に愚痴っていた。
ヨハンはメールロー男爵家の次男で、私と同い年だった。
ということは学園で同学年だったと思うんだけど、私には記憶がなかった。王国の学園は全部で10クラスもあって、私は保護者の過保護のお陰でお貴族クラスのAクラスだった。いつもは貴族も平民も関係なしのクラス分けなのに、私がいるからと過保護なお父様とお兄様が色々と画策してくれた結果、貴族限定のAクラスだった。最も学園に通っている平民の大半は元貴族の次男三男の子供とか、金持ちの大商会の子供とか、文官の子供とかで本当の意味の平民なんてほとんどいなかったのに。
お陰でAクラスは子爵家以上の貴族の子供達しかいなかった。ヨハンはその中で真ん中のEクラスだったそうだ。1学年四百人も居たら、全員の顔と名前なんて覚えられるはずはない。私は地味なブロンドヘアに黒目と変装していたし……
年は同じなんだけど、私は1年生の時からこの旅行社でアルバイトしていたから、ヨハンの先輩になっていた。まあ、元々図々しいから何年も働いている大ベテランだと間違えていたらしいけど。年が同じだと聞いて驚いていた。
「でも、リーゼさん、あんな軽い男と一緒にツアーに行くなんて大丈夫なんですか?」
未だにヨハンはブツブツ言ってくれるけれど、
「仕方がないでしょ。私も嫌だけど、部長命令だから」
私が愚痴ると、
「俺が部長に言って代わってもらいましょうか?」
ヨハンは悪魔のお誘いをしてくれたけれど、チーフ添乗員は私の尊敬するカルラ先輩だ。20代後半の大ベテランで、この会社の花でもある。とてもきれいな先輩なのだ。今回のツアーは煩いデ・ボック子爵もいるし、結構うるさい貴族関係者も多い。特に帝国の皇子まで参加するとなると私が行くしかないだろう。
「ありがとう、ヨハン。でも、今回は私が行くわ」
私は首を振ったのだ。
「はい、お待ちどう。リーゼちゃんはフライ定食だったね」
レストランの女将さんが定食を持って来た。
「ああ、ありがとう。これ、このフライが食べたかったのよ」
私は早速一口パクリと食べたのだ。
「美味しい!」
私は感激した。
揚げたてのフライなんて普通は王宮では食べられない。どうしても毒味の関係で冷めて出てくるので、熱々のフライなんて街でしか食べられなかった。
特に私が働いている旅行社の裏にあるこのレストラン『ザ・フライ』はその名の通り、フライの揚げ方が絶妙だった。
「はい、お兄さんはエビフライ定食ね」
女将さんがヨハンの分を持って来てくれた。
「リーゼちゃんはついに添乗に行くのかい?」
「そうなのよ、女将さん。やっと部長が許してくれて、カルラ先輩のサブだけど、夢に見た添乗だから本当に楽しみなの」
私は女将さんに語ったのだ。そう、今までは本当に楽しみだったんだけど、ロンバルトが一緒だと思うと本当にやる気が無くなったんだけど……
「その割に楽しそうじゃないね」
「ちょっと、嫌な奴が来ることになったのよね」
私が愚痴ると、
「なんとか言う子爵様かい?」
女将さんが聞いてくれたけれど、
「ううん、あの方は今回はカルラ先輩に任せるから問題はないわ」
私が頭を振ると、
「嫌な、ナンパ野郎がいるんですよ。店頭でいきなりリーゼさんをナンパしてきた奴なんです」
「まあ、リーゼちゃんは人気があるからね。そこのお兄さんも気が気でないね」
「俺は別にそんなことは」
女将さんの声にヨハンがぼそぼそと何か呟いていた。
「まあ、あんたも頑張んなよ」
女将さんがそう言ってヨハンの背を叩いていたが、何を頑張るんだろう?
私がそう思った時だ。
「リーゼさんはそんなに人気があるんですか?」
あろうことかそこにモーリスの声が聞こえたのだ。慌ててそちらを見ると、なんとモーラスがロンバウトを伴っていたんだけど、何しているのよ! 帝国の皇子を連れてこんな場末のレストランにやってこないで!
私は心の中で悲鳴を上げたのだった。
「あらっ、モーリスさんじゃ無いの?」
女将さんが声をかけていた。
えっ、モーリスと女将さんって知り合い?
私は驚いた。
「久しぶりね」
「そうだな。引退したからあまりこちらに来る予定がなくてな」
って近衛騎士団の時からここを利用しているみたいだった。
「リーゼちゃん! 向かい相席で良いかい?」
ここは場末の混む食堂で、昼時は相席も当たり前だった。
当たり前だけど、モーリスはまだしもロンバルトは絶対にいやなのに!
「はい」
私は頷くしか出来なかったのだ。
本当に最悪だった。
***************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
また皇子の登場にリーゼはどうする?
お楽しみに!
せっかく満員で断ろうとしたのに、部長が横から出てきて全部手配してくれたのだ。
本当に最悪だった。
ロンバウトの申し込んだ名前はロン・リューケンと本名のロンバルト・ブリューケンを短縮したなんとも短絡的に作られた偽名だった。こんな偽名で申し込みを受けていいのかと思いつつ、元近衞騎士団長が認めているのだから良いのか?
お前の偽名リーゼ・ブラストは良いのかと言われそうだが、私の偽名はブラストの遠縁で平民だと貴族年鑑にも載せているのだ。最近の貴族年鑑も分厚いのになると貴族の次男三男の息子や娘の平民の分も載せているのよ。私の権力を使えば貴族年鑑に偽名を載せるなんてお茶の子さいさいだった。でも、全てをブラストに任せていたので、元々お父様の指示だったのかもしれないんだけど……
「本当に信じられないわ!」
私はお昼休みに一緒に食事に出たヨハン相手に愚痴っていた。
ヨハンはメールロー男爵家の次男で、私と同い年だった。
ということは学園で同学年だったと思うんだけど、私には記憶がなかった。王国の学園は全部で10クラスもあって、私は保護者の過保護のお陰でお貴族クラスのAクラスだった。いつもは貴族も平民も関係なしのクラス分けなのに、私がいるからと過保護なお父様とお兄様が色々と画策してくれた結果、貴族限定のAクラスだった。最も学園に通っている平民の大半は元貴族の次男三男の子供とか、金持ちの大商会の子供とか、文官の子供とかで本当の意味の平民なんてほとんどいなかったのに。
お陰でAクラスは子爵家以上の貴族の子供達しかいなかった。ヨハンはその中で真ん中のEクラスだったそうだ。1学年四百人も居たら、全員の顔と名前なんて覚えられるはずはない。私は地味なブロンドヘアに黒目と変装していたし……
年は同じなんだけど、私は1年生の時からこの旅行社でアルバイトしていたから、ヨハンの先輩になっていた。まあ、元々図々しいから何年も働いている大ベテランだと間違えていたらしいけど。年が同じだと聞いて驚いていた。
「でも、リーゼさん、あんな軽い男と一緒にツアーに行くなんて大丈夫なんですか?」
未だにヨハンはブツブツ言ってくれるけれど、
「仕方がないでしょ。私も嫌だけど、部長命令だから」
私が愚痴ると、
「俺が部長に言って代わってもらいましょうか?」
ヨハンは悪魔のお誘いをしてくれたけれど、チーフ添乗員は私の尊敬するカルラ先輩だ。20代後半の大ベテランで、この会社の花でもある。とてもきれいな先輩なのだ。今回のツアーは煩いデ・ボック子爵もいるし、結構うるさい貴族関係者も多い。特に帝国の皇子まで参加するとなると私が行くしかないだろう。
「ありがとう、ヨハン。でも、今回は私が行くわ」
私は首を振ったのだ。
「はい、お待ちどう。リーゼちゃんはフライ定食だったね」
レストランの女将さんが定食を持って来た。
「ああ、ありがとう。これ、このフライが食べたかったのよ」
私は早速一口パクリと食べたのだ。
「美味しい!」
私は感激した。
揚げたてのフライなんて普通は王宮では食べられない。どうしても毒味の関係で冷めて出てくるので、熱々のフライなんて街でしか食べられなかった。
特に私が働いている旅行社の裏にあるこのレストラン『ザ・フライ』はその名の通り、フライの揚げ方が絶妙だった。
「はい、お兄さんはエビフライ定食ね」
女将さんがヨハンの分を持って来てくれた。
「リーゼちゃんはついに添乗に行くのかい?」
「そうなのよ、女将さん。やっと部長が許してくれて、カルラ先輩のサブだけど、夢に見た添乗だから本当に楽しみなの」
私は女将さんに語ったのだ。そう、今までは本当に楽しみだったんだけど、ロンバルトが一緒だと思うと本当にやる気が無くなったんだけど……
「その割に楽しそうじゃないね」
「ちょっと、嫌な奴が来ることになったのよね」
私が愚痴ると、
「なんとか言う子爵様かい?」
女将さんが聞いてくれたけれど、
「ううん、あの方は今回はカルラ先輩に任せるから問題はないわ」
私が頭を振ると、
「嫌な、ナンパ野郎がいるんですよ。店頭でいきなりリーゼさんをナンパしてきた奴なんです」
「まあ、リーゼちゃんは人気があるからね。そこのお兄さんも気が気でないね」
「俺は別にそんなことは」
女将さんの声にヨハンがぼそぼそと何か呟いていた。
「まあ、あんたも頑張んなよ」
女将さんがそう言ってヨハンの背を叩いていたが、何を頑張るんだろう?
私がそう思った時だ。
「リーゼさんはそんなに人気があるんですか?」
あろうことかそこにモーリスの声が聞こえたのだ。慌ててそちらを見ると、なんとモーラスがロンバウトを伴っていたんだけど、何しているのよ! 帝国の皇子を連れてこんな場末のレストランにやってこないで!
私は心の中で悲鳴を上げたのだった。
「あらっ、モーリスさんじゃ無いの?」
女将さんが声をかけていた。
えっ、モーリスと女将さんって知り合い?
私は驚いた。
「久しぶりね」
「そうだな。引退したからあまりこちらに来る予定がなくてな」
って近衛騎士団の時からここを利用しているみたいだった。
「リーゼちゃん! 向かい相席で良いかい?」
ここは場末の混む食堂で、昼時は相席も当たり前だった。
当たり前だけど、モーリスはまだしもロンバルトは絶対にいやなのに!
「はい」
私は頷くしか出来なかったのだ。
本当に最悪だった。
***************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
また皇子の登場にリーゼはどうする?
お楽しみに!
166
あなたにおすすめの小説
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる