恋に破れた転生王女はツアコンを目指します

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
14 / 31

観光地で客に抱きつかれてしまいました

しおりを挟む
 ロンバウトのせいで30分遅れてしまった。
 でも、馬車の旅は30分の遅れを取り戻すのはとても大変なのだ。
 馬のスピードを上げて無理させても、馬が先にバテてしまってはどうしようもないし、そうかと言って休憩時間を減らすと馬の疲れが取れなくてそれでバテても駄目だし。それに今日は観光が盛りだくさんで普通にいっても迷宮都市に着くのは18時の予定だったのだ。

 それが30分遅れになると18時半だ。
 ツアーの到着にしては遅い時間になる。前世では格安ツアーは当たり前だったけれど。土産物巡りしてバックマージンを稼いでそこでツアー料金を稼ぐのだ。
 でも、このツアーは高級ツアーで、そもそもこちらの人間は前世の日本人みたいにアクセスしてはいないのだ。普通は17時に着いているはずだった。
 私は出来たら定刻の18時に着きたかったんだけど……

「まあ、リーゼ様。慌ててもどうしようもありません。そういう時ほど遅れるものなんです」
 ベテラン馭者のメイベルさんが経験則でそう言ってくれたんだけど。
「ツアーは私も初めてですが、どうしても領地の往復で、何かの都合で遅くなると更に遅れるもの何のです。そういう時は焦りは禁物です。遅れても良いというその気持ちが大切なのです。焦っては更に失敗しますから」
 懇切丁寧にメイベルさんは話してくれた。
「そうね。最悪19時着も考えましょう」
 私はベテランの考えに頷いたのだ。
 最悪そうなった時のとこを想定して考えておけば良いだろう。
 私は腹をくくった。

 今回のこの時間のガイドはヨハンに任せてある。
 大聖堂から郊外の凱旋門までをお願いしたのだ。
 ヨハンは時たま詰まったが、ちゃんと勉強してきたみたいで、ある程度ガイドできていた。
 私は少しほっとした。
 メイベルさんは遅れそうだと言ってくれたが、少し早めに馬車を進めてくれたみたいで、次の凱旋門には予定より5分早く着いたのだ。さすがベテランだ。このままいけば想定の10分遅れくらいで着けそうだ。私は少し明るくなった。


 街道沿いに聳え立っている凱旋門は10階建ての高さで、上まで階段で上がるのだ。
 これがまた大変だった。

「では皆様。頑張っていきましょう」
 先頭をここはヨハンが歩いてくれた。
 その後を若手の女性陣が登っていく。護衛は馬車にビートが残り、残りの二人は適当に付いてくれた。

「ちょっとロン様。お待ちください」
 さっさと登ろうとしたロンバウトをエーディットが追いかけていった。
 皆、続々と登っていく。

「では俺もいこう」
 デボック子爵が一番最後の私に微笑みかけたのだけど……
 デ・ボック子爵は当然留守番すると思ったのに、歩き出したのだ。
 大丈夫だろうか?
 私はその巨体を見て危惧したのだが、その危惧はすぐに現実のものとなった。

「はあはあ」
 デ・ボック子爵の息が2階層もいかないうちに上ってきたのだ。
「大丈夫ですか?」
 私は後ろから声をかける。
「まだ大丈夫だが、少し休ませてくれ」
 子爵はそう言うと階段に座り込んでくれた。

 先を急いでいるが、私はここはじっくりと待つことにした。
 デ・ボックは中々立上がらなかった。
「そろそろ行きませんか」
 少ししていい加減に焦りだした私はデ・ボック子爵を促したのだ。

「そうだな。リーゼ、じゃあ、俺を立たせてくれないか」
「判りました」
 私は差し出されたデ・ボック子爵の手を掴んで引っ張って立たせたのだ。
 その瞬間だ。
 私はデ・ボックに手を引かれたのだ。
「えっ?」
 次に気付いた時には私はデ・ボックに抱きしめられていた。
 私は一瞬何が起こったか理解できなかった。
「な、何をするんですか!」
「騒ぐな。騒ぐと二度と貴様の所の旅行会社を使わないぞ」
 デ・ボックが私を脅してくれた。
 こいつは何を言ってくれるのだ?
 私は混乱した。

「貴様の不慣れなところを俺がフォローしてやろうというのだ。今日、俺の部屋に来い。じっくりと可愛がってやるぞ」
 私はさあああああっと怖気が走った。こいつ何を言ってくれるのだ?
 私はデ・ボックを突き放そうとした。
「良いのか? そんなことをして! 添乗に不慣れな上に上顧客を一人失っても」
 耳元でデ・ボックに囁かれて私は固まってしまった。

 私は恋愛を止めて仕事に生きようとしたのだ。このガマガエルを突き飛ばすのはいつでも出来る。でも、ここで顧客を失ったら会社にとって損失だ。それは私のプライドが許さなかった。カルラ先輩なら、もっとうまくやるのではないか?
 一瞬どう反応するか迷ってしまった。
 その時だ。

「リーゼさん!」
 上の方からロンバウトの声が聞こえたのだ。
 ギクッとしたデ・ボックの腕の束縛が緩んだ隙に、
「ロンさん!」
 私は大声を上げて、デ・ボックの横を駆け上ったのだ。

 私はデ・ボックに油断して自分が抱きつかれたのが許せなかった。
 カルラ先輩ならもっとうまくやっていたはずだ。元々気をつけるように散々カルラ先輩からは言われていたのだ。それを油断してしまった私が悪かった。少し目が潤んでしまった。

「どうした? リーゼさん?」
 心配そうにロンバウトが私に聞いてきた。

「いえ、何でもないです」
 私は目をこすって何でもないようにロンバウトに笑いかけたのだ。

 その私の姿を見て横にいたモーリスがさっと顔色を変えた。
「えっ、モーリスさん?」
「すみません。少し忘れ物をしました」
 そう言って笑うとモーリスはゆっくりと階段を下って行ったのだ。

「さあ、リーゼさん。上まであと少しだ」
 そう言うとロンバウトが私の手を掴んで歩き出してくれたのだ。
 デ・ボックに触られた時のように不快感は何故かなかった。

「ギャーーーー」
 下の方でデ・ボックと思われるものの悲鳴が聞こえたような気がしたけど、気のせいだろうと私は無視することにしたのだ。
*********************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
セクハラ男に鉄槌が下された?
続きは今夜の予定です
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

処理中です...