長く白い道が続くこの場所で

りっこ

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第一章

相談

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「今日も一日お疲れさん!」

上司の梅村さんはいつものように笑顔でそう言ってきた。

「梅村さん!俺!相談したいことがあるんです!!少し時間いいっすか?」

女性の上司の中で1番頼れる梅村さんは2児の母でシングルマザー。といっても子供はもう中学生で手がかからないという。

そんな梅村さんは俺の良き相談相手である。

「おー!なんだなんだ!家に来てご飯でも食べながら話そう!」

ということで今日は梅村さんの家で話を聞いてもらうことになった。

なんだかんだ梅村さんの家でご飯食べるのも3回目か…

よくOKしてくれたよな…

話し相手になるなら誰でもいいのかよ…

「夜鍋にするから材料買いに行くの手伝って!」

「鍋っすか!やった!なんなら俺出しますよ!」

「あらいいの?ならお願いしようかな!」

こんな話をしていると梅村さんと付き合ったら楽しいんだろうな、そう思うこともよくあった。

それこそはじめの方は好きになりそうにもなっていたのが事実である。


その事を話したこともあったが、その時彼女は俺にこう話した。

『確かに桔平は良い奴だよ、でもね、私はなんとなく感じる。あんたそろそろいい人に出会える。だからそれまでしっかり待ちな。相談ならいくらでも乗るから。その時までしっかり待つんだよ、分かったね?』

っと。

その時の俺にはイマイチ分からなかった。

“出会い”

地元から出てきてすっかり都会にもなれた。

ただこの街で恋人を探す気にはなれなかった。

1週間くらい休みとって帰るか…

帰ったところで出会いがあるとは思えないけど、少しだけかけてみるのもありだろう。

「ところで相談って何?」

「…前話した事なんですけど、さっき決めたんですけど1週間くらい休み取ろうと思って。」

「とうとう人探す気になった?桔平も成長したね!!それで、見つかりそうな気はするの?」

「それが全くないんです!!!」

地元と言っても働く場所も何も無い、所謂“田舎”だ。

大体が小学校から高校まで同じだった連中ばかりで、そいつらと付き合えるとも思えない。

周りから見れば出会いの場が全くない地元に帰るのは、ただの帰省する恋人探しをしている大馬鹿者だろう。

「桔平の地元って北海道だったっけ?」

「北海道ですよ」

「ちょうど北海道のあなたの地元の近くに知ってるところがあるんだけど、そこの木の近くに行ってごらん。とっても落ち着くらしいから。もしかしたら出会い、あるかもよ?」

話には聞いていたあの山奥の大木。

ちょうど春で桜が咲き始める時期でもあった。

でも、出会えるような人もいない場所で、人もなかなか来ない山奥で出会えるとは到底考えられない。

観光地ならまだわかる。

ただの田舎だ。人気というわけじゃない。

そこの場所を知っている人だけが知る話なのだ。

だとすれば梅村さんは本当に凄い人なのかもしれない。

「とりあえず行ってみな!わかった?」

「わかりました!!ってことで食べていいですかね?お腹すきました!」

「そうだね!よし!いただきます!!」


その日の帰り、地元の知人からメールが届いた。

“桔平久しぶり!七瀬だよ!
今度みんなで飲み会したいなって思うんだけど桔平もどう?なかなかこっちには来れないかもしれないけど、もし休み取れたりしたら来ない?日にちは4月5日で、メンバーは、達也、菜々、美咲、幸樹、紗知、快斗、奈緒、耶絵、立海、圭輔、七瀬なんだけど、もし来れそうなら連絡ちょうだい!”

飲み会…行ってもいいかな…みんなにも会いてぇしな…

「行ってもいいかなぁ…!!」

“ちょうど一週間休みとってそっち帰ろうと思ってたんだよね。だから俺も参加で!!!”

後戻り出来なくなった…

その次の日にでも言ってた場所行くかなぁ。

一番いいのは飲み会で久しぶりに話して、誰かとくっつくのがいいんだろうけど、名前を聞いた限りだと…遠慮しておこう…という感じだった。

こんなこと言ってるからいつまで経っても彼女出来ねぇのかな…

好きになるのも人一倍遅いし、行動に移すのもド下手くそな俺を好きになってくれる人がいるのだろうか。いや、いないだろう。

恋愛に関して全く自信の無い奴がよく恋愛相談を3回もしたもんだ。

相談してアドバイスをもらってもイマイチピンと来ない時点で、アドバイスが身になってるかと言ったら今のところなっていない。

梅村さん。ごめんなさい。

そんなことを考えていたら家を通り過ぎて最寄りの駅に着いてしまっていた。

午後10時。

早く家に帰りたい。

その家に彼女がいれば…

いつの間にか彼女が欲しい男の思考回路になっていた。

実際はそうでもないのだろうけど。

とりあえず家に帰り、風呂に入って寝ることにした。




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