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罪科の現出
幕間
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――彼の日、彼が差し出した手が、彼の夜、橙と蒼の光が入り交じる中で、彼女が浮かべた暖かく優しい微笑みが。今でも、鮮明に甦る――
樹間から差し込む日射しが鋭い。季節はもう、夏を迎えていた。
山の夏は涼しく、比較的過ごしやすいものである。が、ここは高度がそれほど高くないためか蒸し暑く、彼女は汗だくになりながら進んでいた。
『防壁』は消滅していた。銀髪の男とロバート――この名を思い浮かべたレベッカは、苦々しいものが込み上げてくるのを感じた――が話していたところによるとリネス王家の村も襲撃されたらしいから、恐らくその影響だろう。マリーの予感は、不幸にして的中してしまったのだ。
攻撃魔法を得意とするダルクトに対して、リネスの魔法は守りの魔法。もしかしたら、辛うじて命を長らえた者もいるかもしれないが……。
突然、肩の上の鳥が鳴き声を発した。
「如何した?ホースケ」
呼び掛けつつ、何の気なしに行く手に目をやる。すると、遠く木々の切れ間に、建物が見えた。
(彼が……)
奇妙な感慨が、胸に突き上げてくる。
彼女のかけがえのない友の故郷。そしてまた、かれらに出会うまでは攻め滅ぼさんとしていた場所。それは、もう目と鼻の先であった。
樹間から差し込む日射しが鋭い。季節はもう、夏を迎えていた。
山の夏は涼しく、比較的過ごしやすいものである。が、ここは高度がそれほど高くないためか蒸し暑く、彼女は汗だくになりながら進んでいた。
『防壁』は消滅していた。銀髪の男とロバート――この名を思い浮かべたレベッカは、苦々しいものが込み上げてくるのを感じた――が話していたところによるとリネス王家の村も襲撃されたらしいから、恐らくその影響だろう。マリーの予感は、不幸にして的中してしまったのだ。
攻撃魔法を得意とするダルクトに対して、リネスの魔法は守りの魔法。もしかしたら、辛うじて命を長らえた者もいるかもしれないが……。
突然、肩の上の鳥が鳴き声を発した。
「如何した?ホースケ」
呼び掛けつつ、何の気なしに行く手に目をやる。すると、遠く木々の切れ間に、建物が見えた。
(彼が……)
奇妙な感慨が、胸に突き上げてくる。
彼女のかけがえのない友の故郷。そしてまた、かれらに出会うまでは攻め滅ぼさんとしていた場所。それは、もう目と鼻の先であった。
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