新・風の勇者伝説

彼方

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第二部 四章 各々の想い

ロイズとナディン

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 バラティア王国。そこは薔薇をシンボルとした美を愛する国。
 王国の第一王女であるロイズ・ヴェルセイユは顔を「嫌です!」と憤慨していた。

「……ロイズ、今、何と言った?」

「嫌です! と言いました」

 国王陛下、つまり実父が困った表情になるのも構わずまた叫ぶ。
 事の始まりは数分前。玉座の間に呼ばれたロイズに対して、玉座に座る父が口に出した提案。それは武術の鍛錬を始めるにあたり、誰に師事するかという内容。ロイズとしては誰に教わってもいいのだが扱う武器が問題なのだ。

 師事を勧められたのはロイズの隣に立つ青年。
 着物という珍しい衣類を着た彼は槍を背負っている。

「すまんなナディン、我が娘が失礼を」

 ナディンと呼ばれた彼は特に驚く様子なく佇んでいる。
 頭を押さえた父がため息交じりに告げた言葉にも「いえ」と冷静に返す。

「なぜだロイズ、理由を言え。お前は散々武術を習いたいと言っていたではないか。知らないかもしれないがお前の隣にいる男、ナディン・クリオウネは私の親友にして国内一の強者。教えを請う相手としてこれ以上の相手はいないのだぞ」

「……だって、この人が使うのは槍でしょう。私は剣術を習いたいのです!」

 今年六歳となったロイズが剣にこだわるのには理由がある。
 約三百年前に実在した風の勇者に強い憧れを抱き、主力武器であった長剣を振るいたかったのだ。活躍を絵本で後世に語り継がれている勇者のようになるのが夢だった。悪を挫き、善を通す勇者のような存在になりたいのである。

「この人には教わりません! 城の兵士に剣術を教えてもらいます!」

「普段我が儘を言わないくせにこういう時だけ言いおって。兵士達は仕事で忙しいのだ。子供に剣を教える暇はないし、教えるとしたら今より給料を上げなければいけない。それに一人娘を任せるにしては些か実力不足」

「この人はどうなのです。仕事はしているのでしょう」

「ナディンなら大丈夫だ。お前の婿にしても問題ないぞ」

「嫌です」

 婿にするのは冗談だと思うが、未だ槍使いに槍を習うのは納得がいかない。
 だいたい父は評価の基準が高いのだ。城に勤める兵士達だって犯罪者や魔物に難なく対処出来る実力者。ナディンが強いのは分かっているが教えを請うなら兵士で十分。しかし給料やら勤務時間やら、ロイズがまだ真っ当な考えを出せない領域の言葉を出されては反論も難しい。

「とにかく、教わるなら剣術がいいんです! 槍術には興味ありません!」

「……むうう困ったな。ナディン、お前は剣術とか教えられたか?」

「一番得意な武器は槍だが剣も使える。弓も鞭も銃も、大抵の武器は扱える」

「おお、ならやはりお前で問題ないな。ロイズも文句ないだろう」

 確かに剣術も使えるなら文句はない。ただ、ナディンの槍術は国内でも有名だが、剣術でどれくらいの力量になるのかは不明。せめてバラティアの兵士と同等以上ならいいなとロイズは思う。

「……ええ」

「よし、では任せたぞナディン。言っておくがいくらお前でもロイズに怪我させたら打ち首な。……と言いたいところだがな、親友だし多少の怪我なら許そう。お前なら大丈夫だと思うが大怪我させたら本当に打ち首にするかもしれん。心に留めておけ」

「怖いな。注意しよう」

 昔から過保護な父の言葉にナディンは目を瞑り首を振る。
 完全に脅しだが彼の口元はうっすら笑みが浮かんでいる。
 親友と言った通り付き合いが長いから笑えるのだろう。普通は笑えない。

 そんなやり取りがあってロイズの剣術修行が始まった。
 始めは基礎中の基礎で筋力トレーニングと型の模倣。

 元々剣を振りたくてトレーニングしていたため最初はあまりキツくない。
 剣術の型を覚えるのも、体を鍛えるのも夢中になって取り組んだ。
 修行時間は一日一時間と決められているが足りないくらいだ。

 三十日もすれば模擬戦を含めた修行に変化する。
 疑っていたナディンの剣士としての実力は想像以上に高かった。

 城の兵士と同等以上ならいいなんて、そんなことを思っていた自分がバカらしくなる。彼の実力は兵士長すら凌ぐと六歳の自分でも理解出来た。さすがに模擬戦で本気は出さないが、一度本気の動きを見たいと言うと見せてくれたのだ。……彼の本気、目では追えないレベルの動きを。
 実力を理解してからは彼に本気で憧れて尊敬の念を抱いている。

「ロイズ、お前は何故なにゆえ剣を振るう?」

「この国の民と歴史を守るためです」

「風の勇者に憧れていたからではないのか?」

「……まだ憧れはありますしきっかけはそれでした。ですが私は王女。次期女王として国を守りたいのです」

 風の勇者への憧れは消えない。どんなに憧れても勇者にはなれないがロイズ自身が悪を倒し、人々を守るのが一番大事なこと。王女として、次期女王として守るべきものを守る。勇者の本質は人助けにあると思うので心だけは勇者のつもりで、毎日毎日剣を振っている。

「気持ちは分かるぞ。俺も子供の時は風の勇者に憧れていた。いや、俺だけではなく大半の奴が勇者に憧れていたな。毎日体に風の秘術の紋章があるかどうか確認していたものだ。今にして思えば夢を見すぎていたな。秘術の紋章は生まれつき体に刻まれているというのに」

「ふふっ、師も子供だったのですね」

「恥ずかしい話だ。国王陛下には内緒だぞ。次会った時に笑われてしまう」

「では、私と師の秘密ですね」

 長期間の修行でロイズとナディンは親子のように仲良くなった。
 しかしナディンはギルドのSランクに所属する人類最高峰の実力者。
 バラティア王国のみに留まれる時間には限りがあり、彼が国に留まれるのはバラティア王国領の魔物討伐依頼が終わるまでである。後僅かで依頼を達成してしまうため彼はバラティアを去ってしまう。そうなってしまえば、ロイズの修行に付き合ってくれる頻度が激減するのは間違いない。

「師よ、そろそろバラティアを去ってしまうのでしょうか」

「俺にも仕事の都合がある。国王陛下からギルドへ依頼された魔物討伐も直終わる。ギルドは常に人手不足だし俺も次の仕事場所に向かう。安心しろ、またバラティアに寄った時は稽古をつけてやるとも」

「……寂しいです」

 既にロイズにとってナディンは日常の一部。
 いつか去るのは承知していたが別れが近付くと一気に寂しくなる。

「俺もだ」

 俯くロイズの頭に大きく硬い手が置かれた。

「だからロイズ、もし俺が去っても鍛錬を止めるな。再会した時に強くなったお前を見せてくれ。弟子の成長を見守るのもいいが、俺のいない間に成長した弟子に驚かされるのも悪くない。きっと俺は喜ぶ」

「では師が国を出てから戻った時、私は師より強くなります!」

「こら、それは調子に乗りすぎだぞ」

 彼に頭を軽く叩かれたロイズは笑顔になる。

「……そうだ。どうせなら魔物討伐を見学でもするか?」

「良いのですか!? 是非お供したいです!」

「慌てるな。国王陛下から許可を貰えればの話だぞ」

 魔物討伐は危険な仕事である。
 危険だから国は基本兵士に戦わせるが、対処しきれないと傭兵やギルドなどの専門家に任せる。つまりギルドの人間が討伐するのは大きく分けて、数の多い魔物か強大な力を持つ魔物の二種類だという。ロイズの修行を見てくれている間にナディンが受けた依頼は両方だ。

 魔物との実践は非常に有意義なものとなるだろう。
 危険ゆえ過保護な父が許すとは思えないが行きたい気持ちが強い。

 翌日。ダメだろうなと半ば諦めていたロイズに吉報が入る。
 意外なことに父は許してくれたのだ。ナディンに絶対的な信頼を寄せているのは分かっていたが想像以上。父は「大怪我させたら許さないからな」と告げたものの、絶対に大怪我させないと確信しているようだった。


 * * *


 バラティア王国領土内にある町の一つ、ベジリータ。
 カラフルな建築物が彩る美しい町並みを見てロイズは目を輝かせる。

「わああ……とても綺麗。ここがベジリータ」

「何だ、来るのは初めてだったのか。それなら新鮮に映るだろう」

 青い長髪を一束に纏めた、着物姿のナディンが歩くので背中を追う。
 過保護な父のせいでロイズは今まで王都から出たことがない。
 ベジリータで有名な野菜はよく食べているし、その野菜の生産地に来られたというのもあって非常に嬉しい。これもナディンが仕事に同行しないかと提案してくれたお陰。魔物討伐の見学も合わせて一石二鳥だ。

「師。今日討伐予定の魔物はどんな魔物なのですか?」

「サンドラーワーム。知っているか?」

「……いえ、魔物にはあまり詳しくないもので。私が強ければどんな魔物だろうと討伐出来ますし、名前や特徴などを勉強したことは一度もありません。もしや、私も魔物図鑑を読まなければならないのでしょうか」

「魔物にも生態がある。弱点がある。そういったものを知れば戦いやすくなるし、こちらが実力不足でも逃げ切ることが出来るかもしれない。今すぐ学ぶ必要はないが、得た方がいい知識だ。バラティアでは兵士にもそういった知識を学ばせていると聞く」

 極論だが自分が強ければ、他者の追随を許さないほど強くなれば、魔物の生態や弱点など知らずとも勝てる。風の勇者だって誰よりも強かったと絵本に書いてあった。ひらすらロイズが強くなれば勇者のように誰もを守れる人間になれると信じている。

「話を戻そう。今回討伐依頼を受けているのはサンドラーワーム三体。このベジリータ周辺に現れるという情報だが、人々に聞き回って位置を絞った方がいいだろう。一先ず宿を取り、今日中に情報を集め、明日の早朝に討伐へと向かうぞ」

 ナディンの決定に文句などあるはずがなくロイズは「はい!」と元気よく返事する。
 彼の宣言通り宿泊施設の部屋を予約して、町人に聞き込みを始める。
 畑が荒らされるという情報はいくつもあったが肝心の魔物の居場所は不明。

 困り顔で話す人々には同情するがロイズは内心うんざりしていた。ロイズ達が知りたいのは被害状況ではなく、サンドラーワームの居場所なのだ。どうも噛み合わない町人達に苛々が募る。
 こう思ってはいけないのはロイズも分かっているが……退屈。つまらない。早くナディンの戦闘を見たい。あわよくば自分も戦いたい。そんなことばかり思ってしまう。

「……退屈か?」

 眉間にシワを寄せて歩いていたせいかナディンに気持ちを悟られた。
 尊敬する師に嫌われたくない一心で「いえ、退屈ではありません」と嘘を吐く。

「取り繕わなくていい。大人になれば嘘も日常に混ざるだろうが、俺には嘘を吐くな。取り繕う必要はない。それとも俺は、お前が全てを正直に話せるほどの男ではないか? まだまだ精進が足りないか?」

 ずるい言い方だ。ロイズは師を尊敬しているし誰よりも信頼している。正直に話せと言われたら話さざるをえない。

「……いえ、申し訳ありません。聞き込みは退屈です。私は早く師の戦いを見たい」

「そうか、まあ焦るな。どれ、お前の大好きな甘い飴でも買ってやろう」

「子供扱いしないでください。……でも、ありがとうございます」

 ナディンは近くにあった菓子売り屋台に寄り、飴を買おうとしている。
 甘い物が好きだと修行の合間に話した時があった。それを憶えてくれていたことがロイズは嬉しくて頬を赤く染めた。

 近くの菓子売り店から彼が帰って来るのを待っていると、一人の少年が接近してくるのに気付く。現在六歳のロイズと身長は同じくらいなので歳も近いだろう。そんな少年が明らかにわざと肩をぶつけてきたので咄嗟に腕を掴む。

「待て。人にぶつかっておいて謝りもしないのか」

「……んだよ。その高そうな服、お前金持ちの子供だろ。俺は貴族とか王族とか金持ちが大っ嫌いなんだ。知ってんだぞ、俺達から金を巻き上げて好き放題使ってんだろ。貧乏でもお構いなしに金を巻き上げるんだろ」

「税金のことか? 貴族や王族への偏見だな。私はお父様を見ているから分かる。お父様はいつも国民のことを考え、国をもっと良い場所にしようとしている。集めた税金はちゃんと有効活用しているさ」

「じゃあ俺達から巻き上げた金で何してんだよ」

 ロイズは「それは……」と言葉に詰まる。
 少年の身なりから察するに貧しい家庭であり、税金を徴収することに不満を持っているのだろう。不満を取り除くために説明してやりたいが説明出来ない。国のため、人のため、集まった税金を使っているのは分かる。しかし自分の父や貴族が税金を何に使っているのか具体的には答えられない。ロイズは知らないのだ。まだ幼く勉強中の身であり、政治に参加したこともないから分からない。

「ほら、やましいことがあるから言えないんだ。お前は知らねえかもしれねえけどさ、今この町じゃ魔物が畑を荒らしてんだ。他人から金を奪うくせにお前達は俺達を守ってくれねえじゃんか! だから金持ちは嫌いだ、大っ嫌いだ!」

「私は……私は貴様等を助けに来たんだぞ!」

「お前なんかに何が出来んだよ。助けるってんなら早くあの魔物を倒せよ!」

 酷く腹が立つ。ロイズ達は畑を荒らされて困っている者達を助けようとしているのに、悪さをする魔物を勇者のように倒そうとしているのに、少年の態度は邪魔者に対するものと同じ。元から苛々が募っていたのもあり、少年の腕を掴む手に強い力が入ってしまう。

「うるさい! 助けてもらいたいなら相応の態度があるだろう!」

「いって、いてえええええええ! ふざけんなこのブスゴリラ!」

 少年に突き飛ばされたせいで尻餅をつく。ただし腕は掴んだままなので少年もバランスを崩して、少年がロイズを押し倒したような構図になった。距離が急に詰まった男女はドキドキするかもしれないがそんなものは一切ない。
 ロイズは「どけ!」と少年を突き飛ばして尻餅をつかせる。

「――何をしているロイズ」

 二人の横にナディンが立っていた。手には飴玉が多く入った袋を持っている。

「師よ、こいつが私にぶつかってきたのです。何やら言いがかりもつけてきましたし、助けを求める人間として態度が悪い」

「そうか。しかしお前が攻撃するのは筋が通らない、分かるか? 助けるからといって横暴な態度や暴力を振るってはいけない。お前はもっと広い心を持つべきだな。そこの少年も悪いが、今回はお前の対応も悪かったと分かれ」

 ナディンが来たおかげでロイズは冷静さを取り戻す。
 ロイズにも悪い部分はあった。いくら大嫌いと言われても、少年の言動に苛ついても突き飛ばす必要はなかった。先に攻撃したのが相手でもやり返す必要はない。

 民を守りたいロイズが民を傷付けるなど本末転倒。
 つい怒りで反撃してしまったのは心の弱さと狭さの証明。
 己の未熟さを反省したロイズは歯を食いしばる。

「ロイズ、少年、互いに怪我はないか?」

「……私は大丈夫です」

「ふん、別に平気だよ」

 立ち上がったロイズ達は服に付いた汚れを叩いて落とす。

「さっき助けるとか言ってたけど、おっさんは魔物とか倒してくれんの?」

「俺はそれが仕事だ。魔物について詳しく知っているなら話してくれないか」

 微かな期待を持つ少年の目がナディンに向けられた。
 彼は魔物について説明するがほとんどは他の町人から聞いたのと同じ情報。しかし、昨日から強生命タマネギの畑を荒らし始めたという新情報が出た。サンドラーワームの住処は不明だが頻繁に出没する場所が分かったのだ。

「ふむ、ありがとう少年。参考になったよ」

「んじゃな。俺はもう帰るから」

「待て少年」

 早々に帰ろうとした少年の肩をナディンが掴む。
 肩を掴まれた少年は表情を強張らせており、顔中から発汗している。

「な、何だよ。帰るんだから離せよ」

「帰るのは構わないし、情報には感謝しているが犯罪を見逃すわけにはいかん。財布は返してやってくれ。返せば窃盗には目を瞑ろう」

 顔を逸らした少年は渋々といった様子で花柄の財布を出す。
 ボロボロなズボンのポケットから出された財布は間違いなくロイズのもの。

「ああ私の財布! 貴様まさか私から盗んだのか!」

「少年、なぜこんなことをした?」

 ナディンは少年の肩から手を放して質問する。
 理由など気にする理由がロイズには分からない。

 窃盗は犯罪だ。罪を犯した理由を聞いたところで犯罪者は犯罪者。法によって罰せられなければならない存在。
 ロイズは少年を酷く軽蔑したし、今すぐにでも兵士へと突き出したい。
 ただナディンには考えがあると信じて罵倒やらを我慢している。

「金がないんだ。父ちゃんは魔物に襲われて死んだし、母ちゃんは体調崩して働けねえ。俺が働こうにも実家の畑は荒らされて一人じゃどうにもならねえ。今月は大丈夫だったけど、貴族やら王族やらに渡す金が来月は払えねえ。まともな生活するにはもう、金目の物盗むしか」

「……そんな理由が」

 可哀想、とロイズは思ってしまった。
 相手は自分の財布を盗んだ犯罪者。法により裁かれるべき存在だが庇いたい気持ちを持ってしまう。仮に窃盗を働いた理由が高額な買い物をしたいとかなら同情の余地はない。同情してしまった原因は少年が金に困り、他者から奪う意外に選択肢が存在しなかったからである。

「ロイズ、彼は悪人か? 裁くべきか?」

 理由を聞いてしまうと本当に悪いのは誰なのか分からなくなる。
 財布を盗んだ少年か。
 貧しい少年の家庭から税金を取る国王か。
 農家が働くために必要な畑を荒らした魔物か。
 何者が罪を持つのかロイズには正解が出せない。

「……いえ。私は彼を、罪人としたくありません」

「なぜ?」

「自分でもよく分かりません。ただ、彼を犯罪者とするのは気分が悪いです」

 ロイズの答えを聞いたナディンは静かに笑う。

「その考えを忘れるな。その考えはお前を正しい道へと導く」

「なあ、俺もう帰っていいか?」

「謝りもせず帰るのか少年。己が何をしたか憶えているだろうに」

 少年は「うぐっ」と申し訳なさそうな顔をしてロイズと向き合う。
 何度か目を逸らしたまま黙っていたが、十秒程して口を開いた。

「……その、悪かったよ。酷いこと言ったのと財布を盗んだのは謝る。ごめん」

「私にも非はあった。こちらも謝ろう。魔物は必ず討伐するから安心してくれ」

 ロイズと少年は互いに頭を下げて謝罪し合った。
 彼は「うん。魔物の件、任せたぞ」と言って去って行く。

 良い出会いではなかったが彼との時間は有意義なものになった。
 彼への悪印象が若干薄れたロイズは、彼のためにも魔物を早く討伐しなければと強く思う。

「師よ、早速件の畑に参りましょう。ベジリータに平和を取り戻さなければ」

「……いや、サンドラーワームを討伐するのは明日の早朝だ。予定に変更はない」

「え、なぜですか!? 一刻も早く魔物の脅威から解放した方がいいのでは!?」

 気合いも入って高揚するロイズに対してナディンは冷めている。

「宿に行くぞ。明日の出発は早いからな、今日は早く寝た方がいい」

 そう言って彼は予約している宿に向かって歩き出した。
 ロイズの理想とする師なら、困っている者を助けるために速攻で魔物討伐を果たしてくれると思い込んでいた。今まで見てきたのは理想の彼であり、現実の彼ではなかったのかとショックを受ける。勝手に理想を押し付けていたと言われればそれまでだが、ロイズとしては裏切られたという気持ちが強い。

 尊敬していた師が「どうした、早く来い」と言うのでロイズも歩き出す。
 無言で彼の背中を追いかけて一先ずは宿へと向かった。

 宿へ辿り着いてからロイズはナディンと同じ部屋で休む。
 口数が少ないのを訝しまれたが、疲れが溜まっていると勘違いしてくれた。
 食事を取り、お湯に浸かり、ベッドで横になる。一連の流れであっという間に夜となり、ナディンが寝息を立て始めるのをロイズはひたすら待った。彼が寝てしまえばロイズの行動を阻む物は誰もいない。

 町で会った少年の話を聞いて、ロイズは一刻も早く魔物を討伐したかった。
 尊敬していた師が今日行かないというのなら自分が行けばいい。
 自分がサンドラーワームを討伐すればいい。
 ベッドから床に下りたロイズはナディンの傍に近寄る。

「……申し訳ありません師よ。ですが、これも民のため。被害を最小限にするために私が今から魔物を討ちます。あの少年のためにも、他の町人のためにも、今日中に討っておかねば私の心が落ち着きません」

 真剣を腰に下げたロイズは力強い目になって部屋を出た。
 初めて師の言葉を無視したことは悔いるが、自分の気持ちを騙した方が悔いてしまう。早朝行って被害が増えていたら、強生命タマネギの畑から移動していたらという不安を打ち消すためにも、今すぐ行って仕留めようと強く思う。


 *


 ベジリータ付近にある強生命タマネギの畑へとロイズはやって来た。
 周囲に他の畑はないが、それは強生命タマネギの特性が理由。実は強生命タマネギは通常の野菜より大地から生命力を吸って成長するため、他の作物の畑が傍にあったらそちらが育たなくなってしまう。ゆえに他の畑から離れた場所に畑を作っている。
 
 町で会った少年の情報では、強生命タマネギの畑に魔物が出没するらしいが見つからない。夜で暗いとはいえ月光があるので見逃すことはない。青白い月光のおかげで暗くても畑がよく見える。少年の情報通り荒らされており、無惨にもボロボロのタマネギが転がっていた。

「出て来い! 出て来い魔物!」

 周囲を警戒しながら出現を待っていると地面が揺れた。
 大きな振動で体勢が崩れるが何とか倒れず立ったままでいられている。
 いったい何の揺れだったのか、そう考えていると今度は地面が爆発した。
 大量の小さな土塊が四方八方へと飛び散った。
 そして――現れた。

 体長三十メートルはある砂色の巨大ミミズ。
 先端にある口は大きく開かれており、透明な涎がだらだら零れている。
 今現れた巨大ミミズこそサンドラーワームという魔物だ。
 姿の特徴はナディンに聞いていたので間違いない。

「現れたな、サンドラーワーム」

 ロイズは鋼の剣を鞘から抜いて構える。
 魔物討伐の同行にあたって、万が一のためにとナディンが贈ってくれたものだ。初めて持つ金属製の剣は木剣より遥かに重いが、試し振りしてみれば難なく振るえた。六歳とはいえ鍛えに鍛えた体だ、十分戦える。

「私が民達を守ってみせる。行くぞ!」

 勢いよく駆けてサンドラーワームとの距離を詰める。
 顔だろう先端部へと剣を振るい、僅かな傷を付ける。傷口から黒に近い緑色の血液が流れるのを目にして、自分でも倒せると思ったロイズは連続で斬撃を放つ。小さな傷を多く付けると、いきなり先端部で体当たりしてきた。

 ロイズの年相応に小さな体は軽々と吹き飛ぶ。
 悲鳴を上げて転がったロイズはつい剣を放してしまう。

「う、うう……まずい、剣を、回収しなくては」

 口から零れる赤い血を手で拭って、遠くに吹っ飛んだ剣を拾いに行く。
 痛みのせいで全速力では走れないため回収に十秒もかかった。その十秒で、貴重な時間で、サンドラーワームは次の攻撃のために上半身を大きく振りかぶっていた。十五メートルもある上半身を鞭のように扱い、ロイズも畑も薙ぎ払おうと上半身を振るう。

 咄嗟の判断でロイズは真上に跳んだ。
 高く、高く、サンドラーワームの上まで跳んで斬撃を放つ。
 敵の攻撃の勢いを利用して深く肉を切り裂く……つもりだった。

 剣がサンドラーワームの体に食い込んだところまではいい。しかし、そのまま切り裂こうとしたが思いのほか頑丈であった。途中で止まった剣は跳ね返されて、ロイズは横に高速回転しながら地面に落下する。回転していたおかげで意図せず受け身が取れたが、それでも衝撃を殺しきれずに骨が折れた。

 無様にも転がったロイズは立てない。
 体が言うことを聞いてくれない。
 喉から血が上ってきて吐き出した時、自分の死を悟る。

 ロイズは戦闘前まで敗北など微塵も考えていなかった。
 ナディンとの鍛錬を続け、強くなっていくのを実感している。兵士と模擬戦をして勝ったこともある。周囲から天才と言われたこともある。憧れの風の勇者のようになれると、魔物などには負けないと本気で思っていた。しかし今日――現実を知った。

「……私は……弱い。……誰も、守れない」

 悔しさで涙を流しながら、震える声で現状を呟く。
 少年に偉そうなことを言っておいて自分は無様に地に伏せているだけ。所詮六歳児の自分では魔物一体すら討てない。こんなことになるなら大人しく早朝まで待ち、ナディンと共に来ればよかったと後悔する。

「――ロイズうううううううう!」

 焦りを含む叫び声が轟いた。
 初めて聞く荒ぶる声に驚くと、サンドラーワームの頭が爆散してさらに驚く。

 ロイズの傍に一人の男が着地すると同時、サンドラーワームの体が黒い塵と化して消えていく。目では追えなかったが誰の仕業かは分かる。男を目にする前から己の師、ナディン・クリオウネだと確信していた。

「酷い傷だ。随分と無茶をしたものだな」

「……なぜ、ここに」

「お前が部屋から消えたからだ。今回のサンドラーワームの一件、納得いっていないようだったからな。まさかとは思ったが本当に一人で討伐に向かうとは。……色々言いたいことはあるだろうが町に帰ってからにしよう」

 安心からかロイズの意識が薄れていく。
 意識を失う直前、目にした光景は地面から出て来たサンドラーワーム四体。絶望的な光景にも絶望しなかったのはやはり、頼りになる師が傍にいるからだろう。結局、見たかった戦いは全く見られずに意識を失った。


 * * *


 宿屋の一室で目覚めたロイズは上半身を起こす。
 包帯が巻かれていたり、ガーゼが貼られていたりと応急処置を受けた体が痛む。今までも怪我をすることはあったがここまでの大怪我は初めてだ。これが名誉の負傷ならいいのだが残念ながら自業自得。身の程知らずなことが招いた罰というのが一番近い。

「目覚めたか。意外と早かったな」

 ドアを開けて入って来たのはロイズの師であるナディン・クリオウネ。
 野菜が入った袋を持っている彼は、ロイズと同じベッドに腰を下ろす。

「……まずは礼を。助けてくれてありがとうございました」

「弟子を助けるのは当然のことだ。国王陛下にも頼まれているしな」

「それでもありがとうございました」

 ナディンは袋に入っていた野菜の内ニンジンを取り出して生で齧った。
 彼は「食うか?」と問いかけてきたのでロイズは静かに首を横に振る。

「……なぜ、師は早朝に畑へ行こうと考えたのですか?」

 理由を聞かず勝手にやる気がないだけと、町に住む人々のことをあまり考えていないのだと決めつけてしまった。しかし今なら分かる。ナディンはそんな人物ではない。早朝と決めていたのは何か特別な理由があるはずである。

「昨日、お前には話したな。魔物の習性や特徴は憶えておいた方がいいと」

 ロイズは軽く頷いて「はい」と答える。

「サンドラーワームは夜遅い時間になるほど凶暴性が増し、群れで動くようになる。朝早い時間はその真逆。お前の安全を確実なものとするなら早朝の討伐がベストだったのだ。早朝のサンドラーワームならお前一人でも逃げられただろうしな」

「……私のせい、でしたか」

 ロイズは自分を責める。
 端的に言って足手纏いだったのだ。
 ナディン一人ならば話を聞いた夕方時点で終わっていた討伐なのに、足手纏いがいるから彼は討伐を遅らせた。彼を責める資格などロイズにはない。こんなことなら同行するべきではなかったと強く後悔する。

「捉え方が悪いな。確かに俺は夜のサンドラーワームでも難なく討てるが、奴の討伐は動きの鈍る早朝が基本。アクシデントがあってもその方が対処しやすい。お前がいなくとも俺は早朝に向かっていたさ」

「慰めはいりません」

「……いや、本当のことだが。……ああそういえばお前の見舞いに来た少年がいるぞ。少年、もう入って構わんぞ」

 部屋の扉が開いて見覚えのある少年が入って来る。
 ボロボロの服を着た少年は昨日、サンドラーワームがよく出没する畑を教えてくれた少年だ。

「お前か。……笑いにでも来たのか。口では偉そうなことを言っても何も出来ず、無様に殺されかけた私を」

「んなわけねえだろ。俺は、お前を尊敬する」

 意味が分からずにロイズは「は?」と間抜けな声を漏らす。

「ずっと、魔物を殺すのは兵士やギルドの仕事だと思ってた。お前みたいな、俺と歳が変わらねえ子供が戦うなんて思ってもいなかった。やろうと思えば戦えるのに、他人に責任押し付けて何もしなかったことに気付かされたよ。お前は無様なんかじゃない、立派な奴だよ」

「魔物を討ったのは我が師だ」

「それでも俺は、この町のために行動してくれたお前にも感謝してんだよ。ありがとう。あの魔物がいなくなったから農作業がまだ出来る。みんな喜んでるよ。全部お前と、ナディンさんのお陰だ。本当にありがとう」

「……そうか。まあ、感謝は受け取っておく」

 なぜ自分がとは思うが感謝されて悪い気はしない。

「俺、これから魔物と戦うために強くなるよ。歳が近い女にばっかり任せちゃおけねえ。俺なんかでも出来ると信じて自警団を作ろうと思う。兵士やギルドの手を借りなくても自分達で町を、国を守ってやる。……だからお前ももっと強くなれよ。今度は魔物を殺せるように強くなれよ。そうじゃなきゃ俺の方が強くなっちまうぜ」

 思わずロイズは「ふふ」と笑みを零す。
 未来を語る少年の言葉を聞いて、今のことで悩んでいた自分がバカらしくなる。
 明らかに自分より弱い少年に啖呵を切られて吹っ切れた。

 ロイズはやるべきは昨夜の後悔ではない。今やるべきはさらに高みを目指すこと。決して少年に追い越されないように、今度はサンドラーワームを討てるよう強くなること。

「頼もしい限りだ。お前、名前は何と言う?」

「ラハン」

「私はロイズ・ヴェルセイユ。将来、バラティアを守る王になる者だ」

 ラハンは「え、王? まさか王族!?」と驚愕する。
 ナディンが頷いたのを見た彼は中々驚愕の渦から抜け出せない。
 時間が経ってようやく冷静になった彼と、守りたいもののために努力することを互いに誓って別れた。それからベジリータを離れるつもりだったのだがナディンの指示で数日、体の回復を少しでも進めるために町に残った。

 ――数日後。

 バラティア王都への帰り道でロイズはナディンにとある提案をする。
 提案をした時、ナディンは大きく目を見開いて驚いていた。

「……何? 今、何と?」

「剣ではなく槍を教えてくれませんか、と」

 再確認した彼は分かりやすいデメリットをいくつも挙げる。
 剣と槍では扱い方が違う。今から教えるとなると時間が足りない。
 正直なところ彼の挙げたデメリットは正しいし、ロイズは自分の要求が無茶なものだと理解している。他にも色々と言っていたがロイズが全く引き下がらずにいると彼の方が折れる。

「……何故だ。何故今更槍なのだ」

「剣を使いたかった理由は風の勇者への憧れでした。今でも憧れは変わりませんが、私は風の勇者以上に師に憧れたのです。私も師と同じように槍を使いたい。そして使うからには師を超えてみせます」

「はぁ、分かった。どうせ考え直す気はないんだろう。だが槍を使うからには生半可な強さで立ち止まるのを許さん」

「言ったでしょう。師を、超えてみせると」

 この頃からロイズは剣ではなく槍を持つようになる。
 憧れの人物を追いかけるために同じ武器を扱い、いつかは彼以上の力を身につける。そんな想いをもとに鍛錬に励む。
 因みに城に帰還した時には怪我が完治しており、ナディンの首が物理的に飛ぶ事態は避けられた。
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