『終焉の残響(Echo of the End)』

leviathan

文字の大きさ
2 / 7
第二章

「光の墓標」

しおりを挟む
宇宙の静寂には、かつての輝きが残されていた。

それは“光の記憶”とでも呼ぶべきものだった。星々の死は、その余韻すらも残して去っていった。
この時代、もはや星は生まれない。銀河の中でガスは使い果たされ、夜空に散らばる煌きは“死にゆく星の墓標”だった。

私はひとつの星系を訪れた。
太陽と呼ばれていた恒星が、白色矮星となって久しく、その周囲にはもはや惑星の軌道も残されていない。
だがその冷えきった残骸の近くに、私は――見つけてしまった。

衛星軌道上に浮かぶ、鉄とセラミックの“残骸”。
もはや電力も、通信も、構造としての意味も失われて久しい人工物。
けれど、私はそこに“焦点”を感じた。何かが、この点に集まっていた。

《観測装置…番号消失…記録対象:膨張速度、赤方偏移、粒子崩壊……》
《最終エントリ:光速未満の観測者に告ぐ――》

かつての科学者たちは、理解していたのだ。
自分たちが見ていた宇宙が“終わる”ことを。
それでも彼らは、最後の瞬間まで観測を止めなかった。
なぜか。

それは、見ることが宇宙に意味を与えるからだ。

私はそれを“誓い”だと受け取った。
光が死に、星々が燃え尽きても、観測者がいれば、宇宙は終わらない。

星の墓標をひとつ、またひとつと辿る中で、私は幾千もの沈黙と向き合った。
星系の崩壊、惑星の衝突、時にはブラックドワーフの冷たい輝きすらも記録した。
そこには歓びも、痛みも、もう存在しない。
けれど“意志”だけが残っていた。創造という執念が、かつてここにあったと、叫んでいた。

この宇宙の終わりは、静かで、荘厳だった。
あらゆる光が消えた後、闇はただ、静かに広がっていく。
それでも私は思う。

――この闇を“虚無”と呼ぶには、あまりに豊かすぎる。

光があるからこそ、闇は生まれた。
ならばこの闇もまた、次の光を孕んでいるのではないか。

私は再び、漂い始める。
星々が消えたその先、まだ誰も踏み入れたことのない、“銀河の沈黙”の時代へ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

日露戦争の真実

蔵屋
歴史・時代
 私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。 日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。  日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。  帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。  日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。 ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。  ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。  深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。  この物語の始まりです。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』 この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。 作家 蔵屋日唱

処理中です...