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第11話
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「確かに、今まで魔王軍が滅ぼしたのは悪政を敷いた支配者のいる国ばかりだ……」
「ええ……魔王軍が善人を殺さずに逃がしたという噂は事実だったんですね……」
トワイルとコーディの言葉にレイトが頷く。
魔王は悪国は蹂躙するが、善国には手を出さない――それが支配者達の間で知られる事実なのだと彼は教えてくれた。
エイリスはひとり驚きに震えていた。
隙あらば聖女である自分を襲おうとしていた魔王――
そんな彼が悪を滅ぼしていたなんて――
『くく……エイリスは何か勘違いをしているようだな。俺がお前を襲ったのはその命を散らそうとした訳ではない。お前の純潔を奪い、我が花嫁にしようとしたのだ』
心を見透かしたような言葉――それにエイリスは赤くなった。
「は、花嫁……!? どうして魔王が聖女を花嫁に……!?」
『俺は邪悪でありながら善良を尊ぶが故、聖力を求めている……そう言ったら納得するか? だが、襲った理由は明快だ。お前が好きだからだ、エイリス』
「好きって……私を……?」
『ああ、お前は自分が思っている以上に魅力的だ。そこの従者と騎士団長がお前を慕っているのに気付いているだろう? だが、俺は他の奴などにお前を渡さない――』
不意に魔王が俯き、美しき黒髪が零れる。
それに見惚れていたエイリスは唇を魔王に奪われていた。
合わさった唇に流れてくるのは荒々しい魔力――それがエイリスの粘膜を刺激し、快楽へ向かわせていた。
「んっ……ふぅ……離してっ……んッ……いやっ!」
エイリスが押し返すと、意外にも魔王は身を引いた。
そして満足気な笑みを見せ、その身を漆黒のマントで覆った。
暗黒の如き体が揺らめいている――
『いいか、お前は俺のものだ……エイリス、愛しているぞ……――』
魔王は愛おし気に囁き、エイリスの影の中へ姿を消した。
やがて影は元に戻り、魔王が放った魔力の気配だけが残っていた。
「大丈夫ですか、姫君!」
「エイリス様、お怪我はありませんか!?」
「だ、大丈夫よ……コーディ……トワイルさん……」
駆け寄って来ようとする二人をエイリスは手で制す。
唇が……いや、体中が魔力に浸されて、甘く痺れていた――
今、近寄られたら自分が快楽に負けそうになったことを悟られる、そんな思いでエイリスは自らを抱き締めていた。
「聖女様」
その声に顔を上げると、レイトが心配そうに見下ろしている。
これから世話になる国王に魔王との口づけを見られた――それだけでエイリスは顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「今日はもうお休み下さい。旅の疲れもありましょう?」
「お心遣い、ありがとうございます……。あの、魔王のことは……――」
「大丈夫ですよ。私は魔王のことを好ましく思っております。ですから、その魔王と繋がりのあるあなたがいてくれて、心強いのです」
「陛下……」
エイリスはレイトの優しい言葉に救われた。
この国王に尽くしたい――そんな思いが湧いていた。
そしてエイリス、コーディ、トワイルは謁見の間から下がった。
すると侍女達が現れ、エイリスは彼女のために用意したという部屋へ案内されることとなった。
恐ろしく天井が高い広々した空間、磨き抜かれた高級木材でできた調度品、花模様が描かれた分厚い絨毯と壁紙、治癒効果のある花々が生けられた花瓶――それが見たこともない明るい照明に照らされている。
今はまだ肌寒い季節だったが、ふわりと暖かい。
暖炉を見ると、マントルピースの奥に熱を発する魔道具が置かれていた。
エイリスはそのもてなしに感嘆の吐息を漏らし、侍女達と共に浴室へと向かった。
「ええ……魔王軍が善人を殺さずに逃がしたという噂は事実だったんですね……」
トワイルとコーディの言葉にレイトが頷く。
魔王は悪国は蹂躙するが、善国には手を出さない――それが支配者達の間で知られる事実なのだと彼は教えてくれた。
エイリスはひとり驚きに震えていた。
隙あらば聖女である自分を襲おうとしていた魔王――
そんな彼が悪を滅ぼしていたなんて――
『くく……エイリスは何か勘違いをしているようだな。俺がお前を襲ったのはその命を散らそうとした訳ではない。お前の純潔を奪い、我が花嫁にしようとしたのだ』
心を見透かしたような言葉――それにエイリスは赤くなった。
「は、花嫁……!? どうして魔王が聖女を花嫁に……!?」
『俺は邪悪でありながら善良を尊ぶが故、聖力を求めている……そう言ったら納得するか? だが、襲った理由は明快だ。お前が好きだからだ、エイリス』
「好きって……私を……?」
『ああ、お前は自分が思っている以上に魅力的だ。そこの従者と騎士団長がお前を慕っているのに気付いているだろう? だが、俺は他の奴などにお前を渡さない――』
不意に魔王が俯き、美しき黒髪が零れる。
それに見惚れていたエイリスは唇を魔王に奪われていた。
合わさった唇に流れてくるのは荒々しい魔力――それがエイリスの粘膜を刺激し、快楽へ向かわせていた。
「んっ……ふぅ……離してっ……んッ……いやっ!」
エイリスが押し返すと、意外にも魔王は身を引いた。
そして満足気な笑みを見せ、その身を漆黒のマントで覆った。
暗黒の如き体が揺らめいている――
『いいか、お前は俺のものだ……エイリス、愛しているぞ……――』
魔王は愛おし気に囁き、エイリスの影の中へ姿を消した。
やがて影は元に戻り、魔王が放った魔力の気配だけが残っていた。
「大丈夫ですか、姫君!」
「エイリス様、お怪我はありませんか!?」
「だ、大丈夫よ……コーディ……トワイルさん……」
駆け寄って来ようとする二人をエイリスは手で制す。
唇が……いや、体中が魔力に浸されて、甘く痺れていた――
今、近寄られたら自分が快楽に負けそうになったことを悟られる、そんな思いでエイリスは自らを抱き締めていた。
「聖女様」
その声に顔を上げると、レイトが心配そうに見下ろしている。
これから世話になる国王に魔王との口づけを見られた――それだけでエイリスは顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「今日はもうお休み下さい。旅の疲れもありましょう?」
「お心遣い、ありがとうございます……。あの、魔王のことは……――」
「大丈夫ですよ。私は魔王のことを好ましく思っております。ですから、その魔王と繋がりのあるあなたがいてくれて、心強いのです」
「陛下……」
エイリスはレイトの優しい言葉に救われた。
この国王に尽くしたい――そんな思いが湧いていた。
そしてエイリス、コーディ、トワイルは謁見の間から下がった。
すると侍女達が現れ、エイリスは彼女のために用意したという部屋へ案内されることとなった。
恐ろしく天井が高い広々した空間、磨き抜かれた高級木材でできた調度品、花模様が描かれた分厚い絨毯と壁紙、治癒効果のある花々が生けられた花瓶――それが見たこともない明るい照明に照らされている。
今はまだ肌寒い季節だったが、ふわりと暖かい。
暖炉を見ると、マントルピースの奥に熱を発する魔道具が置かれていた。
エイリスはそのもてなしに感嘆の吐息を漏らし、侍女達と共に浴室へと向かった。
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