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第5話 オーガスト伯爵の屋敷にて
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「それにしても、オーガスト様。私が公爵家のエルティアナだとよく分かりましたわね。私は社交界に顔を出したことなど、一度もなかったのに」
「メルティアナが言っていたんだよ。いけ好かない双子の姉がいるってね」
「まあ、あの子ったら私のことは家族の秘密なのに、口が軽いんだから」
姉エルティアナは妹メルティアナの替え玉にするため、育てられたようなものだ。
さらには両親と妹から虐待を受けてきたが、三人は体に傷が残る仕打ちはせずに、傷が残らない苦しみを与えてきた。
水責め、電気ショック、食事抜き、眠らせない等々……様々な仕打ちを受けた。
しかし家を出た今、自由に振る舞っても虐待されることはない。
「それではオーガスト様、この写真をバラ撒かれたくなかったら、妹を誘惑して下さい。そして私の元までおびき出して下さい」
「それは言われなくても分かるよ。ああ、バレたら首を刎ねられる」
「もし断ったら、私が首を刎ねて差し上げます」
「分かったよ。とりあえず手紙を……――」
その時、使用人が現れて、来客を知らせた。
どうやらまたもや素性の知れぬ客人が来たらしい。
オーガストはエルティアナを見て、その顔色を窺った。
「私のことは後回しで構いませんわ。どうぞお招きになって」
「いいのかい? それじゃあ、その客人を呼んでくれ」
この選択がエルティアナの人生を大きく変えるとは、誰も思っていなかった。
やがて使用人はひとりの妙な客人を連れてきた。
その客人は顔をマスクで覆い隠し、帽子を目深に被っていた。
しかし身に着けているものは大層な高級品ばかりで、使用人がここまで通した理由がよく理解できた。
ふと窓から屋敷の前を見ると、立派な馬車が停まっているのが見える。
オーガストは客人に、顔の覆いを外すことを求めた。
「分かりました。顔を見せても、悲鳴を上げないで下さいね?」
その声にエルティアナは嫌な予感がした。
そして晒された顔は――
「国王陛下……!?」
「アダム様ッ……!?」
するとアダムはにっこり微笑み、エルティアナに跪いた。
「ああ、愛しいエルティアナ。ようやく再会できたね」
「メルティアナが言っていたんだよ。いけ好かない双子の姉がいるってね」
「まあ、あの子ったら私のことは家族の秘密なのに、口が軽いんだから」
姉エルティアナは妹メルティアナの替え玉にするため、育てられたようなものだ。
さらには両親と妹から虐待を受けてきたが、三人は体に傷が残る仕打ちはせずに、傷が残らない苦しみを与えてきた。
水責め、電気ショック、食事抜き、眠らせない等々……様々な仕打ちを受けた。
しかし家を出た今、自由に振る舞っても虐待されることはない。
「それではオーガスト様、この写真をバラ撒かれたくなかったら、妹を誘惑して下さい。そして私の元までおびき出して下さい」
「それは言われなくても分かるよ。ああ、バレたら首を刎ねられる」
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「分かったよ。とりあえず手紙を……――」
その時、使用人が現れて、来客を知らせた。
どうやらまたもや素性の知れぬ客人が来たらしい。
オーガストはエルティアナを見て、その顔色を窺った。
「私のことは後回しで構いませんわ。どうぞお招きになって」
「いいのかい? それじゃあ、その客人を呼んでくれ」
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やがて使用人はひとりの妙な客人を連れてきた。
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「分かりました。顔を見せても、悲鳴を上げないで下さいね?」
その声にエルティアナは嫌な予感がした。
そして晒された顔は――
「国王陛下……!?」
「アダム様ッ……!?」
するとアダムはにっこり微笑み、エルティアナに跪いた。
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