どん底の先は地獄でした

ふたつぎ

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「ララぁおなかすいたぁ!」
そう言って泣く子がいたから、私は孤児院の庭に畑を作った。
最初は手作業だったけど、いつの間にか使えるようになっていた土魔法でふかふかにして盛り盛りしたらそれなりに良い畑ができた。

「ララぁおなかすいたぁ!」
畑で作ったものだけじゃ足りなくて泣く子がいたから、私は森に行って木の実を採ったり小動物を捕ったりもした。
土魔法で足元をせり上がらせれば高いところにある実も採れたし、穴を掘ったり土の箱で囲んだりして動物を捕ることもできたから。

「ララぁ隙間風が寒くて寝れないぃ!」
そう言って騒ぐ子がいたから土魔法で隙間を塞いだ。
最初のうちは塞いでも塞いでもすぐに土が崩れてしまうから一日に何度も魔法をかけなおさなきゃいけなかったけど、だんだん土を固くしたりできるようになっていった。

「ララぁ雨漏りしてきたぁ!」
そう言って騒ぐ子がいたから、土魔法で天井もふさいだ。
壁より難しかったけど、これも毎日何度もやってるうちに雨でも崩れない土にすることができた。

そんなことを続けていると、孤児院の近くに住んでる人や森で会う狩人たちからも家の補修とか狩りのお手伝いを頼まれるようになった。
お小遣いをくれると言われたけど、お金じゃなくて文字の読み方とか計算を教えてもらうことにした。
孤児院出身のお兄ちゃんとかお姉ちゃんたちが、文字が読めなくて騙された~って言ってるのを何回も聞いたことがあったから。

そうして文字を覚えたから図書館に行ってみた。
この町には図書館があって、町民はそこで本を好きなだけ読むことができるって聞いたからワクワクしながら行ったら保証金がいるって言われてしまった。
だからそれからはお手伝いをしたらお小遣いをもらうようにして、貯めたお金をもって今度こそ!ってまた図書館に行ったのに、孤児だって伝えたら孤児は町民じゃないからダメだって言われて帰された。

町に住んでるのに孤児は町民じゃないんだって。
この町を管理している領主様のお慈悲で子供のうちはこの町にいることを許されてるだけで、町人になるには大人になったときにお金を払って姓を買うしかないみたい。
ものすごく高いし、それとは別に毎年税金も納めなきゃいけないの。
そんなの無理だよ。
国に所属しない独立した狩人か傭兵か芸人の組織に入れば町に滞在することは許されるらしいから、孤児はほとんど皆そのどれかになるみたい。

今の自分の生活を考えれば狩人になるのが良いのかな。それしかないのかなって思ってたら、領主様から呼び出しを受けた。
町の人たちが私のことを話しているのを聞いたから魔法を見せなさい、だって。

だから土魔法で領主様のおうちにある井戸を浚ってみたり、お庭にあったオブジェなどのそっくりさんを作ってみたりしたらすごく褒めてくれて、体を色々検査した後に姓をつけてくれた。
わたし町民になったのよ!

それから本をなんと40冊もくれたの。
2年でこの40冊の内容を全部覚えなさいって言われた。町民になったのに、40冊覚えたら税金も5年間払わなくていいって!領主様すごい!
でも、覚えなかったらまた″ただのララ”に戻されるって聞いたから頑張った。

孤児院の子たちが本にいたずらしようとするから、ガッチガチに硬い土魔法で作った箱に入れていた。
そしたら逆に意地でも開けようとする子もいて大変だった。2年の攻防で、私の土魔法操作はさらに上達したわ。

こうして私はシクラムノ王立学院に入学したの。


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