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2.5章:血濡れのstudent clothes.
消えない罪
しおりを挟む悠仁が入院している病院に着き、ロビーにて受付を済ませた後、葉九は「じゃあボクはこっちだから」と別れた。
勇樹が予め聞いていたらしい病室の扉を開けると、中にはベッドに起き上がっている悠仁と、そんな悠仁と話していたらしい見舞い客らしい青年が居た。
悠仁と青年は扉が開く音にこちらを振り向くと、悠仁がふわりと微笑んで「やぁ、勇樹。それから皆もいらっしゃい」と言うと、青年の顔が花が咲いた様に輝いた。
俺達より少し歳上らしい青年は勇樹に近づくと、「勇樹?勇樹って言ったか!?」と口を開いた。
「え、あ、はい……?」
「やっぱり!あ、ごめん急に。オレ、花咲友斗って言うんだ。優香の双子の弟で、一応お前の兄貴なんだよ」
「ねえ、さんの……」
「優香と仲良くしてくれてたんだろ?さんきゅーな!これからはオレとも仲良くしてくれよ」
戸惑いながら答える勇樹に友斗と名乗った青年は静かに成り行きを見ていた俺達に目線をやると、「勇樹の友達?よろしくな!」と明るく笑った。
「ごめんね。友斗君ったら勇樹がお見舞いに来るって話したら勇樹に会うまで帰らないって聞かなくて」
「だって父さんだけずるいだろー?優香もずるいよなー。こんな可愛い弟オレに隠して仲良くするなんてよー。いやむしろ可愛いから隠してたのか……?」
「……まぁオレは可愛いから独占したくなるよな」
「勇樹先輩って自分の可愛さに一定の自信があるのはなんなんです?いやまぁ顔だけは可愛いの否定はできないんですけど。できないんですけども。つーか反応するとこぜってー違いますよね?」
斜め上の所に反応する勇樹に尋希がそう小声で言ってくると、直季が「色々あったからねぇ……本当に色々と……」と苦笑いする。
友斗は暫く勇樹と話すと、「やっべ、もうこんな時間か。じゃあ勇樹にも会えたしオレそろそろ帰るな!」と言って帰っていき。
そのまま悠仁と軽く話をしている時に、ふと勇樹が「そう言えばさっき、間乃尋の知り合いに会ったんだ」と言って続ける。
「なんていうか、濃い人でしたよね。事ある毎に間乃尋先輩にバニラシェイク押し付けていましたし」
「でも綺麗な人だったよねぇ。ボク髪も肌もあんなに真っ白な人、初めて見たよねぇ」
「そんな見た目だからか、間乃尋と葉九さんってすげー兄弟っぽく見えたよなぁ」
「ちょっとぉ!?兄さんの兄弟は僕なんですけどぉ!?」
「まって」
それぞれ葉九に対して感じた事を口々に語っていると、悠仁が驚きに満ちたように目を見開き、口を開いた。
「今、葉九って言った?」
「え?あぁ、言ったけど……?」
「髪も、肌も白いって」
「ですねー。天使の羽根のようっていう例えばあの人の為にあるのかなってくらいには純白でしたよ?」
淡々とした様子の悠仁からの問いにそれぞれそう返すと、悠仁は今度は俺に向き直って続ける。
「間乃尋君、その人って柊葉九って名前で合ってるかな?」
「合ってる」
「今その人と連絡取れたりしないかな?」
「取れるけど」
「……っ!だったらお願い、今すぐ連絡取ってくれる!?」
俺の答えに血相を変えて、俺に掴みかかる勢いでそう言う悠仁を勇樹が「ちょ、ちょっと落ち着けよ!」と悠仁を止めようと動けば、勇樹の声で少し冷静になったのか、動きを止めた。
「ごめんね、少し冷静じゃいられなくなっちゃった」
「俺は大丈夫だよ。そんな事よりも葉九がどうかしたのか?」
落ち着いた様子の悠仁に俺はそう問いかけると、悠仁は自分の首の傷跡をそっと指で撫で、目を逸らしながら答える。
「葉九は、僕の親友だった人で……僕にとって一生消えることの無い罪そのものなんだ」
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