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第五章(3/3)
しおりを挟む第三景
皇城で騒動が勃発した頃――
騒ぎの届いていない宮城内では、一人の采女が朝の身支度をはじめていた。女は豊満妖艶の美女で、色気は溢れんばかりである。
しかし、女のたたずまいはどこかが異なっている。
入宮するまで女は妓楼で働いていた。身体を開いて高官大官の相手をしていたためか、そこはかとなく遊興の余韻が滲みでているのだった。
とはいえ女は遊里に身を落としたのではない。老舗妓楼に生まれたのだ。
自分に自信があるのだろう、女は采女二十七人の共同生活に耐えられなくなっていた。二十七人のうち一人がすでに皇帝の寵愛を受けていることも癪に障るのである。
(あの娘ばっかり。あんな暗い女のどこがいいっていうのよ)
寵愛を受けているのは、凛丹緋。
丹緋は女よりも二つ歳下で、豪商・凛家に生まれた。この商家と妓家に付き合いがあったため、丹緋は父親によって妓楼に身を預けられたのだ。入宮するまで修業のために。
(妓楼にいたときもそう。あの女、身なりのよい客を独占して!)
それまで見たことのない客であったが、見目いい男で、金払いもよかった。よほどのお大尽だろうから、通うなら売れっ子の自分を指名するだろうと期待したのに。
男は毎夜、丹緋を指名し続けたのだ。
(笑わないから華がない、芸が達者でもないあの女。ほんと、頭にくるっ)
女は届けられた衣裳を手にとる。
采女に与えられた個の空間は狭く、人一人が寝転べる寝台程度の広さしかない。采女付きの侍女は一人いるが、一対一で面倒をみてくれるわけではなく、二十六人をひとくくりにして世話をしているのであった。
「――つっうッ!?」
衣裳を着込んだ瞬間、女の顔がきつくゆがめられた。
肌のそこかしこがちくちくと痛んだのだ。
手を止めて衣装の中を覗いてみれば、襟や袖に縫い針が刺さっている。その針が身体を傷つけて、血がぷくりとふくれていた。
(まただっ)
ここのところ、女は嫌がらせを受けていた。
泥で汚された衣裳が届けられたこともある。おかげでその日は午前いっぱい洗濯場に回された。数日前には、用意されていた簪に薬が塗ってあったらしく、髪がばさばさになって抜け落ちるなんて騒ぎもあったのだ。
(あたしの美貌がだいなしじゃないっ)
いい加減、我慢の限界であった。
女はもともと譲らない性格なのだ。
今日こそは、とほかの采女が身支度を終えて退室したところで、侍女を捕まえた。
肩をつかみ、乱暴に振り向かせる。はずみで侍女は足をもつれさせたが、転べばいいと思った。酷い怪我をして後宮を出ればいい。
「ちょっと、あんたッ。あたしに恨みでもあるの、この針はなにッ?」
衣裳から抜き取った針を、ばらばらと侍女の眼前にばら撒いた。
侍女は清楚な雰囲気で、自分にはないその清らかさが余計に女をいらつかせた。女が文句をつけようと意気込んで口を開いたとき――侍女の背後に一人、見知った女が立っているのに気づいたのだった。
「では訊いてやるけどね。丹緋殿に恨みでもあるのかい?」
沈黙する侍女の背後で女が笑えば、針をばら撒く采女・玄素昂の身体が硬直した。
「あ……貴女、なんで……? 丹緋の侍女でしょ……でも、声が……」
驚きのせいか素昂の声が喉でつまり、ぶつ切りで届けられる。
「……いつもは筆と紙で筆談してるじゃない、なのに、貴女……しゃべれるの?」
素昂に問われた者は頷いた。
「しゃべれるし、それだけじゃない。私は男だよ」
「――ッ!?」
素昂が話している相手は、確かに侍女の恰好をしている。長い黒髪もきれいに結いあげられていて化粧もしている――が、声はまぎれもなく男のものであった。
「残念ながら、私は矮躯なのでね。そこはまあ、歳は十九だから育ち盛りと将来を期待しているところなんだけど。この際、背の低さを活かして姿形は恰好でごまかせても、声だけはどうにもならない。仕方がないから崔殿中監殿に頼み込んで〝舌をひっこぬかれた〟設定にしてもらったんだ。殿中監殿愛用の煙管も存外役に立つものだね」
几帳面そうな男の姓名は、環豈華。変装して後宮に入り、侍女として丹緋に付いていたのだった。
受けた衝撃から自力で復活したらしい素昂の目がつり上がる。
「じゃあ、ひょっとして。あんたが、そこの侍女に嫌がらせをさせてたってわけ?」
素昂が指を突きつけているのは、先程から沈黙している采女付きの侍女。
豈華はまた頷いた。だが、そこには否定の意味もこめられているようだった。
「ちょっとちょっと。人聞きの悪いこと言わないでくれるかい。私はね、お前がやったことを、同じようにやっただけだ。お前が丹緋殿にしたことをやり返しただけ。これを報復という」
素昂が「くぅ」と悔しそうに歯噛みする。
「それだけ丹緋殿に恨みがあるってことだろう?」
話せ、と威圧するように豈華は視線を鋭くした。
見返す素昂の身体には本能的に怯えがはしる。逆らえなくなっていた。
「あたしは妓家の女だけど……妓女だって商売抜きで本気で好きになることもあるのよ」
素昂の恋愛話には興味のない豈華であった。刹那、冷めた空気に沈んでいく。
だが、発せられた次の言葉には興味が湧いた。
「一目惚れだったの、あの人に……福禄寿に」
その名は、皇帝と散策に出かけた丹緋から聞かされていたのだ。
「人離れした顔、つやつやの銀の髪。あんな男、滅多にいない。女だって男を選べる時代なのよ、……惹かれないほうがおかしいじゃない」
福禄寿――ふさげているのか、そう名のっているのは泰山に棲むという銀髪の仙人だ。
素昂の話は続く。
「もし……秋雨の降るあの夜に、彼が身請けしてくれたなら、あたしは入宮しなかった。好きな人と自由に暮らせる喜びを味わっていた。彼と出逢ったときにはもう、入宮の話がきていたから、なんとしても身請けしてもらいたかったのにっ」
「せんに……彼は、断ったのかな」
「そうよ! 断ったのよ!! この、あたしの願いを。一番売れているあたしを。断って、窓から逃げた。あたしの手を振り切って、あたしを妓楼におき去りにして三階から飛び降りた。どうやっても追ってこられないようにっ」
素昂の声はきんきんと高く、耳障りだった。
「あたし、知ってたの。彼がどうしてうちの妓楼に通っていたか。
彼ね、毎晩、丹緋を指名していたのよ。入ったばかりの、華もない、芸もない、素人のあの女をね。でも、同じ時期に通いはじめた同世代のお大尽が、夜ごと丹緋を指名したものだから。……丹緋の室が、あたしの真下の階にあったから。丹緋を傍に感じたかったんでしょう、たったそれだけの理由であたしを指名していたのよっ!」
素昂がぎゅっと両の拳を握る。
「あたしは父さんと母さんに愛された。客もあたしを愛した。あたしを大切に扱わない人はいなかった、なのに……。あたしは福禄寿が好き。なのに、なんで彼が好きなのは丹緋なのっ」
唾を飛ばしながら叫び続けた。
「諦めて入った後宮でもそう。陛下は丹緋を寵愛してる。あたしはここでも拒まれるっ」
なりふりかまわずに。
「男はみんな、丹緋にこだわるの。どうしてよッ。
期待されもしないのに、期待される以上の痕跡を容易く残していくの。あの女、丹緋、絶対に許せないっ!」
豈華は無表情に素昂の話を聞いていた。
なぜなら、はじめに「訊いてやる」と言ったのは自分だから。約束は守らねば。
「愛する者が丹緋殿しか見ていない。愛する者がお前の求愛を拒んだ、拒まれた原因が丹緋殿にあるから憎んでいると?」
「そう! だからあたしは悪くない。悪いのは、あの女。嫌がらせされれば、嫌がらせされる理由が、されるほどの非が、自分にあると気づくでしょう」
豈華は終わりだというふうに、ふっと息を吐きだした。
この女の告白によれば、行動の原因は〝恨み〟ではない。
ただの〝ひがみ〟だ。
丹緋に相応の恨みがあるのなら職掌上、もう少し耳を傾けてやったものの、豈華にはこれ以上、訊く理由がなくなってしまった。
「すきにすれば」
豈華は素っ気なく告げた。
「丹緋殿に嫌がらせしたいのなら、やり続ければいい」
叫び続けて血走る素昂の目が見開かれる。自分の言い分が認められたと思ったのだろう。
「そこにいる侍女だけれどね、あれは鬼だ」
ひと呼吸おいて、なにを言われたのかわからないといったふうに素昂が首をかしげた。思考の遅れた虚ろな双眸で侍女を見つめる。
「私は見鬼師でね。花が季節はずれに咲くのは鬼だからだ、知らなかったかい? 彼女は牡丹の精霊で花妖という」
見鬼師、と繰り返し呟く素昂。まだ理解できないのか、ぽかんと口を開けた。
「牡丹の精霊? ……侍女が鬼? だって、侍女はみんなの目に映ってるのに……」
「それは私が、鬼に使人見鬼術をかけているからだよ。この方術をかけておけば、無能の人にも等しく鬼の姿を見せることができる。加えて言うなら彼女は私の役鬼だから」
「あんた、な……に、言ってる……のよ」
豈華はくすりと笑った。人外のものを見るような目つきをされる――そんな恐怖まじりの反応を向けられるのは慣れているとでもいう様子で。
「お前が心を改めて丹緋殿への嫌がらせをやめたとしよう。けれど、あの侍女――花妖によるお前への嫌がらせは一生続く」
「なん――ッ」
「使役している花妖に、私がそう命じたからだ。可愛げのある嫌がらせだけど、そういう些細ないじめほど続けば鬱陶しい。朝目覚めるたびに、今日も、また今日もという怯えは日に日に大きくなって、心身にはこたえるはずだ」
「なんでッ、なんであたしだけ」
「凛丹緋はすでに皇帝のものだからだよ。美玉の如く扱う特別な女人だ」
「あたしだって采女よ、あたしのほうが美しいじゃないっ!」
「お前は采女としての道を踏みはずして穴に落ちた。要するに、人生という道を歩いていて堕落したんだ。穴の深さというものは、その人間の経験値が影響するものだから、結局は値を上げる生き方をした者だけが穴から這い上がれる。そのあたり、前を見て歩いていないお前に、なにを言ったところで忘れてしまうだろうけれど。
こう言えばわかるかな?
皇帝の行く手を遮るもの、皇帝の宝物に手を出すものを、私は決して見逃さない。
赦さない。
環家は護三家の一、黎皇家を護るために存在しているからね」
「環家ですって? あんた……」
「私は環家の剣楯華だ。これでもう、忘れられない程度には記憶に残ったんじゃないかい」
言い捨てて、豈華は室を出ようとする。
「お前は確かに美しい」
少々物足りない気もして肩越しに振り返った。
「妓楼でも売れっ子だったろうね。でもね、それは身体を開いたからであって、身体だけは美しかったからだ。飢えた男の酒の肴にはちょうどいい美だよ。
お前のもとへ通った男はみな思っていただろう――美しい、愛せはしないが、と」
花妖を残し、今度こそすっきりした顔で豈華は室を出る。
豈華を追うように響き渡ったのは素昂の絶叫だった。
牡丹の花妖に脅され続けた素昂は精神を病んで臥せってしまう。
だがそれは、もう少し先のこと。
響いた絶叫は、花妖に怯えてのものか。
それとも、誰からも愛されなかったからか。
糾弾されずとも、素昂はとっくに心を病んでいたのだ。
愛のせいで人生が狂った。
福禄寿を仙人と知らないまま愛し、愛されないままこっぴどく拒絶されて……。
この世に真実の愛を得られる者はどれほどいるのか。
「ふんっ」
焦げた匂いのまじる風をたどるようにして豈華は皇城の方角へと視線を向けた。
(そろそろ私がいないことに焦りはじめたかな)
護三家は、黎皇家に大事があれば必ず参ずる。
力を尽くして皇帝を護る。
だが、今回ばかりはこれでいいのだ。
今朝、蒼呉が動いたことは見逃さなかった。恋魔の異名をとる蒼呉が、その手癖の悪さから丹緋に水仙を贈ったのをきっかけにして。水仙から漂う匂いで、皇城で火災を起こすだろうと予想をつけていた。
水仙が置かれていたのは皇城の南端。燃やされて残念無念というほどの被害はでないし、燃やしてくれたほうが後々蒼呉の罪を問いやすくなる。だから、見逃してやった。彼の動きにあわせて豈華は、素昂のもとを訪れたのだ。面倒事を一気に片づけてしまうために。
面倒事に含まれるのは幽冥地府の長官である、閻羅王。
冥府という役所に籍をおく鬼〈冥王や冥官といった鬼〉は無能の人の目にも映る。冥界の頂点に立つ偉大な鬼であれば、環家最高の見鬼師である剣楯華であっても方術を駆使して従わせることは不可能だ。
この件で朝廷からの呼びだしに応じたとき、豈華には気になることがあった。それは皇宮の門をくぐった直後から感じていて、豈華でなければ気づけないほどの違和感だった。
妙な感覚は後宮のほうから流れてきていた。
異質な感じ――それは鬼の気配に似て非なるもの。
邪気のようで、神気のようにも感じられる。
つかめるようでつかめない。
違和感は、とにかく表現しがたいものであった。
わずかな気配をたどっていくと、そこにいたのが凛丹緋だった。
かの鬼が花嫁にと指名したのも凛丹緋なのだ。
(これは偶然の一致か?)
いや、偶然と必然の境は微妙なところにある。めぐり合いも微妙な場所にあると考えるべきだ。
そこで殿中監に頼みこみ、丹緋付きの侍女になりすました。そうして、
(あの日見たのは彼女の力によるものか……?)
素昂から嫌がらせを受けた侍女をかばい、怒りという感情とともに発現した、微風。
風は丹緋の足許から、指先から、ふわりと湧きあがって身体を包み――。
豈華は試してみたかったのだ。
今日このとき、丹緋の力がなんであるのか。
閻羅王が丹緋にこだわる理由を探るためにも。
(にしても面倒な。閻羅王の謎が消えないうちに、またひとつ謎が増えるとはね)
素昂の話に登場した、もう一人の男・福禄寿。
福禄寿は仙人だ。
なぜ仙人が丹緋を気にかけていたのかという疑問が残ってしまう。
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