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12.パートナー
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「SUB値の数値かなり下がってます。よい兆候ですね」
久しぶりの産業医との面談で、彼の告げた診断内容に桐原は安堵した。
犬養と定期的にプレイすることによって体調はすこぶるよいから改善しているとは思っていたが、はっきりとした数字で見るとやはり安心する。
最近はなんとなく犬養からの誘いがあると、金曜の仕事後にタクシーで犬養の家に行き、プレイして朝帰りするという関係ができあがっていた。
ちょっと飲んだり食べたり、少しばかり私的な会話をしたりして桐原が緊張を解いたところでプレイを開始し、犬飼がいくつかの簡単なコマンドを行う。
それに従えばグレアが存分に与えられるので、桐原は毎回SUB SPACEに溺れて眠ってしまう。
「DISOBEDIENCE」
犬飼とのプレイは必ずこの言葉からになった。
従わなくてよいという一見矛盾したこのコマンドは桐原を安心させ、心ゆくままにプレイに浸ることができる。
犬飼のコマンドに従うことが頭を抑えつけて支配されるようなものではないということや、犬飼が節度を持って接して決して嫌なことをさせない安心感も大きかった。
プレイがなかなか気持ちよいものだということがわかったのも大きい。
満足してはいた。
が、不安材料としては回数を重ねるごとに犬飼の態度が甘さを増していることだった。
桐原が当初希望していたのは「ドライ」に「割り切って」「事務的」にしかも「面倒でない」相手ではなかっただろうか...なんだかだんだんと深入りしているような気がしてならないのだった。
「また抑制剤に戻すというのは可能なんですか?」
「やめたほうがいいと思いますね。今はプレイで発散されているから数値が安定しているんだと思いますよ。やめたら一気に元に戻ってしまうと思います」
「……」
不満げに黙る桐原に、医師は何事を思ったのか提案した。
「もし何かしっくりしていないなら、パートナーを変えたりしてみるのはどうですか?」
「パートナーを変える…」
それは、最近惰性で先延ばしにしてしまっていたが、桐原の中に以前からずっとあった考えである。
そもそも、考えてみれば犬飼としかプレイしていないが、ダイナミクスのパートナーは必ずしも固定しないといけないものではない。
条件があうDOMがいるなら色々試してみるのが普通ではないだろうか。
「桐原さんは最近プレイし始めたばかりなんですよね。相性いい相手と出会うまで試すのも大事ですよ。アプリが今一といっていたので、プレイバーはどうでしょうか?」
「プレイバー…」
前に医師からもらった資料にも記載あった気がする。
SUBとDOMの出会いの場になる施設「プレイバー」は国の運営施設なのでセキュリティもしっかりしているし、登録制なので、身元のしっかりした人のみしか入れない。
そこまで話して、医師は少し表情を緩めた。
「私もそこでパートナーを見つけたんですが、直接会う分アプリより確実だと思います」
「たしかに、アプリは登録してみたけれど、ちょっと...って感じですね」
「時間ない方にはちょうどいいツールですが、DOMだからSUBに何言ってもいいっていう人が、そのままのノリでメッセージ送ってきたりしますしね」
医師は同調した。
相性のいい相手というものがどういうものなのかまだ桐原にはわかりかねたが、そこに行ってみるのも良いかもしれない...と、心が動いた
好奇心もある。
思い立ったが吉日で、早速、桐原はプレイバーを検索し、都内にいくつかあるうち、取引先や同じ会社の人との遭遇を避けるため居住エリアと違う路線のものを予約した。
いつも遅くまでオフィスにいる桐原が珍しく定時でデスクから立ったので、部下たちが、おや?という雰囲気になる。
犬飼がもの問いたげに、されど周りの手前気軽に声をかけれずという様子でいるのを尻目に桐原はさっさと会社を出た。少し気にはなったが、別に犬飼に義理立てする必要はないと自分に言い聞かせる。
ちょっとした期待と自分では認めたくない少しの不安にかられながら桐原はプレイバーへ向かった。
久しぶりの産業医との面談で、彼の告げた診断内容に桐原は安堵した。
犬養と定期的にプレイすることによって体調はすこぶるよいから改善しているとは思っていたが、はっきりとした数字で見るとやはり安心する。
最近はなんとなく犬養からの誘いがあると、金曜の仕事後にタクシーで犬養の家に行き、プレイして朝帰りするという関係ができあがっていた。
ちょっと飲んだり食べたり、少しばかり私的な会話をしたりして桐原が緊張を解いたところでプレイを開始し、犬飼がいくつかの簡単なコマンドを行う。
それに従えばグレアが存分に与えられるので、桐原は毎回SUB SPACEに溺れて眠ってしまう。
「DISOBEDIENCE」
犬飼とのプレイは必ずこの言葉からになった。
従わなくてよいという一見矛盾したこのコマンドは桐原を安心させ、心ゆくままにプレイに浸ることができる。
犬飼のコマンドに従うことが頭を抑えつけて支配されるようなものではないということや、犬飼が節度を持って接して決して嫌なことをさせない安心感も大きかった。
プレイがなかなか気持ちよいものだということがわかったのも大きい。
満足してはいた。
が、不安材料としては回数を重ねるごとに犬飼の態度が甘さを増していることだった。
桐原が当初希望していたのは「ドライ」に「割り切って」「事務的」にしかも「面倒でない」相手ではなかっただろうか...なんだかだんだんと深入りしているような気がしてならないのだった。
「また抑制剤に戻すというのは可能なんですか?」
「やめたほうがいいと思いますね。今はプレイで発散されているから数値が安定しているんだと思いますよ。やめたら一気に元に戻ってしまうと思います」
「……」
不満げに黙る桐原に、医師は何事を思ったのか提案した。
「もし何かしっくりしていないなら、パートナーを変えたりしてみるのはどうですか?」
「パートナーを変える…」
それは、最近惰性で先延ばしにしてしまっていたが、桐原の中に以前からずっとあった考えである。
そもそも、考えてみれば犬飼としかプレイしていないが、ダイナミクスのパートナーは必ずしも固定しないといけないものではない。
条件があうDOMがいるなら色々試してみるのが普通ではないだろうか。
「桐原さんは最近プレイし始めたばかりなんですよね。相性いい相手と出会うまで試すのも大事ですよ。アプリが今一といっていたので、プレイバーはどうでしょうか?」
「プレイバー…」
前に医師からもらった資料にも記載あった気がする。
SUBとDOMの出会いの場になる施設「プレイバー」は国の運営施設なのでセキュリティもしっかりしているし、登録制なので、身元のしっかりした人のみしか入れない。
そこまで話して、医師は少し表情を緩めた。
「私もそこでパートナーを見つけたんですが、直接会う分アプリより確実だと思います」
「たしかに、アプリは登録してみたけれど、ちょっと...って感じですね」
「時間ない方にはちょうどいいツールですが、DOMだからSUBに何言ってもいいっていう人が、そのままのノリでメッセージ送ってきたりしますしね」
医師は同調した。
相性のいい相手というものがどういうものなのかまだ桐原にはわかりかねたが、そこに行ってみるのも良いかもしれない...と、心が動いた
好奇心もある。
思い立ったが吉日で、早速、桐原はプレイバーを検索し、都内にいくつかあるうち、取引先や同じ会社の人との遭遇を避けるため居住エリアと違う路線のものを予約した。
いつも遅くまでオフィスにいる桐原が珍しく定時でデスクから立ったので、部下たちが、おや?という雰囲気になる。
犬飼がもの問いたげに、されど周りの手前気軽に声をかけれずという様子でいるのを尻目に桐原はさっさと会社を出た。少し気にはなったが、別に犬飼に義理立てする必要はないと自分に言い聞かせる。
ちょっとした期待と自分では認めたくない少しの不安にかられながら桐原はプレイバーへ向かった。
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