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11.一夜明けて
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目を覚ました時、桐原はどこにいるのか全く分からなかった。
上体を起こすとかけられた毛布が滑り落ち、ソファーに寝かせられていたことを知る。
見回すと、さんさんと朝日の差し込むリビングが目に入り、昨日のことが一気に記憶が蘇ってきた。
自分が犬飼とのプレイでどうしていたか記憶が蘇ってくる。
残念ながら、SUB SPACEに入っても記憶はぶっとんだりしないらしく、一挙一動をちゃんと覚えている。
桐原は大きな声で叫びながら転がり回りたいような羞恥に囚われた。
頼るとか、安心感とかそんなものを欲していなかったはずだ。少なくとも他人には。
なのに、プレイで自分があんなになってしまうなんて信じられなかった。
それでも気持ちとは裏腹に身体のほうはお試しの時の比ではないほどに体が軽く、気力と生気がみなぎっている。
それは改めてSUBとDOMのプレイは覿面で、桐原にはこれが必要であるという憂鬱な結果を認めざるを得ないということでもあった。
しばし葛藤した桐原だが、この問題を合理的に考えることにした。
つまり、SUBだから仕方ないとつとめて冷静に納得し、開き直ることにしたのだ。
なんとか冷静にたち戻った桐原は立ち上がった。
スーツのズボンがしわになってしまったことに思わず舌打ちする。
ワイシャツの襟はボタンがいくつか外されて緩めてあったが、それ以上何もされた様子がないのでホッとした。
床に目をやると、犬飼がフローリングに毛布を抱えて転がって寝ていたので、軽く足蹴にすると彼はわっと言って起き上がった。
急いで眼鏡をかける。
「あ、おはようございます。昨日はプレイ中にいきなり意識がとんじゃったのは覚えてます?…疲れていたみたいなので寝かせておきました。もちろん何もしてないですよっ!」
正直、プレイ後に犬飼が居丈高になったり、最中のことを口にして揶揄したりするのではないかと桐原は懸念していた。
だが、犬飼の態度はあっけないほどに変わらない。
桐原は犬飼を足元に見下ろしながら、そのことに安堵した。
「疲れはまだ残ってませんか?今日土曜日だからもう少し横になってても大丈夫ですよ。それか何か食べるか飲むかしますか」
犬養は甲斐甲斐しく彼の面倒を見ようとする。
犬飼はどうやらそういうタイプのようで、桐原を甘やかすことにしたらしい。
ソファーに座り直し、服装を整えながら桐原はコーヒーを入れている犬養の上機嫌の背中を見た。
平和な光景だ。
週末も何かしらしていることが多いから、こんなにゆったりすごしているのも久しぶりだった。
このまま横になったらきっとまた泥のように寝てしまいそうな気がする。
桐原は神経質な質なので、他人といると気が休まらなくて、それが異性と付きあっても長続きしない原因の一つであるのだが、自分が他人と同じ空間にいながらわりあいリラックスをしていることに驚く。
プレイしたことで自分でも気が付かないうちに気を許してしまっているのだろうか、と自答する。
「はい、桐原さん、コーヒーです。いつもブラックですよね」
「どうも」
犬飼とこうなったのはなかば脅すようにされたからなのに、こんなのまるで初めて一夜を過ごしたあとの恋人同士みたいな朝ではないか、と思ってしまう。
犬飼の視線と声が恋人でも見るような甘さを含んでいて、やたらめったらこそばゆい。
「ところで、不服従って何の思いつきなんだ?」
「あー、えっと。昔うちで、パピーウォーカーやったことがあるんです」
「パピー??なんだそれ」
「盲導犬の子犬を預かるんですよ。家庭で愛情をかけてあげるんです。そんなんで盲導犬に興味を持って、いろいろ調べていた時期があるんですが、不服従訓練って知ってますか?」
話がいきなり犬の話になったので桐原は混乱したが“不服従“の単語がようやく出てきたもののあいにくわからない。
桐原が首を横に振ると、犬飼は続けた。
「盲導犬ってもともと主人の命令に絶対服従するように訓練されているんですが、例外もあって。主人の命を守るためにあえて命令に従わない、っていう訓練を受けるんですよね・・・今回、桐原さんがはじめすごくしんどそうで、僕がコマンドとしてその言葉をうまく解釈して使うことができたら、桐原さんが自分の心を守るために命令に従わない選択支をとることができるんじゃないかと思って」
「へぇ・・・DOMもいろいろと考えてプレイしてるんだな」
ちゃらちゃら軽薄そうに見えてそんな風に考えていたのかと、少し関心する。
「すこしでも桐原さんにイイって思ってほしくて・・・いろいろ考えてがんばったんです。褒めてくださいよ!」
そういう様子が年齢より子供っぽくて、桐原は思わず笑った。
「褒めて伸ばすのはスタイルじゃねぇんだよな・・・」
「そんなぁ」
プレイは悪くなかった。
一緒に話していて楽しくない、こともない。
でも、もっとドライで後腐れない関係を自分はのぞんでいたはずだった気がする。
ずっと犬飼とパートナーを組むつもりはないのだが、このまま回数を重ねたらズルズルいってしいまいそうなまずい予感がしてしまうのだった。
上体を起こすとかけられた毛布が滑り落ち、ソファーに寝かせられていたことを知る。
見回すと、さんさんと朝日の差し込むリビングが目に入り、昨日のことが一気に記憶が蘇ってきた。
自分が犬飼とのプレイでどうしていたか記憶が蘇ってくる。
残念ながら、SUB SPACEに入っても記憶はぶっとんだりしないらしく、一挙一動をちゃんと覚えている。
桐原は大きな声で叫びながら転がり回りたいような羞恥に囚われた。
頼るとか、安心感とかそんなものを欲していなかったはずだ。少なくとも他人には。
なのに、プレイで自分があんなになってしまうなんて信じられなかった。
それでも気持ちとは裏腹に身体のほうはお試しの時の比ではないほどに体が軽く、気力と生気がみなぎっている。
それは改めてSUBとDOMのプレイは覿面で、桐原にはこれが必要であるという憂鬱な結果を認めざるを得ないということでもあった。
しばし葛藤した桐原だが、この問題を合理的に考えることにした。
つまり、SUBだから仕方ないとつとめて冷静に納得し、開き直ることにしたのだ。
なんとか冷静にたち戻った桐原は立ち上がった。
スーツのズボンがしわになってしまったことに思わず舌打ちする。
ワイシャツの襟はボタンがいくつか外されて緩めてあったが、それ以上何もされた様子がないのでホッとした。
床に目をやると、犬飼がフローリングに毛布を抱えて転がって寝ていたので、軽く足蹴にすると彼はわっと言って起き上がった。
急いで眼鏡をかける。
「あ、おはようございます。昨日はプレイ中にいきなり意識がとんじゃったのは覚えてます?…疲れていたみたいなので寝かせておきました。もちろん何もしてないですよっ!」
正直、プレイ後に犬飼が居丈高になったり、最中のことを口にして揶揄したりするのではないかと桐原は懸念していた。
だが、犬飼の態度はあっけないほどに変わらない。
桐原は犬飼を足元に見下ろしながら、そのことに安堵した。
「疲れはまだ残ってませんか?今日土曜日だからもう少し横になってても大丈夫ですよ。それか何か食べるか飲むかしますか」
犬養は甲斐甲斐しく彼の面倒を見ようとする。
犬飼はどうやらそういうタイプのようで、桐原を甘やかすことにしたらしい。
ソファーに座り直し、服装を整えながら桐原はコーヒーを入れている犬養の上機嫌の背中を見た。
平和な光景だ。
週末も何かしらしていることが多いから、こんなにゆったりすごしているのも久しぶりだった。
このまま横になったらきっとまた泥のように寝てしまいそうな気がする。
桐原は神経質な質なので、他人といると気が休まらなくて、それが異性と付きあっても長続きしない原因の一つであるのだが、自分が他人と同じ空間にいながらわりあいリラックスをしていることに驚く。
プレイしたことで自分でも気が付かないうちに気を許してしまっているのだろうか、と自答する。
「はい、桐原さん、コーヒーです。いつもブラックですよね」
「どうも」
犬飼とこうなったのはなかば脅すようにされたからなのに、こんなのまるで初めて一夜を過ごしたあとの恋人同士みたいな朝ではないか、と思ってしまう。
犬飼の視線と声が恋人でも見るような甘さを含んでいて、やたらめったらこそばゆい。
「ところで、不服従って何の思いつきなんだ?」
「あー、えっと。昔うちで、パピーウォーカーやったことがあるんです」
「パピー??なんだそれ」
「盲導犬の子犬を預かるんですよ。家庭で愛情をかけてあげるんです。そんなんで盲導犬に興味を持って、いろいろ調べていた時期があるんですが、不服従訓練って知ってますか?」
話がいきなり犬の話になったので桐原は混乱したが“不服従“の単語がようやく出てきたもののあいにくわからない。
桐原が首を横に振ると、犬飼は続けた。
「盲導犬ってもともと主人の命令に絶対服従するように訓練されているんですが、例外もあって。主人の命を守るためにあえて命令に従わない、っていう訓練を受けるんですよね・・・今回、桐原さんがはじめすごくしんどそうで、僕がコマンドとしてその言葉をうまく解釈して使うことができたら、桐原さんが自分の心を守るために命令に従わない選択支をとることができるんじゃないかと思って」
「へぇ・・・DOMもいろいろと考えてプレイしてるんだな」
ちゃらちゃら軽薄そうに見えてそんな風に考えていたのかと、少し関心する。
「すこしでも桐原さんにイイって思ってほしくて・・・いろいろ考えてがんばったんです。褒めてくださいよ!」
そういう様子が年齢より子供っぽくて、桐原は思わず笑った。
「褒めて伸ばすのはスタイルじゃねぇんだよな・・・」
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