不服従のSUBにDOMはかしずく

鳥海あおい

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15.告白

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プレイバーに行った翌日、犬飼は一日中ずっと物言いたげであった。
さすがに即問い詰めるということはなく会社では普通に振る舞っていたが、犬飼はその日、平日にも関わらず家に誘ってきた。
すでに面倒事の気配はひしひしと感じていたものの、桐原は誘いを断らなかった。
犬飼は、タクシーの中では珍しくほとんど言葉を発しなかったが、家について扉の中に桐原を押し込むようにして入れた途端に我慢が限界とばかりに聞いてきた。
 
「昨日早く帰っちゃいましたけど、どこに行ったんですか?」

「男あさり」

桐原はこのDOMに対しての嗜虐心で意地悪な気持ちになる。
まるでおあずけくっていた犬のように食い気味にきいた犬飼は桐原の返事に絶句した。

「あっ、えっ・・・」

「冗談だ。プレイバーに行ったんだよ」

「パートナー探しにですか?」

犬飼は非難がましい視線を向けた。
自分がいるのに、と思っているのが手にとるようにわかった。

健気だな、と桐原は思った。
大人ぶってはいても、犬飼はまだ若い。
桐原と社会人経験では10年近く違うから当然なのだが、割り切った関係などやはり難しいのかもしれない。

「お前も、行ってみるか?」

「…桐原さんが連れて行ってくれるなら一緒に行きたいです・・・けど・・・僕とのプレイは不満ですか?」

「そういうんじゃないが、お前とは仮だろ?」

「でも俺は桐原さんのことが好きなんです。だから、桐原さんが他の人とプレイするのは嫌です」

犬飼がそういう気持ちをだんだんに持ち始めていることはうすうすわかっていた。
だが、その好きな気持ちは、プレイしているうちにDOMだからこそSUBに抱く気持ちではないだろうか?
DOMとSUBでなければ生れないものではないだろうか?
桐原はそんな事をぼんやり思う。

犬飼の手が、桐原の腕を掴んだ。
そのまま引き寄せられるが、桐原はそれを拒絶しなかった。
だいぶ、この温もりに慣れた気がする。

幾度とないプレイを経て、桐原が抗議しないことをいいことに犬飼はだんだん断らずに触れてくるようになり、桐原もいちいち確認されて了解するのが面倒になったというのと、犬飼なら無体をするまいと信用するようになったので気にしなくなっていることに気づく。
結局のところ、プレイしてるうちに絆されるつつあるのは桐原のほうかもしれなかった。 

「桐原さんは、僕のことどう思ってますか?」

全く犬飼らしくなく真正面から聞かれ、桐原は答えに迷う。
好き、とはいってしまえば嘘になるが、嫌ではない。好意はある。ただ、犬飼と同等かどうかといえば、そうではないだろう。
答えないでいると、苛立ったらしい犬飼が顎を捕んで口づけてきた。
はじめはかすめるような躊躇いがちのキス、そして桐原が嫌がらないのを確認すると唇を割りさいた舌が入ってを絡めてくる。柔らかい粘膜から与えられる官能は、同じ原始的なものでももっと単純なもので、これを受け入れることは本当に簡単なことだった。
探るような動きからそれが次第に奪うように口腔内を蹂躙する動きにかわる。
想いのたけをぶつけるような口づけで、まるでその快感で気持桐原を籠絡しようとしている意図を感じた。
目を開けたままでいるので、犬飼の伏せたまつげが意外と長いなど考えながら、柔らかく濡れた粘膜の接触から産まれる快感を、桐原は享受した。
背中から後ろに手がすべりおりて、スボンの布地越しに尻の狭間をなぞる。  
桐原は思わずピクリと身体を震わせた。
  
「もしかして…ここで、男としたことあります?」

「………ある」

桐原の性的志向は女にむいてはいるのだが、行為の経験の有無であれば、YESである。
犬飼の目に剣が宿る。
それを聞いたということはこの返事も予想していたはずだが、それでも血相を変える犬飼が面白くて、その様子に桐原は思わず唇の端をあげた。

「ゲイじゃないんじゃなかったですか?」 
 
「…身体と心は別だろ」

性的な嗜好の対象は女性であっても、快楽は別ということをすでに桐原は知っていた。

「まさか昨日…」

「…じゃねえ。昔のことだよ」
攻められるいわれはないが安心させてやると、犬飼の体から少し力が緩む。
だが、眼鏡越しにでもその瞳に欲望がふつふつと煮えている。
その密着した下肢に固くなる兆しを感じ、桐原はもう一度キスしてこようとした犬飼に言った。

stay待て

SUBである桐原が言ったところでそれはただの言葉に過ぎないが、犬飼には効果てきめんだった。

「やりたいならするか?プレイに付きあってくれるお礼に」

「……」

STAYしたのを、ネクタイを掴んでぐっとひきよせる。
キスする寸前で動きを止めた犬飼の、唇がふれあってしまいそうな距離で桐原は露悪的な表情を浮かべた。
間近ある犬飼の唇が、微かにわなないたのがわかった。

「……ほんっとに」

鼻白んだように犬飼は言った。

「本当に、デリカシーないですよね。…そういう冗談きついですよ。そんなこと言ったら桐原さんが俺にしてくださいって懇願するまでぜーったいしませんから!」 

「キスはするのに?」

「…えーっと、その気にさせられないかなと思って…」

毒気を抜かれて思わず桐原は笑った。

「笑うとこじゃないですよね、あーもう!」

上手くかわされ、あしらわれたことを察して恨めしそうな犬飼からひらりと離れると、行儀わるくテーブルに腰を寄りかからせながら葛藤する犬飼を見た。

「で、今日はプレイはするのか?」

「拒否もしないけど、受け入れてもくれないなんて、辛い。辛すぎる」

恨めしそうにブツブツいう犬飼からひらりと離れると、行儀わるくテーブルに腰を寄りかからせながら葛藤する犬飼を見た。
お前が思っているよりは受け入れてはいると思うが、とは、あえて口には出さなかった。

桐原に逆らえないDOMは目を伏せたが、小さく溜息をつくと眼鏡を押し上げて、コマンドを口にするのだ。


DISOBEDIENCE不服従

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