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27.規格外のDOM
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桐原はしばし戸惑いと慣れない種類の満足感の狭間でぼんやりしていたが、すぐに本来の彼らしさを取り戻した。
「…俺より犬飼が気になるならDOM同士でプレイしたらどうですか」
「おもしろこと言うね。DOM同士だと不毛の極みだね」
桐原が冷たく言い放つと、アレクシスはいかにもまいったというていで肩をすくめ、金色の髪をぐしゃぐしゃとかき回した。そんな仕草もさまもむかつくほどにさまになる。
「グレアで争って彼の足元にはいつくばるハメになるのはさすがに遠慮したいよ」
DOM同士がもめた時にはグレアで争い、それが強いかどうかで勝ち負けが決まると聞いたことがある。逆は容易に想像できるが、アレクシスが若造である犬飼に負けるなどあるのかと胡乱に思う。
「それはないでしょう」
「どうだろう。彼はおそらく規格外のDOMみたいだし」
「・・・イレギュラー?」
グレアが不安定と言ってたことと関係があるのだろうかと思っていると桐原の疑問はアレクシスによって解決された。
「稀にいる力が強すぎるDOMのことだよ。能力が安定すれは強大な力を持つDOMになるのかもしれないが、大抵は力が不安定なことが多い」
最も、DOMとして優れてるからといって様々なことに成功できるわけではないが、と成功者のほうである男は言った。
強すぎる力といわれても桐原は半信半疑であったが、アレクシスの言うことが本当だとしてもだから何なんだとしか思えないかった。
とはいえ、犬飼もアレクシスをかなり意識していたことを思うと、もしかしたらDOM同士では力関係においての激しい対抗意識のようなものがあるのかもしれない。
SUBである桐原には関係ないし、鞘当てに巻き込まれるのはごめんだった。
「・・・この話を続けるなら俺は帰る」
「ごめんごめん、すねないで。ケイ、Stay」
桐原が立ち上がろうとするとコマンドに絡めとられる。
拒否するほどのことまでもなかったので桐原は従ったが、アレクシスはそのまま子供をなだめるようにハグしてきた。厚い胸板に抱き寄せられたまではまだ良かったが、こめかみにキスをされるにつけて桐原は憮然とした。
「やめてくれ」
「失敬。日本人はあまりこういうスキンシップはしないんだっけ」
しかもわざとらしくチークキスまでを何度かしてくるので桐原はこの悪ふざけを閉口しながらよけた。
「ふざけるなよ。海外でも男同士はしないだろうが」
「小さいことは気にしない。リラックス!」
すねたわけでもアレクシスの事を特別に思っているわけではないのだが、自分にDOMの関心が戻ったことの歓びがわいてくるのがわかった。
「ケイはつれないよね」
ひとしきりアレクシスは桐原をかまいつけたが、反応が鈍いためかため息をついた。
「…でもそこがいい」
急にアレクシスの声色が変わる。
空気は張り詰めたような気がした。
「その口から、支配されたい、命令して欲しいって言わせたくなる。それ以上のすごいことも」
刹那、今まで覆い隠されていたアレクシスの征服欲を突きつけられた気がして、桐原の背中に戦慄が走り抜けた。
それはどこか甘い期待を含んでいる。
その気になれば、アレクシスはコマンドで簡単に桐原に言わせることができるだろう。
そしてだんだん、望んで言うようにそういう風に作り替えられてしまうのかもしれない。
そうしたい、されたいと思う自分がいることも間違いないのだ。
それを気づいて改めて絶望し、いっそ桐原は笑った。
笑いの意味をどうしてか悟ったのかわからないが、アレクシスは桐原のそれを感じ取ったようだった。
あるいは、彼の今までの経験で似たようなことがあったのかもしれない。
「嫌そうだね…でも、複雑に考えないで本能に従うのも悪くないと思う。どのみちSUBもDOMも一人ではどうしようも埋められないんだから、受け入れて、苦しまないで楽しんだほうがいい」
アレクシスの言葉は静かで、自身の欲望からではないというのがわかる真剣みを帯びたものだった。
彼なりの思いやりがこもってすらいた。
「…俺より犬飼が気になるならDOM同士でプレイしたらどうですか」
「おもしろこと言うね。DOM同士だと不毛の極みだね」
桐原が冷たく言い放つと、アレクシスはいかにもまいったというていで肩をすくめ、金色の髪をぐしゃぐしゃとかき回した。そんな仕草もさまもむかつくほどにさまになる。
「グレアで争って彼の足元にはいつくばるハメになるのはさすがに遠慮したいよ」
DOM同士がもめた時にはグレアで争い、それが強いかどうかで勝ち負けが決まると聞いたことがある。逆は容易に想像できるが、アレクシスが若造である犬飼に負けるなどあるのかと胡乱に思う。
「それはないでしょう」
「どうだろう。彼はおそらく規格外のDOMみたいだし」
「・・・イレギュラー?」
グレアが不安定と言ってたことと関係があるのだろうかと思っていると桐原の疑問はアレクシスによって解決された。
「稀にいる力が強すぎるDOMのことだよ。能力が安定すれは強大な力を持つDOMになるのかもしれないが、大抵は力が不安定なことが多い」
最も、DOMとして優れてるからといって様々なことに成功できるわけではないが、と成功者のほうである男は言った。
強すぎる力といわれても桐原は半信半疑であったが、アレクシスの言うことが本当だとしてもだから何なんだとしか思えないかった。
とはいえ、犬飼もアレクシスをかなり意識していたことを思うと、もしかしたらDOM同士では力関係においての激しい対抗意識のようなものがあるのかもしれない。
SUBである桐原には関係ないし、鞘当てに巻き込まれるのはごめんだった。
「・・・この話を続けるなら俺は帰る」
「ごめんごめん、すねないで。ケイ、Stay」
桐原が立ち上がろうとするとコマンドに絡めとられる。
拒否するほどのことまでもなかったので桐原は従ったが、アレクシスはそのまま子供をなだめるようにハグしてきた。厚い胸板に抱き寄せられたまではまだ良かったが、こめかみにキスをされるにつけて桐原は憮然とした。
「やめてくれ」
「失敬。日本人はあまりこういうスキンシップはしないんだっけ」
しかもわざとらしくチークキスまでを何度かしてくるので桐原はこの悪ふざけを閉口しながらよけた。
「ふざけるなよ。海外でも男同士はしないだろうが」
「小さいことは気にしない。リラックス!」
すねたわけでもアレクシスの事を特別に思っているわけではないのだが、自分にDOMの関心が戻ったことの歓びがわいてくるのがわかった。
「ケイはつれないよね」
ひとしきりアレクシスは桐原をかまいつけたが、反応が鈍いためかため息をついた。
「…でもそこがいい」
急にアレクシスの声色が変わる。
空気は張り詰めたような気がした。
「その口から、支配されたい、命令して欲しいって言わせたくなる。それ以上のすごいことも」
刹那、今まで覆い隠されていたアレクシスの征服欲を突きつけられた気がして、桐原の背中に戦慄が走り抜けた。
それはどこか甘い期待を含んでいる。
その気になれば、アレクシスはコマンドで簡単に桐原に言わせることができるだろう。
そしてだんだん、望んで言うようにそういう風に作り替えられてしまうのかもしれない。
そうしたい、されたいと思う自分がいることも間違いないのだ。
それを気づいて改めて絶望し、いっそ桐原は笑った。
笑いの意味をどうしてか悟ったのかわからないが、アレクシスは桐原のそれを感じ取ったようだった。
あるいは、彼の今までの経験で似たようなことがあったのかもしれない。
「嫌そうだね…でも、複雑に考えないで本能に従うのも悪くないと思う。どのみちSUBもDOMも一人ではどうしようも埋められないんだから、受け入れて、苦しまないで楽しんだほうがいい」
アレクシスの言葉は静かで、自身の欲望からではないというのがわかる真剣みを帯びたものだった。
彼なりの思いやりがこもってすらいた。
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