騎士団長、狼王の花嫁になるーー拾った子犬はワーウルフの王子でした

鳥海あおい

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第四章

1.囚われのグレン

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どこかで水が滴る音がする。

湿っぽい地下牢の固い寝台の上に、牢獄の人となったグレンは座っていた。

真っ暗である。
だが暗いのに目が慣れると周りの様子が見えてきた。
3方向が石の壁で囲まれ、一方が鉄格子になって、そこに出入り用の扉がついている。
個室であるし、床に直接寝るのでなくベッドがあるだけたぶんよい扱いといえるだろう。

腕は枷と鎖をつけられてしまったので少々不自由ながら体の状態を確認する。
かなりの力で槍の柄で殴られたの身体が痛かったが、もしかしたら肋骨にヒビが入ったかもしれない。

あとは足の傷だが、刃がかすっただけなので軽傷ではある。だが、刀傷から悪い風が入って具合が悪いくなる場合があるので油断できない。
グレンはどうしてよいのかわからないままベッドに体を横たえた。
痛みが体の奥で脈打っている気がした。

あまりにも昨日から色々な事がおきたので頭がついていかない。
ロイドはシエルは大丈夫なのか、レオンは無事なのか。
どうしたらクライヴの企みをさりげなく伝えられるのだろうか。
そんなことを考えていたらうとうとしてしまったらしいが、今度は人の気配で目を覚ました。
太陽の光がないのではっきりはわからないが、多分だが、体感的に数時間ほど経過した朝なのではと思われた。

食事のトレーが牢の隙間からさし入れられてきて、自分の予想が当たったのを感じる。
食事から毒殺の危険もあるかもとは思って用心しながら少し食べてみたが、大丈夫そうなので平らげた。
食べものが喉を通らないというような繊細さとは無縁なのはありがたかった。
食べおわったところを見はからったようにと手枷と鎖をつけたままいったん外に出される。
追い立てられるように連れて行かれた部屋には難しい顔をしたシエルがいた。

「…レオンは捕縛できず逃げ延びた。あなたにとっては朗報だな」

「…」

良かった、とグレンは胸を撫で下ろした。
が、状況的には良かったとも言えず、どんな顔をしていいのかわからないでいると、シエルは珍しく苛立ったようにドン!と机を叩いた。

「何か申し開きすることはないのか」

「…」

何を言うべきなのだろうか。

『二人きりで話したい』

これが一番言いたい。
が、無理だろうし、クライヴ側の人間には何か話したいことがあると警戒されるだろう。

現にクライヴは今シエルの側に座っていて、さりげなくグレンの一挙一動をうかがっている。
クライヴ派が一枚岩でないからすぐに行動を移さないでいるが、へんに自暴自棄になられて後先考えずにシエルをグサリ、とされるようなことになっても困る。

「グレン、何か訳があるならちゃんと話して欲しい」
 

「俺はなにも知らない。昨日、夜レオンと散歩していて、ロイド様にたまたま会った。挨拶だけしてすぐ別れたが、その後騒がしいと思ったら、ロイド様が害されたと聞いた」

「その間レオンも一緒だった?父が刺されたのはレオンの短剣だったのだが」

「一緒だった。ちなみに我々の剣は、宴会の間は部屋に置いていた。鍵もかけてないし、誰でも使える」

「目撃した護衛は、レオンが刺したのを見たと言っている」

ということは、護衛まで反対派が紛れ込んでいるということになる。
とにかく、レオンは戻ると言っていたから、それを信じるなら時間かせぎをするべきだとグレンは思った。

「本当に、俺たちは何も知らない」

「…レオンはどこに行った?エリクシールか?」

「それも知らない」

何もしないというのも一つの行動である。
とりあえずグレンは行動しないで機をうかがうことにした。

「…グレン!」

「シエル様、尋問でしたらシエル様の手を煩わせることもないですよ。このクライヴにおまかせ下さい」

クライヴがここぞとばかりにしゃしゃり出てくるのに、シエルは一瞬躊躇いを見せたが、それを

「シエル様の育ての親だからって、やはり庇いたくなる気持ちもわかりますが---」

「そういうつもりじゃない!」

シエルはクライヴの煽りにイライラとしたように再び机を叩いた。
彼が抱えている苛立ちが直截に伝わってくるようだったが、実の父が死にかけていて、その容疑者が養父とその息子とあれば、それは仕方ない気がした。

「わかった。この者の尋問はクライヴに任せる。死なせないように気をつけろよ」

シエルは言うと、ため息をつき部屋を出ていった。


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