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第2章――1 『 輪舞祭/吸血鬼と変わらぬ日常 』
第69話 娯楽と快楽
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「ねぇ、センリ。そろそろ次の町に移動する?」
「え?」
今日は依頼を受けず休養日にして、今はベッドの上でリリスとくつろいでいると、ふと彼女がそんなことを訊ねてきた。
「リリスはこの町、もう飽きちゃった?」
「そんなことはないわ。此処は私が過去旅してきた場所の中でもトップ3に入るほど良い場所よ。料理はどれも美味だし酒も上質、水も新鮮だし、そして何より温泉が最高。住み心地に関しては申し分ないわね」
ただ、とリリスは継ぐと、
「センリが此処だけじゃなくもっと別の町も見てみたいと思うのなら、此処を離れて次の町に向かうのにいい時期だと思って」
「それで聞いてきたんだ」
リリスはぽふん、と身体を倒すと、僕と顔の距離を詰めて、
「どうする? 貴方が望むなら私は別にどっちでも構わないわよ。もうしばらくこの町に滞在するか、或いは新しい町を求めるか。どっちがいい?」
「悩ましい二択だね」
リリスがそのまま僕の背中に腕を回してきて、僕も彼女の細い身体に手を置いた。僕とリリスは軽く抱き合う態勢になりながら、今後について逡巡する。
リリスの言う通り、この町は良い所だ。この世界の治安が全体的にどうなっているかはリリスに大まかでしか聞いたことしかないけど、ここまで治安が安定している場所はこの世界では珍しい方らしい。
ある国ではシエルレントを脅かした連続殺人鬼のような存在が日常的に蔓延っている所もあるそうで。
ある程度の土地勘を持っているリリスがいるからそんな町に当たる可能性は早々ないとしても、やはりこの町に半年も滞在していた影響か名残惜しさや愛着というものが沸いてしまっているのもまた事実で。
他の町も行ってみたいし、もっとこの世界を色々と見て回ってみたい。それが旅人という居場所を作らない者たちの生き方なんだろうけど、
「……うぅん。まだ、この町を離れたくないかなぁ」
「そ。分かったわ」
未練、あるいは不安がわずかに勝り、停滞の意思がぽつりと口からこぼれると、リリスは特に追及せずに顎を引いた。
「随分とあっさりだね」
「私はどっちでもいいもの」
「でも旅人ならそろそろ移動する時期なんじゃないの?」
「予定なんて作ったら旅の意味がないじゃない」
「えぇ。旅って普通は予定組み立てて行動するものじゃない?」
「私の旅は予定なんて無粋なものは作らない。好きな時に好きな場所へ行って、好きな時にそこから去る。それが私の旅の在り方」
「それ、どちらかというと放浪者っぽいけど」
「どっちでもいいわよ。重要なのは自由かそうじゃないか。私は自由が好きなの」
リリスは僕をぎゅっと抱きしめながらそう語った。
「僕はリリスの自由を縛ってない?」
「何を今更。貴方と過ごす時間は心地が良いから縛られてるなんて思ったことは一度もないわ」
「ふふ。嬉し」
「私と共に居られることを存分に噛みしめなさい」
「うん。リリスと出会えてよかった」
「くすっ。よろしい」
その言葉を体現するようにリリスを強く抱きしめ返せば、耳元で穏やかな微笑みが聞こえた。
「それじゃあもうしばらくこの町に滞在するってことでいいわね」
「うん」
「ふふっ。思えば、たしかに次の町に行くのは色々と不都合かもしれないわね」
「どういうこと?」
リリスの言葉に小首を傾げると、彼女はそんな僕を見つめながら愉快そうに口の端を吊り上げて、
「貴方とこんな風に過ごせる時間が減るのは惜しいもの」
「りり……んっ」
彼女の名前を呼ぶよりも早く、唇を奪われた。
先刻の僕と同じように、リリスが言葉を行動に移して僕に伝えてくる。
「ぷはぁ。……くすっ。昨日あんなに搾り取ってあげたのに、もう元気になってるわよ?」
「ぷはっ……リリスがいきなりキスなんかしてくるからじゃん」
「でも反応したということは、貴方が私を求めてるって何よりの証明じゃない?」
「べつにしたくないけど……」
「私はしたくなっちゃったなー」
「……太もも当てにくるの止めてくれない?」
「女が誘ってるのよ? 男なら嬉々として食いに来なさい。立派なもの持ってるんだから」
「今お昼なんですけど?」
「それがなに? 今更気にすること?」
「はぁ」
これはどう足掻いても一回ヤらないと満足しないやつだと悟って、僕はやれやれと深いため息を落とす。
「ふふ。センリは本当に私に誘われると断り切れないわね」
「拗ねられても面倒だし」
「本当は自分もしたくて堪らないんじゃないの?」
「……まぁ、半分くらい?」
リリスにキスされて、彼女を意識してしまえばそりゃ沸々と欲情が沸き上がってしまう。
それでもギリギリ理性が勝って踏み留まれるけれど、最終的にはリリスがそのブレーキを外してくるせいでいつもこのオチだ。
「たまにはセックス三昧な一日もいいわよね」
「なにその一日。乱れ過ぎでしょ」
「いいじゃないべつに。好きなことを好きなだけする時間って一番自由を感じれる気がしない?」
「リリスにとってはエッチするのが自由なの?」
「それもその一つ。セックスって最高の娯楽でしょ?」
「……うわぁ」
「なによその顔は」
リリスと身体を何度も何度も重ねた影響というやつだろうか。半年前までは全く理解できなかったその思考が、ほんの少し、本当に少しだけ、理解できてしまった。
一度覚えた快感と快楽は、この身体に刻み込まれて僕の人生観を覆してしまったのだ。
「何度リリスを求めてもまたすぐに欲しちゃうのは、リリスの考えを肯定してるみたいでちょっと嫌だなって」
「……ふふーん。私のカラダ。そんなに食べ応えある?」
「あるから困ってるんじゃん」
「ふふ。なら存分に堪能しなさい。今は貴方だけの、世界に一つしかないご馳走よ」
あぁ、抗えない。
この甘い香りに。思考を犯す甘美な匂いに理性のブレーキが壊される。
見つめてくる赤い双眸が熱望を帯びて揺れて、艶やかな紅い唇から漏れる熱が興奮を伝えて来る。
抱きしめて来る腕が高揚に震えて、密着する身体がこれから始まる二人だけの濃密な時間に疼いていた。
早く来て、と眼前のキミが誘ってくる。
態勢を変えて、昨夜のようにまた彼女を見下ろせば、
「――いただきます」
「んっく! ……好きなだけ堪能してちょうだい」
昨夜あれだけしたはずなのに、僕のカラダはまだリリスを求めていた――。
「え?」
今日は依頼を受けず休養日にして、今はベッドの上でリリスとくつろいでいると、ふと彼女がそんなことを訊ねてきた。
「リリスはこの町、もう飽きちゃった?」
「そんなことはないわ。此処は私が過去旅してきた場所の中でもトップ3に入るほど良い場所よ。料理はどれも美味だし酒も上質、水も新鮮だし、そして何より温泉が最高。住み心地に関しては申し分ないわね」
ただ、とリリスは継ぐと、
「センリが此処だけじゃなくもっと別の町も見てみたいと思うのなら、此処を離れて次の町に向かうのにいい時期だと思って」
「それで聞いてきたんだ」
リリスはぽふん、と身体を倒すと、僕と顔の距離を詰めて、
「どうする? 貴方が望むなら私は別にどっちでも構わないわよ。もうしばらくこの町に滞在するか、或いは新しい町を求めるか。どっちがいい?」
「悩ましい二択だね」
リリスがそのまま僕の背中に腕を回してきて、僕も彼女の細い身体に手を置いた。僕とリリスは軽く抱き合う態勢になりながら、今後について逡巡する。
リリスの言う通り、この町は良い所だ。この世界の治安が全体的にどうなっているかはリリスに大まかでしか聞いたことしかないけど、ここまで治安が安定している場所はこの世界では珍しい方らしい。
ある国ではシエルレントを脅かした連続殺人鬼のような存在が日常的に蔓延っている所もあるそうで。
ある程度の土地勘を持っているリリスがいるからそんな町に当たる可能性は早々ないとしても、やはりこの町に半年も滞在していた影響か名残惜しさや愛着というものが沸いてしまっているのもまた事実で。
他の町も行ってみたいし、もっとこの世界を色々と見て回ってみたい。それが旅人という居場所を作らない者たちの生き方なんだろうけど、
「……うぅん。まだ、この町を離れたくないかなぁ」
「そ。分かったわ」
未練、あるいは不安がわずかに勝り、停滞の意思がぽつりと口からこぼれると、リリスは特に追及せずに顎を引いた。
「随分とあっさりだね」
「私はどっちでもいいもの」
「でも旅人ならそろそろ移動する時期なんじゃないの?」
「予定なんて作ったら旅の意味がないじゃない」
「えぇ。旅って普通は予定組み立てて行動するものじゃない?」
「私の旅は予定なんて無粋なものは作らない。好きな時に好きな場所へ行って、好きな時にそこから去る。それが私の旅の在り方」
「それ、どちらかというと放浪者っぽいけど」
「どっちでもいいわよ。重要なのは自由かそうじゃないか。私は自由が好きなの」
リリスは僕をぎゅっと抱きしめながらそう語った。
「僕はリリスの自由を縛ってない?」
「何を今更。貴方と過ごす時間は心地が良いから縛られてるなんて思ったことは一度もないわ」
「ふふ。嬉し」
「私と共に居られることを存分に噛みしめなさい」
「うん。リリスと出会えてよかった」
「くすっ。よろしい」
その言葉を体現するようにリリスを強く抱きしめ返せば、耳元で穏やかな微笑みが聞こえた。
「それじゃあもうしばらくこの町に滞在するってことでいいわね」
「うん」
「ふふっ。思えば、たしかに次の町に行くのは色々と不都合かもしれないわね」
「どういうこと?」
リリスの言葉に小首を傾げると、彼女はそんな僕を見つめながら愉快そうに口の端を吊り上げて、
「貴方とこんな風に過ごせる時間が減るのは惜しいもの」
「りり……んっ」
彼女の名前を呼ぶよりも早く、唇を奪われた。
先刻の僕と同じように、リリスが言葉を行動に移して僕に伝えてくる。
「ぷはぁ。……くすっ。昨日あんなに搾り取ってあげたのに、もう元気になってるわよ?」
「ぷはっ……リリスがいきなりキスなんかしてくるからじゃん」
「でも反応したということは、貴方が私を求めてるって何よりの証明じゃない?」
「べつにしたくないけど……」
「私はしたくなっちゃったなー」
「……太もも当てにくるの止めてくれない?」
「女が誘ってるのよ? 男なら嬉々として食いに来なさい。立派なもの持ってるんだから」
「今お昼なんですけど?」
「それがなに? 今更気にすること?」
「はぁ」
これはどう足掻いても一回ヤらないと満足しないやつだと悟って、僕はやれやれと深いため息を落とす。
「ふふ。センリは本当に私に誘われると断り切れないわね」
「拗ねられても面倒だし」
「本当は自分もしたくて堪らないんじゃないの?」
「……まぁ、半分くらい?」
リリスにキスされて、彼女を意識してしまえばそりゃ沸々と欲情が沸き上がってしまう。
それでもギリギリ理性が勝って踏み留まれるけれど、最終的にはリリスがそのブレーキを外してくるせいでいつもこのオチだ。
「たまにはセックス三昧な一日もいいわよね」
「なにその一日。乱れ過ぎでしょ」
「いいじゃないべつに。好きなことを好きなだけする時間って一番自由を感じれる気がしない?」
「リリスにとってはエッチするのが自由なの?」
「それもその一つ。セックスって最高の娯楽でしょ?」
「……うわぁ」
「なによその顔は」
リリスと身体を何度も何度も重ねた影響というやつだろうか。半年前までは全く理解できなかったその思考が、ほんの少し、本当に少しだけ、理解できてしまった。
一度覚えた快感と快楽は、この身体に刻み込まれて僕の人生観を覆してしまったのだ。
「何度リリスを求めてもまたすぐに欲しちゃうのは、リリスの考えを肯定してるみたいでちょっと嫌だなって」
「……ふふーん。私のカラダ。そんなに食べ応えある?」
「あるから困ってるんじゃん」
「ふふ。なら存分に堪能しなさい。今は貴方だけの、世界に一つしかないご馳走よ」
あぁ、抗えない。
この甘い香りに。思考を犯す甘美な匂いに理性のブレーキが壊される。
見つめてくる赤い双眸が熱望を帯びて揺れて、艶やかな紅い唇から漏れる熱が興奮を伝えて来る。
抱きしめて来る腕が高揚に震えて、密着する身体がこれから始まる二人だけの濃密な時間に疼いていた。
早く来て、と眼前のキミが誘ってくる。
態勢を変えて、昨夜のようにまた彼女を見下ろせば、
「――いただきます」
「んっく! ……好きなだけ堪能してちょうだい」
昨夜あれだけしたはずなのに、僕のカラダはまだリリスを求めていた――。
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