83 / 89
第2章――1 『 輪舞祭/吸血鬼と変わらぬ日常 』
第71話 吸血鬼の悶々
しおりを挟む
――私はこの子のことをどう思いたいのだろうか。
「……す。……りす。……リリス」
「っ!」
誰かに名前を呼ばれていることに遅れて気付き、ハッと我に返るとセンリが不思議そうな顔で私を見つめていた。
「どうかしたの?」
「いやどうかしたのって……片付け終えたから声を掛けたんだよ」
「……片付け」
困惑した声音でそう言ったセンリに私は周囲を見渡せば、地面には魔物たちが横倒れていた。
ようやく状況を理解して「そう」と短く息を吐く私に、センリは怪訝に眉根を寄せて、
「もしかして体調悪い?」
「そんなことはないわ。ごめんなさい。ボーっとしてたわ」
と答えるとセンリは「リリスが珍しいね」と苦笑したあと、
「でも、いくら僕の見守り役とはいっても、戦闘中は注意してね。リリスが強いのは理解してるけど、それでも怪我してほしくはないからさ」
「えぇ。本当にごめんなさい」
今回ばかりはセンリの指摘が正しい。センリも成長し、私が介入せずともこの周辺の魔物なら一人で倒せるようになった。だから必然と戦闘ではセンリを遠くから見守る時間が増えたとはいえ、しかし今日のようにここまで注意散漫になることはなかった。
原因も理解しているだけに余計に罪悪感とやらが募り、不要な心配をかけたセンリに謝罪すると、彼はそんな私をジィっと睨むように見つめて、
「……やっぱり変」
「変?」
「うん。変」
センリの言葉に呆気取られながら復唱すると、センリはこくりと頷き、
「体調は……べつに悪くなさそうだけど。元気がないというかなんというか。何かあった?」
「……なんでもないわ」
「ふぅん。(……ここまで露骨なのも珍しい」
思わずセンリの追及の視線から逃れるように視線を逸らせば、センリはジト目で私を睨んでくる。
「言えないことなら無理には聞かないけどさ。言いたくなったらいつでも言ってね。だって僕はリリスのパートナーなんだから」
「……ふふ。ほんと、貴方は優しいのね」
「それじゃあ無理にでも聞いたら教えてくれる?」
意趣返しのつもりでそう訊ねてきたセンリに、私は頬を強張らせるとふるふると首を横に振った。
そんな私の態度にセンリは辟易とした風に嘆息を吐いて、
「でしょ。べつに優しいとか優しくないとか関係ないよ。リリスが嫌がることをしないだけ」
「……やっぱ優しいわよ」
手は返り血で汚れているからと不用意に私には触れず、代りに言葉を尽くして私を安堵させようとその心配りに、思わず笑みがこぼれてしまった。
そんな私を覗き込むように見つめていたセンリは薄く微笑むと、
「それじゃあさっさとギルドに報告しに戻って、残りの時間は宿でゆっくりしようか。あっ、せっかくだし帰りに銭湯でも寄ってく?」
「……賛成。今日は、熱いお湯に浸かりたい気分」
「よし。そうと決まればさっそくギルドに戻ろうか」
「えぇ」
ゆっくりと、私のことを気遣って、彼は歩幅を調整しながら隣を歩いてくれる。
その優しさに胸は温もりを覚えながらも、頭の中ではあの疑問に答えを出せないまま思考を蝕み続けていて――。
「……す。……りす。……リリス」
「っ!」
誰かに名前を呼ばれていることに遅れて気付き、ハッと我に返るとセンリが不思議そうな顔で私を見つめていた。
「どうかしたの?」
「いやどうかしたのって……片付け終えたから声を掛けたんだよ」
「……片付け」
困惑した声音でそう言ったセンリに私は周囲を見渡せば、地面には魔物たちが横倒れていた。
ようやく状況を理解して「そう」と短く息を吐く私に、センリは怪訝に眉根を寄せて、
「もしかして体調悪い?」
「そんなことはないわ。ごめんなさい。ボーっとしてたわ」
と答えるとセンリは「リリスが珍しいね」と苦笑したあと、
「でも、いくら僕の見守り役とはいっても、戦闘中は注意してね。リリスが強いのは理解してるけど、それでも怪我してほしくはないからさ」
「えぇ。本当にごめんなさい」
今回ばかりはセンリの指摘が正しい。センリも成長し、私が介入せずともこの周辺の魔物なら一人で倒せるようになった。だから必然と戦闘ではセンリを遠くから見守る時間が増えたとはいえ、しかし今日のようにここまで注意散漫になることはなかった。
原因も理解しているだけに余計に罪悪感とやらが募り、不要な心配をかけたセンリに謝罪すると、彼はそんな私をジィっと睨むように見つめて、
「……やっぱり変」
「変?」
「うん。変」
センリの言葉に呆気取られながら復唱すると、センリはこくりと頷き、
「体調は……べつに悪くなさそうだけど。元気がないというかなんというか。何かあった?」
「……なんでもないわ」
「ふぅん。(……ここまで露骨なのも珍しい」
思わずセンリの追及の視線から逃れるように視線を逸らせば、センリはジト目で私を睨んでくる。
「言えないことなら無理には聞かないけどさ。言いたくなったらいつでも言ってね。だって僕はリリスのパートナーなんだから」
「……ふふ。ほんと、貴方は優しいのね」
「それじゃあ無理にでも聞いたら教えてくれる?」
意趣返しのつもりでそう訊ねてきたセンリに、私は頬を強張らせるとふるふると首を横に振った。
そんな私の態度にセンリは辟易とした風に嘆息を吐いて、
「でしょ。べつに優しいとか優しくないとか関係ないよ。リリスが嫌がることをしないだけ」
「……やっぱ優しいわよ」
手は返り血で汚れているからと不用意に私には触れず、代りに言葉を尽くして私を安堵させようとその心配りに、思わず笑みがこぼれてしまった。
そんな私を覗き込むように見つめていたセンリは薄く微笑むと、
「それじゃあさっさとギルドに報告しに戻って、残りの時間は宿でゆっくりしようか。あっ、せっかくだし帰りに銭湯でも寄ってく?」
「……賛成。今日は、熱いお湯に浸かりたい気分」
「よし。そうと決まればさっそくギルドに戻ろうか」
「えぇ」
ゆっくりと、私のことを気遣って、彼は歩幅を調整しながら隣を歩いてくれる。
その優しさに胸は温もりを覚えながらも、頭の中ではあの疑問に答えを出せないまま思考を蝕み続けていて――。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる